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表面処理

レーザークラッディングによるボイラー管への高耐久・薄膜・低コストな被膜加工法の確立

兵庫県

大阪富士工業株式会社

2025年1月22日更新

プロジェクトの基本情報

プロジェクト名 高耐食、高効率、低コストのボイラー管被膜を実現する飛行中粉末溶融型レーザークラッディング工法の開発
基盤技術分野 表面処理
対象となる産業分野 環境・エネルギー
産業分野でのニーズ対応 高性能化(既存機能の性能向上)、高性能化(耐久性向上)、低コスト化
キーワード 長寿命化、表面改質、LMD、レーザークラッディング
事業化状況 実用化間近
事業実施年度 令和3年度~令和5年度

プロジェクトの詳細

事業概要

発電所等で使⽤されるボイラー管は激しい腐食環境下で使用されるので、通常、表面に溶射被膜を施すが、耐久性が1年~2年しかない。10年間メンテフリーの肉盛り溶接法もあるが、厚膜で熱伝導性が低い、加工費が高額という問題がある。本研究開発では、飛行中粉末溶融型のレーザー技術と、レーザーの幅広化が可能な回折光学素子(DOE)の技術を組み合わせ、高耐久、 薄膜、低加工費で、ボイラー管等に施工できる被膜の加工法を確立する。

開発した技術のポイント

・新規ノズルの設計開発
-目標供給量である50g/minをクリアするために、新規形状のノズルを設計。供給量確認試験により、目標達成を確認。
粉末詰まりを防ぐため、供給口の形状の内面処理の最適化を実施。
粉末供給エリア形状の確認結果を踏まえ、内部形状の変更や供給ガス量の調整により、粉末供給エリアの最適化を実施。
最適化したノズルを用いてレーザークラッディングを行い、粉末が加熱・溶融することを確認。
・回折光学素子(DOE)による、ビームプロファイル形状の制御
-曲面となるボイラー管に対してレーザーを照射した際に均一な温度上昇となるようなパワー分布を算出し、DOEを設計した。
意図しないレーザー出力集中の発生などに対し、DOEパターンの最適化によるビームプロファイル形状の制御を達成。
ボイラー管への成膜試験において、目的の膜厚(0.5mm以下)・膜厚の標準偏差(30%以下)・希釈率(10%以下)を達成。
・物性評価試験
-新規開発手法にて製膜した被膜と従来法にて製膜した被膜について腐食試験および耐エロージョン摩耗試験を実施し、従来法と遜色ない性能を示すことを確認。

具体的な成果

・粉末供給技術の開発
-20×0.5㎜の粉末供給エリアへ、粉末をノズル1本あたり150g/minで安定供給することが出来る粉末供給技術とノズルを開発
・ビームプロファイル制御技術の開発
-DOEでのビームプロファイル制御技術を応用し、曲面への施工に対応かつ幅広の矩形ビーム制御方法の確立。
・開発したレーザークラッディング装置とその試作品の評価
-ボイラー管に対する飛行中粉末溶融型レーザークラッディング工法を確立させ、気孔などの欠陥がなく希釈率10%以下となる被膜の形成を可能とした。試作品は実ラインでの評価を実施するに至った。

知財出願や広報活動等の状況

本研究開発に関する活動は以下の通りである。
1.知財出願 1件
   ・特開2023-183135 コーティング方法及びコーティング装置

2.広報活動等 以下の学会で本研究開発について講演
   ・溶接学会高エネルギービーム加工研究委員会 2024年5月14日 (大阪大学接合科学研究所 荒田記念館)
   ・第101回レーザ加工学会 講演会        2024年12月4日  ( 尼崎リサーチ・インキュベーションセンター)

研究開発成果の利用シーン

・本事業で開発した被膜をプロテクターに被覆し、令和5年度にごみ焼却ボイラーにて実ライン試験を実施。
・製紙会社内のボイラーの実機ボイラー管にも施工を行い、令和5年11月より実機試験中

実用化・事業化の状況

事業化状況の詳細

新たなインコネル625被覆技術を用いた実ライン性能確認試験を行い、従来工法とほぼ同等の耐久性能を示した。令和5年11月より製紙会社のボイラーで実機試験を開始し、令和6年度にはボイラープラントメーカーの施設2ヶ所で実施予定である。評価として、目標の速度を達成しつつ、膜厚のバラツキを抑えた層形成が評価され、事業化の可能性を確認した。今後は、耐久性や燃料多様化への対応が求められ、さらなるスケールアップが課題である。

提携可能な製品・サービス内容

製品製造

製品・サービスのPRポイント

・インコネル625被覆技術で、従来法と同等の耐久性を確認。
・製紙会社とボイラーメーカーの施設で実機試験を実施予定。
・新しいレーザークラッディング技術で、均一な被覆を実現。
・成膜速度や被覆品質の向上を達成。
・腐食や摩耗に対する性能も従来法と同等。
・今後は技術のスケールアップや燃料多様化への対応が課題。 

今後の実用化・事業化の見通し

・ごみ焼却ボイラーでの試験で、従来法と同等の耐久性能を確認し、事業化の可能性を示した。
・製紙会社およびボイラーメーカーでの実機試験を予定しており、今後の展開が期待される。
・新技術で均一な被膜を形成し、性能評価試験でも良好な結果を得ている。
・今後の課題は、スケールアップや燃料多様化への対応であり、さらなる技術開発が必要。
・顧客向けの効果的なアピール資料作成が、事業化促進に重要。

実用化・事業化にあたっての課題

・レーザー照射時に溶融池が垂れ下がる問題の解決が必要。
・粉末供給技術の安定性と精度向上が求められる。
・レーザー照射の均一性を確保するためのDOE設計のさらなる改善。
・成膜の膜厚バラつきや希釈率の制御が課題。
・被膜の耐久性や耐腐食性の長期試験が必要。
・新たな燃料(アンモニアや水素)への対応を視野に入れた材料設計が求められる。
・顧客向けにわかりやすいアピール資料の作成と信頼構築が重要。
・スケールアップに伴う新たな技術的課題の解決が必要。

プロジェクトの実施体制

主たる研究等実施機関 大阪富士工業株式会社 技術センター
事業管理機関 一般財団法人大阪科学技術センター ニューマテリアルセンター
研究等実施機関 国立大学法人大阪大学 接合科学研究所

主たる研究等実施機関 企業情報

企業名 大阪富士工業株式会社(法人番号:7140001047978)
事業内容 高炉メーカーの工程作業、特殊溶接・溶射、機械加工他
社員数 2185 名
生産拠点 支店:関西・尼崎(事業所)・和歌山・鹿島・直江津(事業所)・千葉・水島・知多・播磨 工場:尼崎・和歌山・小見川・泉北・PCS(事業部)・総社
本社所在地 〒660-0811 兵庫県尼崎市常光寺1-9-1
ホームページ https://www.ofic.co.jp/
連絡先窓口 技術センター レーザープラズマ接合研究所 所長 辰巳佳宏
メールアドレス yoshihiro-tatsumi@ofic.co.jp
電話番号 06-6498-0130