表面処理
チタンのカジリ対策として開発した複合表面処理
石川県
フジタ技研株式会社
2025年1月27日更新
プロジェクトの基本情報
プロジェクト名 | 衛星用バッテリーに搭載するチタン製軽量電池缶ケースのプレス加工金型に付する表面処理技術の開発 |
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基盤技術分野 | 表面処理 |
対象となる産業分野 | 自動車、産業機械、電池、工作機械 |
産業分野でのニーズ対応 | 高機能化(新たな機能の付与・追加)、高性能化(既存機能の性能向上)、高性能化(耐久性向上)、高効率化(同じ生産量に対するリソースの削減)、高効率化(工程短縮)、高効率化(生産性増加)、環境配慮、低コスト化 |
キーワード | PVD,金型,塑性加工,凝着,難加工材 |
事業化状況 | 実用化に成功し事業化に向けて取り組み中 |
事業実施年度 | 令和3年度~令和5年度 |
プロジェクトの詳細
事業概要
本研究では、チタン材の塑性加工に向けて、油膜切れに強い表面状態の金型を提供することを目的とした。具体的には、ショットブラスト・窒化・被覆処理の表面処理を全て一社で管理・実施し、それら表面処理を適切に連係させ、さらにチタン材に最適化させることである。
次の3点の研究を行った。
・ショットブラスト条件の最適化
・窒化設備の導入および窒化条件の最適化
・潤滑性に優れた硬質膜の開発
開発した技術のポイント
・ショットブラストによるディンプル形成にて、潤滑切れが軽減され、凝着規模が安定した。また、膜の密着性を維持できる粗さには閾値があるとわかった。
・電子ビーム励起プラズマ(EBEP)源を使った窒化装置を開発し、窒素化合物を形成させない窒化処理が可能となった。ショットブラストと窒化処理は互いに干渉せず、各々が硬質膜の密着性や耐久性を向上させる。
・チタン材に対して最も高い滑り性を示す硬質膜はTiCrCで、ショットブラストと窒化を連係させることで、1ショットで凝着していた金型が約50ショットまで使えるようになった。
具体的な成果
ショットブラスト・窒化・TiCrC膜を連係させた金型を使った試打ち試験を行った結果、通常は1ショットで凝着するところ、50ショット加工しても凝着はほとんど進行しなかった。また、製品に付着する摩耗粉も細かすぎて見えなかった。これらの結果から、ショットブラスト、窒化、硬質膜の連係によって潤滑切れが解消され、シビア摩耗からマイルド摩耗へと移行したとわかった。マイルド摩耗の状態で50ショットの絞り加工ができたことは、その後も安定して加工できる見通しである。目標であった、1,000ショットの加工も可能と予想される。
知財出願や広報活動等の状況
新規開発した硬質膜について、特許を出願した。(出願番号:特願2024-42737)
研究開発成果の利用シーン
エンドユーザーはチタン製電池缶ケースの需要を、5年後は年間約5万ヶ、10年後は年間約30万ヶと見込んでいる。エンドユーザーは、本事業終了後に電池缶ケースのシェアの7割獲得を目指しており当社は5年後に年間約4万ヶ、10年後に約21万ヶの量産を目指し、金型販売を進める予定である。
実用化・事業化の状況
事業化状況の詳細
エンドユーザーはチタン製電池缶ケースの深絞り1ラインを10工程と見込んでおり、必要な金型一式は約600万円と予想している。さらに、硬質膜の再被覆処理も行い、金型一式で約120万円と見込まれる。令和6年度~8年度は順送プレスでの量産体制を整えるため、加工油の選定と硬質膜の改良を進める予定である。令和9年度は金型一式と再被覆処理2回程度の販売で約840万円の売上を目指す。令和10年度は年間約4万ヶの電池缶ケースを製造するため、予備金型一式と再被覆処理を追加し計1,680万円の売上を目指す。
提携可能な製品・サービス内容
加工・組立・処理、共同研究・共同開発
製品・サービスのPRポイント
本事業によって開発された表面処理技術は、チタン材に適したショットブラスト、窒化処理、硬質膜を連係させることで、チタン材の凝着を大幅に低減できる。これにより、高品質のチタン製電池缶ケースを安定的かつ大量に生産することが可能となる。この技術は、急速に拡大する宇宙産業において、小型衛星の打ち上げコスト削減に大きく貢献するものである。
今後の実用化・事業化の見通し
宇宙産業の国際市場は2019年には約40兆円の規模となり、2040年には100兆円以上に達すると予測されている。今後の成長幅の大きい分野である。その背景から、エンドユーザーはチタン製電池缶ケースの需要を、5年後は年間約5万ヶ、10年後は年間約30万ヶと見込んでいる。本事業で開発した表面処理技術を用いることで、この需要に応えることができる。さらに、この技術はチタン材のプレス加工に広く応用可能であり、今後、チタン材の利用拡大が見込まれる航空機産業や医療機器産業などにも展開できる可能性がある。エンドユーザーは深絞りライン(1ラインあたり10工程)に必要な金型一式の費用を約600万円、さらに硬化膜の再皮膜処理にも行い、金型一式の費用を120万円と見込んでいる。
実用化・事業化にあたっての課題
エンドユーザーがチタン製電池缶ケースの量産ラインを構築する段階から協力し、試打ち時に不具合があれば対処できるよう、チタン用金型の販売対応係を立ち上げる必要がある。また、チタン用の金型としてその耐久性の高さを当社ホームページやパンフレットに記載し、展示会にも出展して販促を進める必要がある。
プロジェクトの実施体制
主たる研究等実施機関 | フジタ技研株式会社 開発室 |
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事業管理機関 | 公益財団法人石川県産業創出支援機構 成長プロジェクト推進部 イノベーション支援課 |
研究等実施機関 | 公立大学法人富山県立大学 工学部 機械システム工学科 石川県工業試験場 機械金属部 |
アドバイザー | 日本工作油株式会社 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
主たる研究等実施機関 企業情報
企業名 | フジタ技研株式会社(法人番号:4220001012712) |
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事業内容 | 金属製品製造業 |
社員数 | 195 名 |
本社所在地 | 〒923-1101 石川県能美市粟生町西702 |
ホームページ | https://www.fujita-gkn.co.jp/index.html |
連絡先窓口 | 研究開発部 南条 吉保 |
メールアドレス | y-nanjo@fujita-gkn.co.jp |
電話番号 | 0761-58-5358 |
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