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複合・新機能材料

幅広い産業分野での利用が期待される世界最高性能のシンチレータの開発

山梨県

株式会社オキサイド

2025年1月22日更新

プロジェクトの基本情報

プロジェクト名 画像診断装置の高性能化を実現するパイロシリケート型高機能シンチレータの製品開発
基盤技術分野 複合・新機能材料
対象となる産業分野 医療・健康・介護、半導体、光学機器
産業分野でのニーズ対応 高機能化(新たな機能の付与・追加)、高性能化(既存機能の性能向上)、高性能化(耐久性向上)、高性能化(小型化・軽量化)、高性能化(精度向上)
キーワード 単結晶、シンチレータ、放射線計測、ガンマカメラ、医療
事業化状況 事業化に成功し継続的な取引が続いている
事業実施年度 令和2年度~令和4年度

プロジェクトの詳細

事業概要

医療、環境・エネルギー、安全・セキュリティーなどの幅広い産業分野に利用される画像診断装置の高性能化を目的として、パイロシリケート型シンチレータの性能向上と製品化を実現する。脳梗塞や脳血管の動脈硬化の診断に用いるシンチグラフィ断層撮影やガンの粒子線治療に用いる画像診断装置の高性能化を目指す。従来の課題であった内在バックグラウンドノイズ(以下、BGN)と高コストを解決し、発光量・γ線エネルギー分解能・耐候の特性に優れるパイロシリケート型単結晶を開発する。事業概要としては、セラミックス素材で30,000光子/MeV以上の発光量、エネルギー分解能6%以下を達成する組成の適正化を行い、BGNを0.1Hz/cm3以下に抑制した。また、Ce濃度の最適化や育成条件の改善により、実用化サイズのφ2インチ単結晶の大型化に成功し、最終的に製品化に向けた基礎を確立した。

開発した技術のポイント

本研究開発事業によって開発されたGPSシンチレータは、高密度な酸化物単結晶シンチレータであり、NaI(Tl)を超える蛍光出力と、662keV で6%以下の優れたエネルギー分解能を有することから、これらの診断装置に実装した際の大幅な性能向上、あるいは被爆線量の大幅低減が期待される。また、社会実装の観点から、φ2インチの大口径単結晶の育成に成功したことは大きな進歩と言える。加えてGPSはバックグラウンドノイズが無いことや、他に類をみない高温特性に優れることから、医療分野に留まらず、今後の需要拡大が期待される原発の廃炉用途や周辺環境の線量モニタリング、宇宙物理等の高エネルギー研究分野などでの採用が考えられる。

具体的な成果

本事業により得られたGPSシンチレータは、La添加無しのPure-GPSの組成とすることで、課題のBGNが0.03Hz/cm3となり、目標を達成した。また約φ50×30mm(φ2インチサイズ)の大口径な単結晶の育成に成功し、育成した結晶から採取したシンチレータ素子は、適正な温度・時間・雰囲気条件で熱処理を行い、着色を改善することができ、発光量を向上することができた。その結果、発光量:49,000±3.000光子/MeV@25℃、エネルギー分解能:4.61%@25℃が得られ目標を達成した。また発光量の素子ばらつきは±6.2%となり目標を達成した。

知財出願や広報活動等の状況

知財出願は製造ノウハウに直結することから、あえて出願せず秘匿としている。
広報活動としては国内外の展示会に出展し販促活動を推進中。

研究開発成果の利用シーン

今回、大きなサイズで高性能なGPS結晶が開発されたことは極めて大きな成果であり、今後の応用が期待される。まず、SPECT応用では、GPSは発光量が大きく、エネルギー分解能が優れ、バックグランドがないので、イメージング検出器として利用が可能となる。近年、SPECTの役割は、これまでの核医学診断に加えて、放射性核種を患者に投与して治療する、いわゆる核医学治療中の画像化の重要性が増している。核医学治療では高エネルギーガンマ線を画像化する場合が多く、NaI(Tl)に比べ密度の高いGPSは有利である。またGPSはアルファ線に対する発光量が大きいことから、アルファ線イメージング装置としての応用も期待される。アルファ線イメージング装置は、核医学治療で注目されているアルファ線内用療法のための基礎実験において高性能化が切望されており、今回開発されたGPSはこれらの応用にも有望である。

実用化・事業化の状況

事業化状況の詳細

本事業により開発したGPS単結晶は他を凌駕する優れたシンチレータ特性を持ち、φ50mmという実用化サイズの単結晶が得られたことで、今後の画像診断装置の高性能化が期待される。今後は、本事業で得られた約φ50mm大型単結晶育成の再現性確認や更なるコストダウン等を進め、SPECT、ETCC、廃炉、石油探査分野等の放射線検出器として、実用化、製品化を進める計画である。

提携可能な製品・サービス内容

素材・部品製造、共同研究・共同開発

製品・サービスのPRポイント

本研究で開発した高機能GPSシンチレータは、画像診断装置としては、脳梗塞や脳血管の動脈硬化の診断に用いるシンチグラフィ断層撮影(SPECT)やガンの粒子線治療に用いる画像診断装置(ETCC)が挙げられる。発光量・γ線エネルギー分解能・耐候の全ての特性に優れる、GPSシンチレータを採用することで、これら画像診断装置の高性能化が期待される。

今後の実用化・事業化の見通し

本事業により開発したGPS単結晶は、発光量が大きく、エネルギー分解能が優れ、バックグランドがないなど、その優れたシンチレータ特性から、現在、福島原発事故関連の放射能計測装置や、高温特性にも優れることから石油探査用途の検層装置等への具体的な実用化への検討がなされている。当初目指した医療分野のみならず、これらの新たな用途での製品展開を目指し、引き続きコストダウンと量産化技術の確立を進めて行く計画である。

実用化・事業化にあたっての課題

・単結晶育成技術の向上と再現性の確保
・更なるコスト削減および量産化技術の確立
・他分野への応用拡大に向けた技術改良

事業化に向けた提携や連携の希望

本事業により開発したGPSシンチレータは現在、福島原発事故関連の放射能計測装置としての検討が進められている。またGPSシンチレータは、優れた温度特性を有することから、温度環境の厳しい宇宙衛星での放射線計測に適した材料と言える。これの分野では、公的資金を活用したいくつかの開発事業が行われている。これらの開発事業でのGPSシンチレータの採用を目的とした連携を希望する。

プロジェクトの実施体制

主たる研究等実施機関 株式会社オキサイド
事業管理機関 公益財団法人やまなし産業支援機構 中小企業振興部 経営支援課
研究等実施機関 国立大学法人東北大学 未来科学技術共同研究センター 黒澤 俊介
アドバイザー 名古屋大
株式会社島津製作所 基盤技術研究所

参考情報

主たる研究等実施機関 企業情報

企業名 株式会社オキサイド(法人番号:9090001011376)
事業内容 単結晶、光部品、レーザ光源・装置、光計測装置等の光学関連製品の開発、製造、販売。
社員数 312 名
生産拠点 山梨県北杜市、神奈川県横浜市
本社所在地 〒408-0302 山梨県北杜市武川町牧原1747番地1
ホームページ https://www.opt-oxide.com/
連絡先窓口 取締役 石橋 浩之
メールアドレス ishibashi@opt-oxide.com
電話番号 0551-26-0022