文字サイズ
標準
色の変更

研究開発された技術紹介

  1. トップ
  2. 研究開発技術検索
  3. リチウムイオン二次電池の熱暴走を防止する断熱シート

複合・新機能材料

リチウムイオン二次電池の熱暴走を防止する断熱シート

大阪府

日光化成株式会社

2025年1月27日更新

プロジェクトの基本情報

プロジェクト名 独自の熱膨張層による多段階伝熱コントロール技術でリチウムイオン二次電池の安全性を高める革新的伝熱コントロール材料の研究開発
基盤技術分野 複合・新機能材料
対象となる産業分野 航空・宇宙、自動車、電池
産業分野でのニーズ対応 高機能化(新たな機能の付与・追加)
キーワード 電池,熱膨張,断熱
事業化状況 実用化に成功し事業化に向けて取り組み中
事業実施年度 令和2年度~令和4年度

プロジェクトの詳細

事業概要

リチウムイオン二次電池(以下、LIB)は、他の二次電池に比べて、①エネルギー密度が高い、②大きな出力が得られる、③寿命が長い、という特徴があり、電子・電気機器、EVのモーター駆動用、航空機エンジンの始動用等、様々な分野で採用され市場が拡大している。その一方で、熱暴走によるLIBの発火事故は急増している。LIBの発火事故は、搭載されたバッテリーシステムのうち1つの電池セル内部でショートが発生して過大な電流が流れた結果、異常な高温となり、それが隣接セルに熱伝播することによりLIBの熱暴走が起こる。今後、LIBはさらなる小型化、高出力化が進む事により、1つのセルで発生した異常(熱)はこれまで以上に隣接セル間に伝播しやすくなるため、異常セルに隣接するセル間の熱伝播を確実に防ぎ、LIBの安全性を向上させる事は、極めて重要な課題である。LIBの安全性向上のため、本研究開発は複数の熱膨張剤を用いた独自の熱膨張層と断熱板を複合化する事で、LIB正常時の放熱性を確保しつつ、熱暴走時のセル間の熱伝播を遅延させる事が可能な、革新的断熱コントロール材料の実現化を行う。

開発した技術のポイント

伝熱コントロール材料に膨張機能を持たせることで、放熱性と断熱性を両立
・正常時はセル間隙を確保し、放熱性を高める。
・異常時は、発熱したセルの温度で熱膨張層が熱膨張し、断熱性を高める。 
・熱膨張層は数種類の膨張剤を使用し、膨張温度を変えて多段階に膨張させることにより伝熱コントロールを行う。

伝熱コントロール材料(説明図)
伝熱コントロール材料(写真)
具体的な成果

・多段階伝熱コントロール技術の確立と伝熱コントロール性能の向上
-伝熱コントロール性能について、熱源温度400℃、5分後の伝熱コントロール材料の裏面温度220℃以下を達成
-耐熱性・耐圧性能について、熱源温度400℃の時、5分後に形状を保持し、0.8MPaの圧力で潰れないことを確認
-絶縁性について、10^2MΩ以上を達成
-軽量性について、厚さ2.5mm以下、重量2,000g/m2以下を達成
-製品寿命について、加速試験により10年相当の寿命がある事を確認

18650円筒型電池を使用した実証試験(釘刺し類焼試験)では、電池間に伝熱コントロール材料を設置する事で隣接する電池への類焼を防止する事が確認出来た。

釘刺し類焼試験(説明図)
研究開発成果の利用シーン

伝熱コントロール材料は、電動車用のリチウムイオン電池の安全性向上を目的として、車載用電池モジュールの保護材料として使用される。電池間に設置されることで、熱暴走が発生した際に隣接セルへの熱伝播を防ぎ、火災や爆発リスクを低減する。

実用化・事業化の状況

事業化状況の詳細

開発した伝熱コントロール材料は、リチウムイオン二次電池用熱暴走防止材「ニコ膨張シート」として、日光化成株式会社のホームページに掲載等、事業化に向けて展開中である。

提携可能な製品・サービス内容

製品製造

製品・サービスのPRポイント

本製品は、リチウムイオン電池における安全性を大幅に向上させる革新的な伝熱コントロール材料である。電池正常時には薄型でセル間が広いため放熱性が高く、異常発生時には迅速に膨張し、熱伝播を遅延させる機能を備えている。熱膨張時の熱伝導率は0.05W/mKと低熱伝導率であり、加工性も良好である。

今後の実用化・事業化の見通し

展示会への出展や、事業管理機関である滋賀県産業支援プラザなどの公的機関が実施する技術商談会等の機会を活用し、製品の広報及び販売ルートの開拓に取り組む。
現在、電池メーカーにサンプルを出荷し、伝熱コントロール材料の評価を実施中である。

実用化・事業化にあたっての課題

研究を開始当初と比べてリチウムイオン二次電池の高出力化が進んでおり、高耐熱化の検討。
伝熱コントロール材料の設置スペースの問題から、より薄い材料の検討。

プロジェクトの実施体制

主たる研究等実施機関 日光化成株式会社
事業管理機関 公益財団法人滋賀県産業支援プラザ 連携推進部 プロジェクト管理室
研究等実施機関 滋賀県工業技術総合センター
アドバイザー 国立研究開発法人産業技術総合研究所
ATTACCATO合同会社
立命館大学
LIBアドバイザー&コンサルタント

主たる研究等実施機関 企業情報

企業名 日光化成株式会社(法人番号:6120001068523)
事業内容 プラスチック製品製造業
社員数 114 名
生産拠点 大阪工場(大阪府大阪市)、滋賀工場(滋賀県湖南市)
本社所在地 〒531-0077 大阪府大阪市北区大淀北1丁目6番41号
ホームページ https://www.nikkokasei.co.jp/
連絡先窓口 商品開発センター 田邊政樹
メールアドレス m-tanabe@nikkokasei.co.jp
電話番号 0748-77-2870