文字サイズ
標準
色の変更

研究開発された技術紹介

  1. トップ
  2. 研究開発技術検索
  3. 世界初の水素ガスによる加圧ガス冷却式真空浸炭炉の開発

表面処理

世界初の水素ガスによる加圧ガス冷却式真空浸炭炉の開発

埼玉県

株式会社日本テクノ

2025年1月24日更新

プロジェクトの基本情報

プロジェクト名 水素ガスを使った加圧ガス冷却式真空浸炭炉の開発
基盤技術分野 表面処理
対象となる産業分野 環境・エネルギー、自動車、産業機械、工作機械、エレクトロニクス
産業分野でのニーズ対応 高機能化(新たな機能の付与・追加)、高性能化(既存機能の性能向上)、高性能化(耐久性向上)、高性能化(信頼性・安全性向上)、高性能化(精度向上)
キーワード ガス冷却,真空浸炭炉,熱処理炉,CO2削減,環境負荷低減
事業化状況 実用化に成功し事業化に向けて取り組み中
事業実施年度 令和3年度~令和5年度

プロジェクトの詳細

事業概要

水素ガスを使用した加圧冷却式真空浸炭炉を開発し、自動車業界の要求に応える低歪み熱処理技術を確立した。水素ガスは高い熱伝達率を持ち、冷却ガスとして非常に優れているため、油冷却に代わり均一冷却による低歪み化を実現。また、従来の油冷式焼入れ技術と比較し、歪みの抑制と仕上げ肌の改善を達成し、洗浄工程が不要になるためインライン化も可能にした。

研究開発計画の概要
開発した技術のポイント

・水素ガス加圧冷却技術の開発
‐均一冷却による低歪み化を実現
‐油冷と同等の焼入れ硬さを達成
・後洗浄工程の不要化による生産性向上
・IoTによる設備監視システムの導入で安全性を確保

具体的な成果
完成した水素ガス加圧冷却式真空浸炭炉

・水素ガスを使った信頼性の高い冷却装置の開発
-水素ガスの安全利用を考慮した設備の仕様を設計した。
-仕様設計に基づいた設備を製作し、安全に動作することを確認した。
・開発した装置における機械的特性の評価
-耐疲労性および耐摩耗性の評価方法としてFaville試験方法を確立した。
-油冷による量産品と同等以上の耐ピッチング性と耐摩耗性、耐疲労性の性能を水素ガス加圧冷却処理品において得られた。
・安全操業の実現に向けたIoTによる設備監視
-開発した装置にIoT通信機器を設置し、安全操業に向けた遠隔監視システムおよび予防保全システムを開発した。

SCM420硬化層の硬さ
Faville試験方法概要
Faville試験結果
SCM420浸炭鋼水素ガス焼入れ材のローラーピッチング
試験結果
知財出願や広報活動等の状況

本事業の広報活動の一環として、当社の顧客に対して本事業のプレゼンテーションを実施した。その中で顧客の製品である歯車の機械的特性を評価する事にした。その結果、小型の歯車は、当顧客の品質規格を満足している事が実証できた。しかし、大型の歯車に関しては、表面硬度が不足していた。本装置の焼入れ可能範囲を見極めることで、現実的な量産条件を見極めることができるようになると推察する。

研究開発成果の利用シーン

自動車部品や機械製品などの熱処理工程において特に有効であり、部品の高強度化や低歪み化が求められる分野に適用される。また、洗浄工程が不要なため、インライン化による生産性向上が期待され、環境負荷の低減にも寄与する。

実用化・事業化の状況

事業化状況の詳細

従来のCO2を発生させるガス浸炭炉は、国内で約6,000台稼動している。脱炭素化に向けてCO2を発生させない真空浸炭炉に入れ替える必要性が出てくる。また、これらの入れ替え時期に合わせて焼入れ油を使わない水素ガス冷却装置は、真空浸炭炉と組み合わせることで環境負荷低減に大きく貢献する。また、熱処理設備のインライン化に向けて従来のガス浸炭炉と油焼入れに代替えされるものと推測される。
事業化に向けて三段階に分けて既存顧客との連携により進めていく。

提携可能な製品・サービス内容

加工・組立・処理、製品製造、共同研究・共同開発、技術ライセンス

製品・サービスのPRポイント

水素ガスを使用した加圧冷却技術は、油冷式に比べ環境負荷を大幅に低減し、洗浄工程を不要にすることで生産工程を効率化する。また、IoT監視システムを搭載し、安全性と省人化を両立した先進的な熱処理技術として、活用が見込まれる

今後の実用化・事業化の見通し

令和6年度~7年度: 大手川下企業との連携により追加研究により開発品を改良する。
令和8年度~9年度: 大手精密部品製造企業や熱処理加工メーカーと連携し、部品の強度化、耐久性の向上に向けて本装置を納入していく。熱処理加工工程のインライン化、更には洗浄工程削減に向けて、当社の重要な顧客と連携し、共同で実証実験を進める。
令和10年度: 大手川下企業が掲げている脱炭素化、環境負荷低減に大きく貢献する本装置の海外展開を図っていく。アジア地区に拡大販売する。また、欧州市場でも本装置の優位性があることから、当社と関係の深い欧州企業との連携で販売計画を展開する。

実用化・事業化にあたっての課題

・窒素ガスを利用したガス冷却装置は、20年以上前から欧州で開発が進んできた。そのため、ガス冷却装置本体に関して優位性を持った特許取得は、かなり厳しい。そのため、冷却ガスとして使用した水素ガスのリサイクルに関して検討を進めていく。
・従来の技術では難しかったステンレス鋼の焼入れ技術の開発などを進め、新しい熱処理技術の開発促進で先行して特許取得を進める。

事業化に向けた提携や連携の希望

本事業の普及に向けたネックは、水素ガスの価格である。現状水素ガスの価格は、約300円/m3と高価である。2030年に水素ガスの価格を約30円/m3程度まで下げる構想はあるものの窒素ガスと比較して未だ高価である。従って、冷却用の水素ガスを捨てるのではなく、冷却ガスとして再度使用する「水素ガス回収装置」に関して検討を進めていき、水素ガスを回収利用することが本装置の普及に向けて必要であると思う。従って、水素ガス回収装置の開発に重要な機器である水素ガス圧縮機の開発製造会社との連携を進めていきたい。

プロジェクトの実施体制

主たる研究等実施機関 株式会社日本テクノ
事業管理機関 公益財団法人さいたま市産業創造財団
研究等実施機関 国立大学法人横浜国立大学

主たる研究等実施機関 企業情報

企業名 株式会社日本テクノ(法人番号:7030001006557)
事業内容 熱処理加工業
社員数 44 名
生産拠点 〒349-0133 埼玉県蓮田市大字閏戸3968番地(本社・本社工場)〒349-0133 蓮田市閏戸2358-1(蓮田工場)、〒957-0231 新潟県新発田市藤塚浜3558-2(新潟工場)
本社所在地 〒349-0133 埼玉県蓮田市大字閏戸3968番地
ホームページ https://nihon-techno.co.jp/
連絡先窓口 製造事業部 生産技術開発部 リーダー 大西 拓也
メールアドレス t.ohnishi@nihon-techno.co.jp
電話番号 0254-20-8850