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電気分解の応用技術でエネルギー効率を改善!
遠隔操作のできる監視システムを搭載し、
スケール析出を除去する自動装置を開発

(上段左から)
イノベーティブ・デザイン&テクノロジー株式会社 酒井 文香 様
イノベーティブ・デザイン&テクノロジー株式会社 橋爪 清 様
イノベーティブ・デザイン&テクノロジー株式会社 村木 美代子 様
イノベーティブ・デザイン&テクノロジー株式会社 田中 博 様
静岡大学 中山 顕 教授
公益財団法人 浜松地域イノベーション推進機構 林 豊 様
(下段左から)
イノベーティブ・デザイン&テクノロジー株式会社 小林 利壽 様
イノベーティブ・デザイン&テクノロジー株式会社 井口 豊彦 様
公益財団法人浜松地域イノベーション推進機構  西野 直也 様

■電気分解は汎用性の高いエコな科学技術

今回のサポイン事業に応募するまでの経緯を教えてください。

私たちは、電気分解の応用技術で、医療や食品加工、農業、工業など様々な産業の進化を支える開発型企業である。1990年に電解の応用実験をスタートして以来、医療分野では強酸性水を生成して殺菌する「殺菌洗浄装置」、飲料分野では「熟成・酸化防止処理装置」など、人体に安全かつ環境負荷の低い製品を世に送り出し、国内外で高い評価を受けている。
今回の事例は、2014年に静岡大学特任教授の中山顕先生にご指導いただき進めたNEDOでの技術(※)を、使用目的を変更して新たな事業化のために活用させていただいたものである。当時NEDOで開発したのは、地熱発電時に発生するスケール(炭酸カルシウム)を除去する装置であったが、そこで得たコア技術を、スケール除去のニーズの高い工業分野で応用した。

※平成26年度~平成29年度「地熱発電技術研究開発 地熱発電の導入拡大に資する革新的技術開発 電気分解を応用した地熱発電用スケール除去装置の研究開発」(NEDO)

■運転効率を悪くするスケールを安全な方法で除去

今回開発した製品は、どういった装置ですか。

エレクトロライフ

部品製造で行われる冷却工程において、多くの工場で採用されている水冷式の場合、配管や機器にスケールが付着・蓄積する現象がおこる。それを、電解水を用いて抑制・除去する装置を開発した。
スケールがやっかいなのは、一度付着すると鍾乳洞のように徐々に蓄積し、設備の効率に大きく影響するからである。例えば直径16㎜の水路に0.1㎜のスケールがついた場合は、効率は約15%も低下してしまう。つまりこれは、冷却に時間がかかり、電気代が15%かかる、ということである。これを放置すると、蓄積によって配管の一部が熱を帯びて閉塞し、最終的には突然、動かなくなってしまう。スケールの発生は必然であるため、それをどのように抑制し、除去するかが重要になってくる。
現在、対策としては、強酸性の薬剤を流す方法で対処するのが一般的だ。しかし、強い薬剤の連続的使用は配管の腐食をもたらす。また、ゼロエミッションの動きの中で、化学薬品を使わない方法のニーズが世界中で強まっていることもあり、当社ではすでに2005年、同様の試みとして自社開発装置「エレクトロライフ」を販売していた。これは、スケールを磁石で除去する方法をヒントに、電流を流す方式を独自に開発したものである。ラインに装置を組み込む必要がなく、冷却塔に設置するだけという簡便さに加え、万が一装置に不具合が生じても、工場の稼働には影響がないという点などから、これまでに700台を売り上げ、国内外の工場に採用された。
ただ、実際の経過観測では除去されているというデータを得ているのにも関わらず、なぜその結果になるのかについては、水というもの自体が解明されていない物質であるが故に、流体力学や電気化学など様々な理論で挑んでも、明解な根拠に完全に落とし込むことができないという悩みがあった。そして、「エレクトロライフ」は電解水を利用して循環冷却水系全体を改善する製品であるが、現場によっては、熱が加わる部分に対してのみ集中的に除去することも必要であることが分かり、その方法についても模索していた。
今回行ったのは、「必要な部分だけに電解酸性水を流してスケールの核を除去するシステム」の開発である。

試作機

NEDOでの研究開発の中で、「エレクトロライフ」とは全く異なるアプローチで、同等の効果のある方法を見出したことから、再び中山先生にご協力いただき、サポインに舞台を変えて、新たな研究が始まった。
静岡大学の熱流体研究室では、ラボ実験、スケール析出予測の理論検討や3Dモデルの作成など、あらゆる分野の知見を総動員してデータの収集や分析を根気よく続けていただいた。こうして、スケールの核が発生するメカニズムや、電解によって得られる成果について、多くの人にも理解しやすい理論を製品にまとめることができたのである。
そのかいあって、完成品を見ていただいた多くの企業からも「スケールの出現を防ぐ仕組みが理論的にわかりやすく、興味深い」と、良い評価や前向きな言葉が多く聞かれた。既発の「エレクトロライフ」も何万台売れていても不思議のない製品だと自負しているが、この新製品はそれを上回る評価をいただいており、これからの展開に大いに期待している。

■社外との繋がりや貴重なアドバイスが開発のヒントになった

研究開発を進めるにあたり、難しかった部分はありましたか。

試作機のモニタ

技術的には、ずっと継続している研究の延長上にあることなので、とくに困ったことはなかった。しかし、今回は、運転稼働状況を常時監視し、万が一不具合が発生した際にも迅速な対応ができるように、IoTを活用したシステムを機器内部に構築したため、その部分での難しさは常にあった。
このシステムを開発したのは、工場によって使用状況が違うためである。24時間稼働させているところもあれば、半日で止めるところもある。このように機械を止める時、動かすときがあるとpHの調整がうまくいかない。お客様それぞれの使用状況に合わせて、より緻密にpHを安定して制御できるようなシステムとして、よりニーズに即したものになっている。

大学やアドバイザーとの連携はどのように行われましたか。

月に1回、中山先生に相談、大学ではラボでの実験や解析を進めていただき、社内実験と合わせて頻繁に共有していた。中山先生とは20年来の付き合いだが、大学と企業がうまく連携できるのも、中山先生のお人柄があってのことだと思う。
また2~3か月ごとにアドバイザー企業から意見をいただいた。そのアドバイザー企業との意見交換の中で、「生産に直結するものなので、絶対に失敗のないことが求められる。万が一を起こさないためにどうしたら良いかを考えた製品作りが必要だ」ということを学んだ。トップメーカーであるアドバイザー企業のご意見は、組織の在り方や生産の考え方を知るうえでも、とても参考になった。こうしたことは、サポインの良い点だと思う。

今後はどのような展開をお考えですか。

自動車の生産の流れは、今や東南アジアに移行している。東南アジアは、電力事情が悪いので、さらにシビアに効率の良い生産が求められる。
その流れを受けて、現在、タイの企業とパートナーシップ契約を結び、現地の企業が直接販売できるような仕組みを広げているところだ。フィリピンは、地の利がよく英語も通じるので、ここにも同様に仕組み作りを行っていきたいと考えている。
広報や営業活動については、エレクトロライフを販売している会社に情報を流して、販売先を広げている。コロナ禍でしばらく中断していたが、今後は展示会も活用していき、販路を広げていきたい。

■それぞれの立場からサポインを考える

サポインを活用して良かったこと、大変だったことを教えてください。

【イノベーティブ・デザイン&テクノロジー株式会社/田中博社長】
自社ではここまでの開発はできなかったので、国費を使わせていただいて、本当にありがたかった。当然だが、エビデンスの提示や事務の部分を細かく整えることが重要であり、研究以上の時間がかかってしまった。しかし、サポインは管理機関に入っていただけるので、書類の管理やコーディネートに対して、細やかにサポートしていただけて心強かった。

【静岡大学/中山顕教授】
大学というのは、専門性を追求していく場所であり、学術的にも狭い知見の中で研究することが多いが、サポインのような産学連携の事業に参加することによって、現場の意見もいただけて、人の役に立つことが実現でき、研究者にとっても非常に良い機会だと感じている。事務関係は確かに厳しかった。それでも、事業管理機関のご協力も得られ精算が非常にスムーズに行われるので、多くの企業にとってもありがたいことだと思う。

開発主体者・研究機関・サポート機関の立場から、サポインを活用される企業様へアドバイスをお願いします。

【イノベーティブ・デザイン&テクノロジー株式会社/田中博社長(全体PL)】
国費を使わせていただくということは、研究開発やプロトタイプの製作にお金をかけられない中小企業にとっては、非常にありがたいこと。ぜひこの機会を充分に活用して、良い開発商品をしてください。

【イノベーティブ・デザイン&テクノロジー株式会社/酒井文香部長(社内SL)】
サポインは、事業化を目的に、事業管理機関から市場のニーズやマッチングする企業の情報提供や、これまで付き合いのなかった川下企業からのアドバイスなど、手厚いサポートがあります。企業にとっても大きな一歩となると思いますので、ぜひ頑張ってください。

【静岡大学/中山顕教授(全体SL)】
産学連携のできるよい機会。ぜひ開発意欲のある企業や研究者たちと一緒に、有益な研究開発をすすめていってほしいと思います。

【公益財団法人浜松地域イノベーション推進機構/林豊氏】
今回は、もともと研究の素地があり、それを進化させて事業化を図るというケースでした。事業管理機関として、私たちは事業化を成功していただくために、企業様に対してかなり細かい計画を求めます。しかし、1億円もの国費を投下してできた技術や製品は、必ずや将来のメインの事業となると思いますので、上手に活用していただきたいと思います。

サポイン技術情報
プロジェクト名:
エネルギー効率改善に寄与する電解水を用いたスケール析出抑制除去装置の開発
事業実施年度:
平成30年度~令和2年度