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イヨカンの皮を化粧品原材料に、地域の特産品に新たな価値を創出

愛媛製紙株式会社
技術部 技術課 主任 矢木 誠一 様

脱炭素な新素材セルロースナノファイバーで、廃棄される果皮を有効活用

今回の研究開発の背景を教えてください。

セルロースナノファイバー(以下、CNF)は、植物繊維をナノレベルまでほぐした天然由来繊維で、鉄の約5分の1の軽さでありながら、約5倍の強度をもつカーボンニュートラルな新素材として注目されている。紙の原料であるパルプから製造できるため、多くの製紙会社がこぞって実用化に向けた研究開発に取り組んでおり、当社も開発に着手したが他社とは異なる道を模索していた。
柑橘の生産が盛んに行われている愛媛県では、柑橘の加工を行うジュース工場から大量の果皮が廃棄されている現状があり、廃棄物削減や有効利用の課題があった。
そこで、果皮に含まれる多くの有効成分がパルプ由来のCNFとの違いや地域性を出せること、また、廃棄物活用の課題解決に貢献できることに着目し、柑橘果皮からCNFを製造する研究をスタートした。

柑橘由来CNF
柑橘由来CNF配合化粧品

サポインの申請に当たって、どんなところに苦労しましたか。

初めてのサポイン申請で、書類作成するにも勝手がわからず、申請書類作成に慣れている愛媛県産業技術研究所に相談にのっていただいたり、具体的なアドバイスをいただいたりした。事業管理機関である公益財団法人えひめ産業振興財団には、書類の最終チェックをお願いし、わかりやすく丁寧に教えていただいた。

新しい挑戦や課題の解決に対して、どのように取り組まれましたか。

パルプと異なり、果皮は「生もの」であることから、当社独自の技術によって解決していった。
柑橘由来CNFの事例がないため、安全性の評価についても定まったものがなく、どういった試験をしたらいいか、共同研究機関と相談しながら決めていった。
また、新型コロナウイルス感染症の影響で例年と比べて、面談の機会が減ったのは残念であった。展示会での要望や指摘事項をフィードバックしてブラッシュアップしたかったが、Web会議などで代替した。

一企業では難しい事業化も、産学官の連携で実現可能に

サポインを活用してよかった点はどんなところですか。

これまで小規模な製造にとどまっていた柑橘由来CNFについて、実際の製造規模で作業の効率化やコストダウン、安全性評価や用途開発ができたのは、サポインを通じた産学官の共同研究によるところが大きい。愛媛大学では、もともと柑橘の果皮の研究実績があったので、多くのアドバイスをいただいた。サポイン事業は、始めに事業化に向けた構想を練るが、実際にやってみるといろいろなところでつまずく。愛媛大学や愛媛県産業技術研究所などから手助けをいただいたおかげで、不測の事態にも迅速な対応ができ、躓きを回避することも出来た。また、川下企業に株式会社アイテックに入っていただいたおかげで、いち早く事業化に結び付けることができた。当社は、普段は段ボール原紙や家庭紙原紙を製造している“紙造りのプロ”ではあるが、イヨカンの皮を研究したことはなく、ましてや化粧品分野も初めての挑戦である。安全性や品質の面でどういったところをクリアしないといけないのか、株式会社アイテックに一から教えていただいた。逆に、製造プロセスでは、製紙業界ならではの技術を生かすことができ、双方にとって実りある結果となった。

現在の状況と事業化の見通しについて教えてください。

2021年4月より、柑橘の有効成分や増粘・乳化補助・皮膚保護機能を活かした化粧品原料として製品化、販売を行っている。現時点では、保湿クリームとボディソープ、リンスインシャンプーに柑橘CNFが採用されて製品化されて販売されている。今後は、化粧品の商品展開を進めるとともに、増粘剤、乳化剤、分散安定剤として、また新たな触感や保水性を活かして、食品への応用も視野に入れている。食品残渣を使用しているためSDGsに配慮した商品であり、薬品処理や添加物を使うこともなく機械的な力だけで処理を行っているため、安心して食品にも利用できる。今後は、食品メーカーの共同研究先をみつけて、販路を広げ、製紙以外の新しい柱として成長させたい。

サポイン技術情報
プロジェクト名:
柑橘由来セルロースナノファイバーの革新的製造プロセス及び用途開発
事業実施年度:
平成30年度~令和2年度