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プラスチックペレット品質管理システムの高度化開発

テクマン工業株式会社(山形県)
代表取締役社長 三浦冨博
取締役部長 皆川力

高速・高精度で「透明ペレット」を分別。川下業界のニーズに応える「アイデア」と「開発力」

会社紹介

開発技術の蓄積
(1986年頃の設計室)

テクマン工業株式会社は「技術で社会に貢献する」を理想とし、1973年に創業。
主な製品は、「自動化設備」や「荷物用小型エレベーター」、「射出成形機」、「色彩選別機」などだ。
エンジニア3名でガレージからスタートし、現在も社員の9割がエンジニアという生粋の開発志向型の体制をとっている。
クライアントのニーズから製品を具現化するのが得意で、開発技術を最大の強みとしている会社である。

第5回ものづくり日本大賞
東北経済産業局長賞を受賞

サポイン事業であるプラスチックペレット検査装置で立て続けに下記二つの賞を受賞していることからも、技術力の高さがうかがえる。
2013年 第5回ものづくり日本大賞
    東北経済産業局長賞を受賞
2014年 新機械振興賞 中小企業庁長官賞を受賞

サポインを申請したきっかけ

透明樹脂ペレット

国内のプラスチック成形業界は、光学機器や医療機器、自動車などに向けた精度の高い成形製品が求められており、これが国際的な競争力の原点となっている。
しかし、プラスチック成形の原料となるペレットの製造過程で、異物混入を防ぐことは難しく、プラスチック成形工程や成形製品の外観検査工程に負担が増している状況だ。
外観検査は目視のため、コストの安い海外に生産を移行してしまうという悪循環も懸念された。

工場にならぶ選別機

上記のような業界背景と、多くのケミカルメーカーから「自動検査装置の開発」を強く要望されていたことから、装置化を目指して開発を進めていたが、費用などの問題から開発に専念することが難しかった。
そうしたところ、以前より技術的な相談をしていた山形県工業技術センターからサポイン事業の提案があり、サポインの採択を目指した。

チーム編成について

代表取締役社長 三浦冨博さん

開発チームは、従来の機種に携わっていたメンバーで結成された。
皆川部長は、「メンバー全員が個性の強いエンジニアのため、団結させることに苦労しました。」とチームの雰囲気作りの難しさを語ってくれた。
団結のポイントは、三浦社長が40年の経営の中で学んだことにあった。
「我が社は9割がエンジニアの会社なので、エンジニアにやる気をおこし、育てることは非常に重要なことです。このような時は、「達成する喜びを実感してもらうこと」を大切にしています」と三浦社長。



「大きなプロジェクトの成功ではなく、小さなことでも成功体験をすることがエンジニアの気持ちを好転させるポイントです。エンジニアの仕事は山登りと同じで、登っているときの苦痛は、頂上での感動で忘れてしまうものです。」
エンジニアに日の当たる会社を作りたいという三浦社長ならではの思いがわかるエピソードだ。
エンジニアのやる気を引き出すマネジメントによって、開発チームは団結。サポインの研究を成功に導いた。

サポイン事業の成果

テクマン工業のサポイン事業の成果は主に下記3点が挙げられる。

1. 「日本初の精度」で選別できる透明樹脂の選別機開発に成功

装置化が難しいとされていた「透明樹脂ペレット」と「カラー樹脂ペレット」の検査システムの開発に成功し、色彩選別機の上位機種として世界大手の自動車メーカーや大手ケミカルメーカーに多数の導入実績がある。
他社製品との違いは、自由落下方式を採用し、落下中にCCDカメラの画像検査によるリアルタイム検査を行い、不良品をエアジェットでスポット排出している点だ。
ベルト式やシュート式などの他社製品と比べ、選別機の機体の大きさをコンパクトにすることができる。
また、落下式を採用したことで、シュート方式と比べて落下スピードを抑えられ、解像度を上げることができた。それによって、横の分解能が40ミクロンという高精度で異物を検知することを可能にした。
透明樹脂ペレット選別機については、透明のため光の屈折が起こり、安定した画像を得ることが難しかった。これを解決したのが、ドーム型の照明である。無影灯と同じ効果があり、画像解析時に影をなくし、異物だけを判定できるようにしたのだ。
実際に選別されたペレットを見ると、肉眼では判断できないほどのごくわずかな違いである。
このような高精度でのペレット選別は、従来、肉眼で検査していた時に比べ、より品質の高いプラスチック成形への可能性を広げることになる。
今回の選別機では、二つの特許を取得しており、他では真似できない選別レベルを実現している。

検査の様子
検出された異物
操作性も考慮されたタッチパネル
マスプロ事業部 部長 皆川力さん

2. エンジニアの自信が増し、誇りを持てた。

今回の選別技術が認められ、前述した二つの賞を受賞し、世界の大手自動車メーカー、大手ケミカルメーカーに採用された。こういった実績は、エンジニアの誇りと自信につながった。
「このプロジェクトで成功体験を共有できたことが大きな財産になりました。」と皆川部長。

透明樹脂ペレット色彩選別機

3. 販路の拡大
透明ペレットの選別が可能になったことで、透明樹脂を取り扱っているメーカーが新規の顧客となった。また、今回の高度な選別機の能力は「食品、医薬品、化粧品」の分野への進出も期待できるということで、派生技術の研究を進めている。

今後の展望

「採択された透明選別機、カラー選別機、モノクロ選別機の販売促進が最重要課題です。また、それだけではなく、いわゆる三品産業(食品、医薬品、化粧品)と呼ばれる業界にも今回の選別機が活躍できると考えているので、派生技術を開発していきます。」
「良いものが売れるのではなく、売れたものが良いものです」と笑顔で話す三浦社長は、営業に苦手意識を持つエンジニアにも同じことを伝え、社内での意識改革を進めている。
また、クライアントの利便性を考え、皆川部長の指揮のもと2013年11月に東京営業所を設置。その後 2016年7月には、実機の展示とテストを目的に新横浜に営業所を移転させ、さらなる販路拡大を目指している。

「技術で仕事を獲得し、地元経済に貢献したい」というエンジニア出身の三浦社長が率いるエンジニア集団の「アイデア」と「開発力」は、これからも日本のものづくりを先頭に立って牽引していくだろう。

開発チーム
紹介動画
研究開発技術情報
プロジェクト名:
プラスチックペレット品質管理システムの高度化開発
事業実施年度:
平成22年度~平成23年度