文字サイズ
標準
色の変更

サポイン好事例を探す

  1. トップ
  2. サポイン好事例検索
  3. 絶対的な安心・安全が求められる ソナーセンサーの高品質・低コスト化のため ロス削減のプレス一貫生産ラインを構築

絶対的な安心・安全が求められる
ソナーセンサーの高品質・低コスト化のため
ロス削減のプレス一貫生産ラインを構築

日伸工業株式会社 代表取締役社長 清水 貴之 様(写真中央)
日伸工業株式会社 技術部 技術管理課 課長 柏原 靖彦 様(写真中央右)
日伸工業株式会社 技術部 技術一課 技術補 松下 祐輔 様(写真右から二番目)
日伸工業株式会社 技術部 技術一課 主任技師 馬場 保 様(写真右)
滋賀県工業技術総合センター 主任専門員 電子システム係長 深尾 典久 様(写真左から二番目)
公益財団法人滋賀県産業支援プラザ 連携推進部 ものづくり支援課 調査役 篠原 弘美 様(写真中央左)
公益財団法人滋賀県産業支援プラザ 連携推進部 ものづくり支援課 主査 川口 基雄 様(写真左)
 

何度苦境に立たされても高度技術は裏切らない

御社のこれまでの歩みを教えてください。

当社は2021年7月で63期を迎える総合精密プレス部品メーカーである。
日本でブラウン管テレビが始まった頃から電子銃(電子ビームを放出する重要部品)を製造。海外に工場を持つなど、国内に限らず海外シェアも拡大したことで急成長を遂げた。しかし、2000年ごろからテレビの主流はブラウン管から液晶へ移り、そのあおりを受けて主力事業を失うという危機的状況に陥った。そのため液晶に舵を切ったが、好調だったのは地デジ移行まで。その後は各家電メーカーの液晶パネル撤退が相次ぎ、再び主軸を失う事態となる。
しかし、売り上げが落ち込み、くすぶっていた期間に、自動車の電動化の流れをとらえて、センサーの筐体の研究開発に力を入れたことで、復活することができた。現在は、サポインの研究開発で得た基幹技術をもとに、車載電池部品の分野でシェアを拡大し続けている。

ハイブリッド車用電池部品

ある部分に特化して急成長しながら、突然マーケットを失うという厳しい現実を何度も体験なさったのですね。

世界でこれまで当たり前に使われていたものが突然無くなってしまうので、何かに特化しすぎることは極めて恐ろしい。その時に「このままではダメだ、家電メーカーの下請けから早く脱却しなくては」と強く感じた。しかし何か次の手を、と焦って飛び込み営業をしてみても、うまくいかない。自動車の電動化に向けて開発を試みるが充分な資金がない。
その時に知ったのが、サポインだった。サポインは当社にとって、再生に大きく寄与した素晴らしい制度だった。

サポインには何度も採択され、毎回大きな成果をあげておられますね。

初めてサポインに採択されたのは2012年。精密冷間鍛造技術と金属プレス加工技術を融合させて、汎用プレス機でも実現可能なプレス複合化技術を確立した。この技術は、自動車部品電池メーカーに採用され、リチウムイオン電池用端子部品として実用化した。
2度目は2015年に採択され、押し込みながら絞るというプレス技術「小径厚板絞り工法」を開発した。この開発で、第8回ものづくり大賞を受賞。メディアでも頻繁に取り上げられるようになり、会社自体の注目度が高まってくると、目に見えて社員のやる気があがってきた。
3度目は2018年。自動車のソナーセンサーの研究開発を行った。ソナーセンサーは超音波の時間差で物とクルマの距離を測る仕組みであり、極めて高い精度が求められる部品である。これを製造するには、実物からもう一度計測して、ひとつずつベテラン技術者が手で削って微調整するという最終工程が必要であり、そのぶん非常にコストがかかっていた。
ソナーセンサーは現在、車一台あたり10個以上設置されることが当たり前の時代になり、さらに高精度・低コスト・安定した生産体制という高レベルのニーズを満たせる開発が求められている。切削をしないでプレスだけで製造する方法を開発し、実用化に向けて生産体制の確立を目指した。

開発した装置

チームなら信頼と熱意でともに乗り越えられる

産学官連携プロジェクトを成功させる秘訣は何でしょうか。実際、みなさんはどのように動いていらっしゃいましたか。

【日伸工業株式会社/松下祐輔 技師補】
申請から採択に至るまで、常に頼りになる存在が滋賀県産業支援プラザだった。採択率全国1位を誇る支援プラザの指導は、常に厳しさと温かさがある。容赦なく繰り出される厳しい赤ペン指導に、何度泣かされたかわからないが、「この人を信じてついていけばいい」と全面的に信頼できた。社外であっても、ともに切磋琢磨できる関係性が築けたことはとてもありがたいことだと思う。
4年前からこのプロジェクトに関わり、自分にできるかなと不安だった。何もわからない中でのスタートだったので、周囲からのすべてのアドバイスがとても勉強になった。例えば支援プラザの篠原さんからは、「専門分野の言葉を並べても多くの人には理解できないから、わかりやすく平易な表現を心掛けるように」と指摘を受けたことで、伝え方に特に気を付けるようになった。愛ある指導で、伝える能力を伸ばしてもらえたと思う。そして、試行錯誤はしたが、開発の楽しさを感じることができたのは、大きな経験となった。次回もメンバーになっているので、これからも引き続き頑張っていきたい。

【公益財団法人滋賀県産業支援プラザ/篠原弘美 調査役】
担当者の素直さも、成功の一要素と感じている。松下さんは、私たちの指摘やアドバイスに対して、知らない分野のことであっても臆せず学ぶ姿勢がある。例えば、製造業は作ることだけにフォーカスしがちだが、文化や背景、現在に至る経緯もきちんと理解しておかねばならない。松下さんはそれを素直に受け止めて、業界研究にもつねに積極的だ。
プラザとしては、とんがった企業を作りたいという思いがある。そのために厳しさや難しさを求めることが多いが、日伸工業株式会社はその求めに対して、必ず応えようとしてくれる。厳しさとは、その企業にとって面倒だったり、弱点だったりを指摘することなので、反応しない企業も多い中、この柔軟さは素晴らしいし、これからも発展し続けると思う。

【滋賀県工業技術総合センター/深尾典久係長(副総括研究代表者)】
工業技術センターでは、プラザさんと同様、常に企業の役に立ちたいと考えている。そんな中で日伸工業株式会社とは、ソナーセンサーの太鼓面の共振点をともに探した。ともに進めていくことで、突破していくことの面白さを感じさせてもらえて、とてもやりがいのある貴重な経験をさせてもらえたと思う。

【日伸工業株式会社/馬場保 主任技師】 
正直、サポインは大変なプロジェクトだと思うが、その分プラスになる経験が多かった。例えば、これまでは図面ばかりで、技術文書を書く機会などほぼなかったが、サポインをきっかけに文書の書き方をいちから勉強させてもらったり、いろいろな人とコミュニケーションする機会が増えて視野を広げることができたり、大いに自己研鑽につながったと思う。

サポインの成果は「会社そのものを変革すること」

今後はどんな展開をお考えでしょうか。

当社の強みは「加工技術の高さ」にあると考えている。自動車部品としては後発企業であるが、すべてに通じる技術を持っていたことで、様々な部品に参入し、2020年版グローバルニッチトップ100選にも選ばれた。ところが最近では、車載電池部品のニーズの高まりとともに参入企業が急増して世界規模でコスト競争が勃発しはじめている。
そのため、2021年度のサポインでは、医療分野で活かせる技術開発に取り組むつもりだ。
世界を取り巻く状況は急激に変化し、安定し続けることはないということを過去の経験から知っている。そして、高度な技術で進化し続けていけば、それを違う分野でうまく応用させられるということもサポインを通じて経験してきた。
紆余曲折を経て、いま考えるのは、当社にとって会社の規模を大きくすることはさほど重要ではないということだ。それよりも、このコア技術を活かし「グローバルニッチトップ」であり続けることが何よりの誇りである。

サポインを活用される企業に対してアドバイスをお願いします。

サポインとは、国費を使って行う事業であるため、研究開発をきっかけに「社会に対する成果」が問われる。当社は、コア技術のブラッシュアップを継続的に行い、世の中の進化に貢献しようと努めてきたが、それは人材を育てることも、地域に対しての貢献も含んでいる。多くの企業が地域と連携することで力をもらい、その技術で多くの人を幸せにすることができれば何よりだと思う。
当社では、ベテランの職人が「現代の名工」に選ばれたり、サポインでの成果が社外から認められるようになったことで、社員のモチベーションがあがり、個々が努力するようになった。その努力を会社がサポートすることにして、受講費や受験料を全額補助することにしたところ、正社員の約半数が国家資格を取得。サポインとは、単なる研究開発のためだけでなく、社員のやりがいや誇りにも大きく貢献してくれる。この挑戦は、企業にとって変革の一歩となるのは間違いない。

サポイン技術情報
プロジェクト名:
トランスファープレス技術を用いたソナーセンサー用のアルミ成形技術およびIOT活用の製品保証技術の開発
事業実施年度:
平成30年度~令和2年度