文字サイズ
標準
色の変更

研究開発された技術紹介

  1. トップ
  2. 研究開発技術検索
  3. 緩み防止機能付き高力ボルトセット(M16~M36サイズ)

接合・実装

緩み防止機能付き高力ボルトセット(M16~M36サイズ)

大阪府

月盛工業株式会社

2025年1月22日更新

プロジェクトの基本情報

プロジェクト名 建設用部材に用いる緩み防止機能を有する冷間圧造高力六角ボルトセットの開発
基盤技術分野 接合・実装
対象となる産業分野 環境・エネルギー、航空・宇宙、自動車、建築物・構造物、工作機械
産業分野でのニーズ対応 高機能化(新たな機能の付与・追加)、高性能化(既存機能の性能向上)、高性能化(信頼性・安全性向上)、高効率化(保全コスト低減)、低コスト化
キーワード 冷間圧造、高力ボルト、緩み防止、トルシアボルト、洋上風力発電棟
事業化状況 実用化に成功し事業化間近
事業実施年度 令和3年度~令和5年度

プロジェクトの詳細

事業概要

低コストで量産可能な冷間圧造技術を用いて、ボルト・ナット・平座金の各部品に傾斜段差を施し、緩み防止機能を持つ高力六角ボルトセットを開発することを目指している。具体的には、段差の高さや角部の設計、金型の耐久性向上などの技術課題を解決し、従来の製造方法では製造が困難であったM27以上の大型ボルトにも適用可能な技術の確立を目指す。さらに、開発した高力六角ボルトセットは、緩み防止性能およびその耐久性や残存軸力の安定性を検証し、国土交通大臣認定等の取得を目指している。本事業により、建設現場での安全性向上とメンテナンスコスト削減が期待される。

開発した緩み機能付き高力六角ボルトセットの概要
開発した技術のポイント

・世界初の「緩み防止機能付き高力六角ボルトセット」を開発。緩み防止性能を持つ新型高力六角ボルト、ナット、平座金を製造。
・M36を含む各サイズ(M16, M20, M22, M24)の高力ボルト・ナット・平座金の段差加工技術を確立。冷間圧造技術を用いて、段差高さと角部のR加工を精密に行い、緩み防止性能を高めた。
・応力集中を緩和するために、段差の角部にR0.1mmの加工を施し、金型の損傷を防止。
・高精度な3D形状測定機を導入し、各サイズの段差の転写精度を管理。
・段差同士の嚙み合せと締付け軸力による段差の塑性変形により、締付トルクの104%以上でしか緩まないという性能を実証(普通の高力ボルトは67%で緩み、緩み防止性能は普通の高力ボルト比で約150%向上)。
・NAS式振動試験や塩水噴霧試験、リラクセーション試験を経ても、締結力の97%以上を維持し、耐久性を実証。
・段差高さや面数を微調整し、塑性変形を抑える工夫を実施。これにより緩み防止性能を安定化させ、試験結果でも高い耐久性を確認。
・圧造金型の寿命ショット数を想定し、長期間の使用でも段差の転写性を保持できる耐久性を実現。
・実用化試験において、締結後の残存軸力が平均97.5%以上を達成。
・建設現場での実証試験でも残存軸力97%以上の良好な結果を得た。

緩み防止機能付き高力六角ボルトセットの写真
緩み防止性能の評価機器
緩み防止機能付きの高力ボルト、ナット、平座金の圧造転写性結果
緩み防止機能付き高力ボルトの段差面数による緩み防止性能
具体的な成果

・緩み防止機能付き高力六角ボルトセットの製造技術の確立
-冷間圧造にて高力六角ボルトの頭裏面傾斜段差の転写性、および圧造金型ショット数2万回の耐久性
-圧造にて高力六角ナットの傾斜段差の転写性、および圧造金型ショット数5万回の耐久性
-冷間圧造にて高力平座金のオモテ面において傾斜段差の転写性、および圧造金型ショット数3万回の耐久性
・高力六角ボルトセットにおいて緩み防止性能の確保
-普通の高力ボルトが締付けトルクの約67%で緩むのに対し、段差の嚙合せにて締付けトルクの104%以上(普通の高力ボルト比155%以上)でしか緩まないという緩み防止性能を確立できた。
-締結を維持する軸力は、NAS式振動試験、リラクセーション試験、塩水噴霧試験においても、普通の高力ボルトと同等以上の締付残存軸力97%以上の性能を持つことを実証できた。

緩み防止機能付き高力ボルト各サイズの緩み防止性能評価
緩み防止機能付き高力ボルトの緩み防止性能試験
緩み防止機能付き高力ボルトの緩み防止性能の実用化試験
知財出願や広報活動等の状況

・2022年6月に特許が成立した。(特許第7090962号「ボルトの締結構造」)。
・2024年9月土木学会全国大会「緩み防止機能を有する冷間圧造高力ボルトセットの緩めトルク率に関する解析的検討」(大阪公立大学大学院佐倉亮研究員ほか)。
・2024年11月鋼構造シンポジウム「緩み防止機能を有する冷間圧造高力六角ボルトセットのリラクセーションおよびすべり試験」(大阪公立大学大学院佐倉亮研究員ほか)。

研究開発成果の利用シーン

・建築現場での使用。高力ボルトを使用した摩擦接合で、緩み防止機能付きのボルトが施工の信頼性を向上させる。
-特に建築分野ではJIS規格や国土交通大臣認定が必要であり、認定を取得した製品が使用されることが求められる。
・鉄塔や鉄道架線ビームの接合部。外力の繰り返し変動がある場面で、緩み防止機能付きボルトがメンテナンスコストの削減に寄与する。支圧接合部での緩み防止効果が期待され、点検の頻度を減らすことができる。
・洋上風力発電施設の接合部。海洋環境における外力の変動が大きく、引張接合部での緩み防止が安全性確保に重要である。
・機械装置のボルト接合部。緩み防止機能と締付軸力のリアルタイムモニタリングが可能な技術が、長期の安定運用に役立つ。
・航空機産業における使用。ボーイング737MAX9の事故のように、ボルトの緩みによる事故防止のため、緩み防止機能付きボルトの活用が期待される。
-米連邦航空局(FAA)が指摘したボルトの緩み問題の解決策として、緩み防止ボルトの導入が考えられる。

実用化・事業化の状況

事業化状況の詳細

緩み防止機能付き高力六角ボルトセットの事業化は、建設分野を中心に進行中である。まず、建設用途で最も多く使用される高力ボルトM22のロックボルトサンプルを、大末建設をはじめとする建設業界の主要プレイヤーに無償提供し、現場での緩み防止性能の評価を行っている。評価結果を基に、研究開発の終了後、令和6年度から販売を開始する計画である。建築物に使用するには法的にJIS認定および国土交通大臣認定が必要であり、これらの認証取得に向けた申請準備も同年後半から開始予定。また、建設用途に加え、振動が多い機械・重機用途や、洋上風力発電棟などの引張接合用途にも展開し、幅広い市場での事業化を目指している。さらに、高力ボルトの緩み防止機能を普通級六角ボルトやトルシアボルトにも応用し、遮音材や防風材の締結用途にも対応する計画である。これらの展開により、様々な業界での使用が見込まれ、事業の拡大が期待されている。

提携可能な製品・サービス内容

製品製造

製品・サービスのPRポイント

・緩み防止機能を有する冷間圧造高力六角ボルトセットの各部品、ボルト・ナット・平座金とも、緩み防止機能を有する傾斜段差転写製造技術を確立した。
・普通の高力ボルトが締付けトルクの約67%で緩むのに対し、段差の嚙合せにて 締付けトルクの104%以上(普通の高力ボルト比155%以上)でしか緩まないという緩み防止性能を確立できた。
・締結を維持する軸力は、NAS式振動試験、リラクセーション試験、 塩水噴霧試験においても、普通の高力ボルトと同等以上の締付残存軸力97%以上の 性能を持つことを実証できた。
・上記の性能は、高力六角ボルトサイズM16、M20、M22、M24、M36の全てで試験し実証している。
・事業化のために、建設現場での実用化検証を大末建設(株)等に協力を頂き実施した。狙い通りの性能を発揮していることが実証できた。現在も引続き用途を拡大し試験数を増やしている。
・緩み防止機能を持つ高力六角ボルトセットは、外力の繰り返し変動による緩みを防ぐ設計で、高い安全性を実現しており、建築物や橋梁などの重要構造物に適している。
-建築分野に限らず、機械・重機、洋上風力発電棟、鉄道インフラなど、振動や衝撃の多い環境で緩みの問題が発生しやすい、広範なさまざまな用途に利用可能が見込める。
-通常の高力ボルトと同等の施工性で、特殊な工具は不要であり、現場での取り付け作業が容易で、作業効率向上に貢献。

今後の実用化・事業化の見通し

・仮設建設用途の使用には、JIS認定および国交大臣認定は必要ないので、ヒロセ(株)の実用化検証が確認できると販売が開始できる。本研究開発の成果データや大末建設株やヒロセ(株)の実用化検証のデータを元に使用開始の提案を行う。
・緩み防止機能を持つ高力六角ボルトセットを、近畿経済産業局の助言を得て、日本規格協会「新市場創造型標準制度」に申請予定。
・建築物用途の使用には、法的にJIS認定および国交大臣認定が必要であり、認証取得の申請を検討(2024年後半から申請準備開始)。
・船舶等のエンジン締結用途に、造船業者から緩み防止機能について高い期待をお聞きしている。法的認証の取得計画により、製品の法的信頼性を確保し、市場導入を加速させる。
・製品ラインアップの拡充、高力六角ボルトセットに加え、高力トルシアボルトや普通級六角ボルトにも緩み防止機能を展開。
-多様な用途に対応し、建設、産業機械、インフラ機器分野への事業展開を図る。

実用化・事業化にあたっての課題

・法的認証の取得。建築分野で使用するためには、JIS認定や国土交通大臣認定などの法的認証が必要。
・製品の施工性と管理方法の確立。現場で使いやすい施工性と管理方法のマニュアルを提供する必要がある。
-実地検証を通じて職人の声を反映し、さらにボルト締結の使い勝手を向上させる。
・市場ニーズの把握と啓蒙活動。緩み防止機能の重要性を理解していないユーザーが多いため、機械要素技術展など各種の見本市に出展し、製品のメリットを広く伝えることが重要。また当社のホームページでの製品紹介と特性データを提供していく。
・新規市場への参入障壁。導入事例の積み上げにより、いろいろな用途での参入初期の障壁を打開していく。

事業化に向けた提携や連携の希望

・研究等実施機関のエノモト工業(株)、東洋発條工業(株)、大阪公立大学とは、製品性能の向上や新たな緩み防止機能をもつボルトセットの開発に適宜協力を推進することを約束しており、現在も推進中である。
・アドバイサーの大末建設(株)とは、実用化の観点から現場実証の協力や性能向上の提案を頂けることになっている。

プロジェクトの実施体制

主たる研究等実施機関 月盛工業株式会社 製造部
事業管理機関 一般財団法人大阪科学技術センター 技術振興部
研究等実施機関 エノモト工業株式会社
東洋発條工業株式会社
公立大学法人大阪 大阪公立大学 大学院工学研究科 都市系専攻 橋梁工学分野 教授 山口 隆司
アドバイザー 大末建設株式会社

主たる研究等実施機関 企業情報

企業名 月盛工業株式会社(法人番号:1122001019304)
事業内容 金属ボルト製造業
社員数 28 名
生産拠点 本社
本社所在地 〒581-0051 大阪府八尾市竹渕西5丁目6番地
ホームページ https://tsukimori-kougyo.com/
連絡先窓口 代表取締役社長 塩川 純一
メールアドレス tsukimorikogyo@coda.ocn.ne.jp
電話番号 06-6709-6277