ステンレス鋳鋼品の信頼性向上に係る技術の開発
技術部兼営業統括部長中村保彦
品質保証部 副部長 鈴木浩
技術部 課長 橋本文雄
ロストWAX鋳造における低コスト・量産システムと高機能な金属特性の融合
会社紹介及び製品紹介
山形精密鋳造株式会社は1986年に山形県長井市にて創業。同社は金属加工の中で最も長い歴史を持つロストワックス精密鋳造法を用いて、鋳物製品を製造している。
通常同工法は多品種少量生産が一般的で、高コストな生産方法と認識されていたが、同社では独自のシステムを開発し、新たな設備導入を図ることで低コストかつ大量生産を可能とした。
現在、生産する部品は自動車の排気系部品を中心として、国内の自動車メーカーはもちろん、一部海外メーカーの部品も生産している。
研究開発(サポイン事業)のきっかけ
製品を納入した顧客から「ステンレス製品が腐食している」という声があり、腐食の原因を探り、耐熱性や耐食性に優れたステンレス製品の開発を希求したことが本研究開発のきっかけとなった。
研究開発を進める中で、同社の評価技術や材料の知見では及ばない部分が発生したため、同技術に関して知見を持つ、山形県工業技術センター及び秋田大学、事業管理として山形県産業技術振興機構が連携し、共同体を結成。平成22年度にサポイン事業に採択され、共同体による研究開発を開始する。
研究開発(サポイン事業)の成果
研究開発課題として、オーステナイト系ステンレスの耐食性向上という課題あった。オーステナイト系ステンレスは主にバイクの燃料系部品に用いられ、本研究開発では腐食の原因究明と対策を確立し、量産化するということが求められた。
また、もう一つの課題として、フェライト系ステンレスにおける、耐熱性の向上があった。フェライト系ステンレスは自動車の排気系部品に用いられており、自動車業界におけるダウンサイジング化により高機能かつ耐熱性が求められていた。
(タービン・アウトレット部品)
同研究開発は自動車業界を中心とした、市場の厳しいニーズに対応するため、上記の課題解決は当然として、低コストかつ大量生産を実現するという大変困難な事業であったが、前述の各機関が強みを発揮し、研究開発は成功、平成24年度には事業化するに至った。
本事業は同社の技術と共同研究機関の知見がマッチングした好事例となっている。
サポイン事業後の効果
(バイク部品関連)
鈴木副部長はサポイン事業の効果として、以下の点を挙げた。
サポイン事業を経る事で、これまで解決できなかった課題を解決し、自社の課題だった部分を強みとすることができた。
研究開発で得たノウハウを自社のシステムと融合させ、共同体内の研究機関と新たな技術を開発したという成果を挙げることで、顧客の信頼を得た。
今後の展開
国内産業の需要が減少し、海外メーカーとの競争が激しくなる中、鋳鋼専門メーカーとして、耐食性に優れたオーステナイト系ステンレス、高機能なフェライト系ステンレスのノウハウを持ち合わせ、幅広くお客様のニーズに応えることができると考えている。
また、現在も研究開発は続いており、山形県工業技術センター等と連携しながら、品質の更なる向上へ努力をしていく、と鈴木副部長は意気込みを示していた。
紹介動画
研究開発技術情報
- プロジェクト名:
- フェライト系ステンレス鋳鋼の高機能化に係る技術の開発
- 事業実施年度:
- 平成21年度~平成21年度
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