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痛みが少なく、投与管理もできる電動インスリン投与装置を開発

 
株式会社アイカムス・ラボ
(左から)
開発部グループリーダー 千田 勝友 様
開発部グループマネージャー 木村 浩行 様
代表取締役 片野 圭二 様
取締役副社長 小川 裕二 様
主幹技師 田村 孝 様

インスリン投与をより安全・確実に

今回の研究開発の背景を教えてください。

糖尿病患者は日本だけでなく、世界でも増加傾向にあり、インスリン投与による治療が一般的である。インスリンの投与方法は大別すると、手動投与と電動投与があり、手動投与はペン型装置で自己注射する。安価でシンプルなのが特徴だが、投与時に痛みが伴い、また患者自身で投与するため、医師が投与時刻や回数を把握できない、という問題がある。もう一つの電動投与は、一度機器をセットすれば数日間は定期的に自動投与されるので、何度も針を刺す必要はないが、はじめに腹部に穴を空ける必要があり、また機器自体が海外製で高額といった問題がある。このような背景から、医療機器メーカーより①患者の負担が少ない ②多回数投与できる ③低価格で携帯性に優れている ④投与の管理ができる 機能を備えた「電動インスリン投与装置」を市場に提供したい、というニーズを受けた。そこで、小さな機械装置、モーターと歯車とアクチュエーターの技術を使うことで、課題解決ができると考え、本プロジェクトをスタートした。

目標項目や目標値はどのように設定しましたか。

製品の目標としては、①1回の充電で50回投与できる(50回の根拠は、1日5回投与した場合、1週間(5回×7日=35回)以上持ち歩けることで、旅行などにも行ける)、②Bluetoothを用いて、スマートフォン等を介し、医師が投与管理できる、③小型化・ハンディーにする、である。これらを達成するための技術開発目標として、①AIを用いてモーターの消費電力を下げる、②薬剤を押し出す機械の効率を上げることで消費電力を下げる、③この2つの技術によって、1回の充電で50回投与を可能とし、無線通信を可能にする、と設定した。

AI制御及び高効率すべりねじを搭載した試作機

研究開発を進めるにあたって苦労したことはありましたか。

まず一つは、AIによる制御である。機械装置の制御はPID(Proportinal(比例)Integral(積分)Differential(微分)の3つの組み合わせで制御)が一般的で、AIはこれまであまり適用されていない。PID制御だと、消費電力がある程度しか下がらず、そこをブレークスルーする必要があり、岩手大学の金 天海先生のもとで、別の用途で開発したAI技術を今回のプロジェクトに応用できないか研究を行った。はじめはうまくいかず、機械にマッチしたAIに行きつくまでに苦労した。
もう一つは、薬液を押し出すため、モーターの回転運動を直線運動に変換することである。従来のねじでは、回転を直線に変換すると、100のエネルギーが15程度になってしまい、ほとんどが熱エネルギー等でロスしてしまう。これまで歯車の回転に関する研究については、やり尽くしてきた感があるが、回転を直線に変換するにはどうしたらいいか、ねじ山の形、ピッチ、ねじの表面の状態、潤滑材などあらゆる方面からトライ&エラーを繰り返し、最終的に、ピッチを長くすることで、15だったものを70~80まで上げることができた。一方、ピッチが長いとねじに噛み合う部分が少なく、荷重が増えて摩耗しやすくなる。耐久性を向上させるため、摩擦の研究を専門に行っている岩手大学の内舘 道正先生と、力がかかってもその力に耐えられるよう、表面の状態(表面の粗さや潤滑油)を最適化する研究を行い、目標としていた耐久回数(3万回)を大きく上回る30万回の実現に成功した。以上の2つの技術開発は全く未知な分野で、文献等もなく手探りで進めた。

プロジェクト推進にあたって、どんなことを意識しましたか。

製品化を見据えながら制約の中で技術を開発すること、マーケットが求める仕様・スペックを実現することを常に意識した。技術が成功しても商品として成り立たないのでは意味がない。医師と相談したり、糖尿病患者に実際にヒアリングしたりして、どのような製品であれば実際に使用してもらえるかを調査した。

開発のパートナーとはどのように進めていきましたか。

当社は、岩手県のヘルステック関連企業が産学官金連携や共同研究開発を行う拠点であるヘルステック・イノベーション・ハブ(HIH)の中にある。事業管理機関である公益財団法人いわて産業振興センターも、共同研究開発を行った岩手大学も、アドバイザーもすぐ近くにいるため、密に連絡を取り合うことができた。

研究開発と製品開発をパラレルに

サポインを活用してよかった点はどんなところですか。

サポインは金額規模が大きいため、単なる技術開発や部品開発だけでなく、製品開発まで着手できる。研究開発の見通しが立てば、そこから先は技術より販売の問題になるので、ハードルはぐっと下がる。また、サポインを活用して研究開発をしながら、同時並行的に自前で製品開発を進めることができるのもありがたい。研究開発でできたものを製品開発にフィードバックすることで、製品化するまでの期間を短縮できる。

今後の課題や見通しを教えてください。

2026年に商品化を計画しており、基本的な性能はクリアできているので、今後の課題としては、もう少しスリムに、重さも軽くしたいところである。小型化・軽量化については、技術的には見通しが立っているため、あとは使いやすさやデザインについて、ヒアリングと改良を重ね、市場に出していきたい。もう一つの課題としては、医療機器として厚生労働省から認可を得ることだ。在宅医療機器として使用できるよう、この製品を規制緩和の働きかけに役立てたい。

サポイン技術情報
プロジェクト名:
小型薬剤投与装置及び薬剤管理システムにおける低消費電力化の研究開発
事業実施年度:
平成30年度~令和2年度