デザイン開発
内視鏡診療の持続可能性を高めるシステムを、人間工学的評価に基づいて設計し、普及基盤を構築する。
広島県
株式会社キャステム
2026年2月9日更新
プロジェクトの基本情報
| プロジェクト名 | 内視鏡医を救え!患者激増時代の、真に人間工学的な内視鏡保持システムの研究開発 |
|---|---|
| 基盤技術分野 | デザイン開発 |
| 対象となる産業分野 | 医療・健康・介護 |
| 産業分野でのニーズ対応 | 高機能化(新たな機能の付与・追加)、高性能化(既存機能の性能向上)、高性能化(信頼性・安全性向上)、高効率化(同じ生産量に対するリソースの削減)、高効率化(人件費削減)、デザイン性・意匠性の向上 |
| キーワード | 内視鏡保持システム,人間工学評価,負担軽減,ウェアラブル |
| 事業化状況 | 実用化に成功し事業化間近 |
| 事業実施年度 | 令和4年度~令和6年度 |
プロジェクトの詳細
事業概要
本事業は、内視鏡医の身体的負担を軽減しつつ、手技の精度・効率・安全性を確保する高自由度内視鏡保持システム「エンドタクティクス」の開発を目的とし、2026年度の事業化を目指すものである。人間工学に基づく設計法および性能評価法を導入するとともに、バーチャルエンジニアリングによる設計最適化を進めることで、内視鏡医の作業負荷を低減し、新たな臨床支援環境の構築を図る。あわせて、術者の姿勢・動作やスコープの保持・取り回しを可視化・デジタル化し、身体的疲労との関係を定量解析することにより、試作プロセスを科学的かつ論理的に進め、最適仕様への迅速な絞り込みを実現する。初年度にニーズ・市場・特許調査および動作の見える化を行い、2~3年度目には定量データに基づく試作・評価と、有力医師らを巻き込んだ学会・論文発表を並行して進めることで、エビデンスの蓄積と市場における受容性・信頼性の向上を図り、事業化への道筋を確かなものとする。これにより、医療現場における働き方改革や医療従事者の離職抑制に貢献するとともに、得られた技術を他の医療・介護機器へ展開することで、中小企業の技術基盤強化にも寄与することが期待される。
開発した技術のポイント
開発した技術のポイントは、①革新的な内視鏡保持機構、②人間工学に基づく定量評価手法、③内視鏡医との共創による設計フィードバックループの3点である。本研究開発では、内視鏡保持システム「エンドタクティクス」を開発し、第11世代までの試作・評価を経て最終仕様を確定した。ハードウェアとしては「腰ベルト式装用部+自在アーム式保持部」という構成に到達し、体格差に対応し一人で容易に着脱できる腰ベルトと、多様なスコープを安定保持できる自在アームにより、装着性・操作性・安定性を高い水準で両立している。人間工学的評価では、モーションキャプチャで術者とスコープの動きを捉え保持位置・可動範囲を最適化し、その結果、筋電図で肩・上腕・前腕の筋負荷が有意に低減することを確認した。さらにNASA-TLXおよびアンケート調査により、主観的負担の増大を招くことなく、良好な装着感と操作性が得られることが示された。加えて、全国の医療従事者延べ184名からの実践的フィードバックを設計に反復的に取り込むことで、「臨床ニーズに根ざした設計→定量評価→改良」という共創的な開発ループを確立した点も、重要な技術基盤である。
具体的な成果
装用部では、第1〜11世代で素材・固定方法・プレート形状を見直し、伸縮性生地+MoLLE方式や肩ベルト方式で判明した肩・上腕・頸部の負担増大を筋電図で確認したことから、腰ベルトのみで支持する方式へ転換した。その結果、一人で容易に装着でき、不快感を抑えつつ、重量532〜587g・ウエスト62〜104cm対応の最終仕様を確立した。保持部では、4機種のスコープを3Dスキャンして漏斗状カップ型ホルダーを最適化し、±5mm以内でぐらつきなく保持できる構造とした。術者胸部からの距離・角度はモーションキャプチャデータに基づき設計し、レバー操作で3関節を同時固定できる自在アームを採用、装用部への直接取り付けによる一体化で耐荷重と構造の簡素化・実用性を両立した。人間工学的評価では、これらの設計にモーションキャプチャデータを反映し、筋電図により上腕二頭筋・僧帽筋・前腕屈筋の負担軽減とタスク時間の非劣性を確認した。NASA-TLXおよびユーザビリティアンケートでも主観的負担の増加は見られず、「疲れにくい」「処置具挿入が容易」との評価から、「エンドタクティクス」の有効性が示された。
知財出願や広報活動等の状況
研究開発の過程では、特許調査を実施しつつKey Opinion Leadersを積極的に関与させ、学会発表・論文発表を通じてアカデミックセールスの準備を進めた。具体的には、パイロット版がまとまった段階でエンドタクティクスに関する共同特許出願を行い、その準備として先行特許の洗い出しとマッピングを実施し、類似機構との違いや本技術の独自性、権利化のコアとなる構成要素を整理した。また、モーションキャプチャや筋電図による人間工学データをKOLと共有しつつ、どのような臨床的価値・エビデンスを前面に打ち出すかを検討し、学会・論文での訴求ポイントやメッセージの磨き上げを進めてきた。2024年10月にウィーンで開催されたUEG Weekにおいて研究成果が発表され、国際的な場での認知拡大が進んだ。さらに「軟性内視鏡のエルゴノミクス」に関する論文投稿も進行中であり、臨床現場への導入とともに学術的裏付けによる社会的普及が加速すると見込まれる。
研究開発成果の利用シーン
本システムの活用により、内視鏡医は両手を自由に使いながら作業でき、姿勢の負担を大幅に軽減できる。とくに、高齢化に伴い検査・治療件数が増加する一方で内視鏡医が不足している大学病院・基幹病院の内視鏡センターにおいて、上部・下部内視鏡検査やESDなど長時間にわたり重いスコープを保持し続ける手技での利用が想定される。現行のスコープ本体や内視鏡室レイアウトを大きく変更せず、術者が自ら装着し体格・操作スタイルに合わせて調整できるため、既存ワークフローを保ちながら首・肩・腰の慢性的負荷を軽減し、集中力の維持とパフォーマンス低下の防止に寄与する。川下の医療機器メーカーにとっては、既存内視鏡システムに後付け可能なエルゴノミクス支援デバイスとして、周辺機器ラインアップの拡充や差別化製品として展開できる。結果として、検査・処置の効率・精度・安全性の向上に加え、医療従事者の疲労・離職抑制や地域医療の検査キャパシティ維持・拡大に資する。患者には診断精度と治療の質の向上としてメリットが還元される。さらに、術者の姿勢・動作のデジタル化・定量解析は、他の医療機器・介護機器開発への展開も可能である。
実用化・事業化の状況
事業化状況の詳細
サンプルの出荷・評価は令和7年度後半から令和8年度前半にかけて実施。量産・販売体制の整備を進め、令和9年度から販売開始予定。
提携可能な製品・サービス内容
素材・部品製造、製品製造
製品・サービスのPRポイント
本システムは、内視鏡医の身体的負担を軽減しつつ操作性を維持する点が最大の特徴である。装用部・保持部・接続部を11世代にわたり改良し「腰ベルト式装用部+自在アーム式保持部」という構成に到達したことで、現行の内視鏡システムや室内レイアウトを変えずに、重いスコープを体幹前面で安定保持しつつ、術者の体格・利き手・操作スタイルに合わせた“パーソナルな作業環境”を再現できるようになった。アニマルラボでのESDタスク等を用いた検証では、上腕・肩・前腕の筋電図で有意な負荷軽減を示しながら手技時間は非劣性で、「両手が自由で疲れにくい」「処置具挿入がしやすい」といった評価も得ている。モーションキャプチャー・筋電図・NASA-TLXなどによる人間工学データを設計に反映し、KOLと連携しながら臨床ニーズに即したエルゴノミクスデバイスとして仕上げている点は、川下メーカーにとって周辺機器ラインアップの高付加価値化・差別化につながる。さらに、ヘッドマウントディスプレイや周辺デジタル機器との併用によって手技解析・教育・評価への展開も可能であり、術者支援と教育・普及啓発を一体的に提供し得る製品である。
今後の実用化・事業化の見通し
今後は、装用部と保持部について、耐久性や抗菌性、薬品への耐性などを評価する試験を実施し、安全性と信頼性をさらに高める。現在は最終仕様を対象に、抗菌性や洗濯・長期使用による劣化、洗浄・消毒・乾燥といった再処理手順に関する追加試験を行い、その結果を使用説明書および再処理手順書に反映させる。同時に、量産試作や治具設計、作業手順および検査基準の整備を進め、ISO13485に対応した品質マネジメント体制と、原価試算にもとづく価格設定、部材調達を含む供給体制を具体化していく。市場面では、まずKOLが所属する大学病院や基幹病院で先行導入を行い、筋電図や作業時間、主観的負担などの指標を共通プロトコルで継続的に収集し、論文や学会発表として発信することでエビデンスを蓄積する。同時に、展示会での紹介やデモ機の貸出、ハンズオン形式の説明会等による情報提供を組み合わせて販路を広げていく。さらに、ヘッドマウントディスプレイや周辺デジタル機器と連携した施術支援および教育用途での活用も検討し、複数の切り口から事業化を進める。
実用化・事業化にあたっての課題
医療機関での繰り返し使用に耐える装用部素材の耐久性・抗菌性の検証や、保持部可動機構における固定強度・長期耐久性の確認が必要である。これらは抗菌性、洗濯耐久、長期耐久など評価項目が多く、事業化スケジュール上のボトルネックとなり得る。また、再処理手順を踏まえた洗浄・消毒時の安全管理と取扱説明の整備、量産性と目標原価を両立させる製造プロセス設計、薬事・保険適用の見通しを踏まえたビジネスモデル構築、KOL先行導入で得られる筋電図・作業時間等のデータを用いたエビデンス発信と、学会・展示会・デモ機運用による認知向上も重要な課題である。さらに、ヘッドマウントディスプレイや周辺デジタル機器との連携時には、別途運用基準や責任分担の整理が求められる。以上より、製品仕様のさらなるブラッシュアップ、安全性・信頼性に関する性能試験の実施、承認取得と製販体制の整備、啓発と販路構築、用途拡張に向けた開発の継続が、今後の事業化に向けた主要な課題である。
事業化に向けた提携や連携の希望
本製品に関心のある大学病院・基幹病院・クリニック、ならびに医療機器の製造販売業許可を有する企業との連携を希望する。
プロジェクトの実施体制
| 主たる研究等実施機関 | 株式会社キャステム |
|---|---|
| 事業管理機関 | 国立大学法人大阪大学 |
| 研究等実施機関 | 株式会社キャステム 国立大学法人大阪大学 |
| アドバイザー | 慶応義塾大学病院 神奈川県立がんセンター 山下病院 関西労災病院 千里病院 大阪国際がんセンター 東北大学病院 等 |
主たる研究等実施機関 企業情報
| 企業名 | 株式会社キャステム(法人番号:4240001034952) |
|---|---|
| 事業内容 | ロストワックス精密鋳造部品・セラミック射出焼結部品・ MIM(金属粉末射出成形)部品・FRP射出成形品の製造、 各種販促イベントの企画・立案、自社ブランド商品の企画・製造・販売、 農産物の生産・販売 |
| 社員数 | 300 名 |
| 生産拠点 | 広島本社工場を中心に、日本国内およびフィリピン・タイ・コロンビア・アメリカの海外工場・試作ラボでロストワックス精密鋳造・MIM部品を生産するグローバル生産体制を構築。 |
| 本社所在地 | 〒720-0004 広島県福山市御幸町大字中津原1808番地1 |
| ホームページ | https://www.castem.co.jp/ |
| 連絡先窓口 | 株式会社キャステム 新規開発本部 共創開発課 石井 裕二 |
| メールアドレス | y-ishii@castem.co.jp |
| 電話番号 | 075-325-1811 |
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