精密加工
EV・HVに使用される高精度バスバーの実現
鳥取県
株式会社田中製作所
2025年1月27日更新
プロジェクトの基本情報
プロジェクト名 | 次世代自動車用配電部材(バスバー)等の高性能化に寄与する難加工厚板材の革新的曲げ成形技術の開発 |
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基盤技術分野 | 精密加工 |
対象となる産業分野 | 自動車 |
産業分野でのニーズ対応 | 高性能化(既存機能の性能向上)、高性能化(精度向上)、高効率化(同じ生産量に対するリソースの削減)、高効率化(生産性増加) |
キーワード | 高精度,自動化推進 |
事業化状況 | 事業化に成功 |
事業実施年度 | 令和2年度~令和4年度 |
プロジェクトの詳細
事業概要
本プロジェクトでは、一般的な多結晶金属板材に対し、まず特定の方向に負荷をかけて塑性変形を発生させ、次に反対方向に負荷をかけた際に、最初の変形時よりも小さい弾性限界または降伏応力を示す、いわゆる「バウシンガー効果」を活用してスプリングバックの影響を最小限に抑え、短時間で高精度な曲げ加工を実現する技術を確立することを目指している。その際、曲げ加工に関与するダイやパンチといった金型の先端コーナー部にかかる負荷が増大し、ワークの焼き付きや金型の摩耗・破損が課題となるため、金型構造の最適化や自己潤滑機能を備えた部分強化分割金型の研究開発も併せて進める。
開発した技術のポイント
・バウシンガー効果を活用したプレス加工技術 ‐ 材料の弾塑性特性をFEM解析で評価し、スプリングバックの影響を抑制する最適金型を設計した
・潤滑剤レス金型の開発 ‐ 自己潤滑機能を持つ部分強化金型を作製し、潤滑油の使用量を削減
・一貫生産システムの開発 ‐ ロボットアクチュエータを用いた一貫生産ラインを構築し、タクトタイム3秒以下を達成
具体的な成果
1. バウシンガー効果を活用した難加工厚板材の高精度プレス技術の開発
・FEM解析による金型設計: 純銅材、アルミ材、銅合金の引張試験を行い、弾塑性特性を評価して材料モデルを作成。FEM解析により新工法を開発し、曲げ位置、角度、半径とスプリングバックの関係を把握。
・精度向上の検証: リターンベンド方式で純銅材、アルミ材を用いたプレス曲げ試験を行い、目標精度を達成。疲労強度や電気的特性評価も行い、従来品と同等の性能を確認。
2. 潤滑剤レス金型・新規工法の開発
・金型構造の最適化: リターンベンドに適した金型構造と最適加工条件を決定。
・自己潤滑機能金型の開発: WC-Ni系超硬合金を用いた自己潤滑機能を備えた金型を開発。曲げ強度と摩耗試験により特性を評価し、最適な配合割合と潤滑油の最小使用量を決定。耐久性も目標に達した。
3. ロボット・アクチュエータを活用した一貫生産システムの開発
・自動化システムと量産実証: 成形から検査・梱包までの一貫生産システムを構築し、タクトタイム3秒以下を達成。
知財出願や広報活動等の状況
本研究開発に関連する知的財産権の出願として、以下の特許が出願されている。
・発明の名称: 「曲げ加工装置及び曲げ加工方法」
‐ 出願番号: 特願2022-168924(2023年5月に特許査定) スプリングバックの影響を抑制し、立体形状の金属部品を高精度で成形するための装置と方法を開発
・発明の名称: 「部分強化折曲金型及び金属部品加工装置」
‐ 出願番号: 特願2023-018229 ‐ 自己潤滑機能を持つ部分強化金型を使用し、潤滑油の使用量を低減する加工装置とその方法
広報活動については、成果を機械要素技術展等で発表し、業界内での認知を高めることが予定されている。
研究開発成果の利用シーン
本研究開発で確立された技術は、電気自動車用バスバーの製造工程において広く利用されることが期待される。具体的には、大電流を効率的に伝送するための高精度なバスバーの量産化に貢献し、自動車メーカーに対して高い信頼性を持つ部品供給が可能となる。また、自己潤滑機能を持つ金型による潤滑油レスの成形技術は、環境負荷を低減し、製造コストの削減にも寄与する。この技術は、自動車だけでなく、他の電力分配が必要な産業機器にも応用が可能である。
実用化・事業化の状況
事業化状況の詳細
研究開発の成果をもとに、バスバーの量産化に向けた準備が進められている。新しいプレス加工技術と自動化生産ラインの導入により、タクトタイム3秒以下での大量生産が可能となった。
この成果により、バスバーのコスト削減が実現し、川下企業からの受注拡大が期待されている。特に電気自動車向けのバスバー市場において、高い競争力を持つ製品供給が可能となっている。また、事業化に向けた具体的な計画として、2025年までにバスバー市場における供給率30%を目指している。
提携可能な製品・サービス内容
設計・製作、加工・組立・処理、製品製造、共同研究・共同開発、技術ライセンス
製品・サービスのPRポイント
本研究開発により、バスバー製造における革新的な技術が確立された。バウシンガー効果を活用した高精度な曲げ加工技術により、従来よりも高い精度と信頼性を持つバスバーの提供が可能となった。また、自己潤滑機能を有する金型の採用により、潤滑油使用量を削減し、環境負荷の低減も実現した。さらに、タクトタイム3秒以下を達成した自動化生産ラインの導入により、大量生産体制が整備され、コスト削減と短納期対応が可能となっている。これにより、電気自動車メーカー向けの高品質なバスバーを安定供給できる。
今後の実用化・事業化の見通し
今後の事業展開として、川下企業からの要望として大電圧・大電流を流したいとの要望がある。その際に組立の自動化を行うため、3次元的な穴位置関係になった場合でも高精度な寸法が保たれているバスバーの需要が高まっている。本研究の成果である「バウシンガー効果を利用した曲げ工法」や「部分強化金型及び加工装置」を活用し、他社との差別化を行いプレス生産による安定供給で市場の更なる活性化に繋がる貢献をしていきたい。そのために今回の研究成果及び技術を機械要素技術展等でもアピールし認知を高めていき、販売計画目標の2025年バスバー市場供給率30%を達成していきたい。
実用化・事業化にあたっての課題
・材料コストの問題 ‐ 使用される銅やアルミニウムは価格変動の影響を受けやすく、製品コストの抑制が課題となっている
・高精度な加工技術の維持 ‐ バウシンガー効果を利用した高精度成形技術の安定性を長期にわたって維持するため、金型の耐久性向上が必要である
・自動化ラインのさらなる効率化 ‐ 現行の自動化ラインをさらに効率化し、より多品種小ロットの生産に対応できる体制を整える必要がある
プロジェクトの実施体制
主たる研究等実施機関 | 株式会社田中製作所 技術部 |
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事業管理機関 | 公益財団法人鳥取県産業振興機構 経営支援部 |
研究等実施機関 | 地方独立行政法人鳥取県産業技術センター 機械素材研究所 |
主たる研究等実施機関 企業情報
企業名 | 株式会社田中製作所(法人番号:9270001002010) |
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事業内容 | 金属プレス加工・金型製造・製品組立 |
社員数 | 103 名 |
本社所在地 | 〒689-0216 鳥取県鳥取市気高町宝木1562-132 |
ホームページ | https://www.heart-tanaka.co.jp |
連絡先窓口 | 株式会社田中製作所 技術部 部長 大旗泰之 |
メールアドレス | ohhatayasuyuki@heart-tanaka.co.jp |
電話番号 | 0857-82-3355 |
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