文字サイズ
標準
色の変更

研究開発された技術紹介

  1. トップ
  2. 研究開発技術検索
  3. 炭素繊維強化プラスチックに対雷性と電磁波シールド性能をめっきで付加する

表面処理

炭素繊維強化プラスチックに対雷性と電磁波シールド性能をめっきで付加する

埼玉県

吉野電化工業株式会社

2025年1月24日更新

プロジェクトの基本情報

プロジェクト名 高耐雷性CFRP製造用めっき法の開発
基盤技術分野 表面処理
対象となる産業分野 医療・健康・介護、航空・宇宙、自動車、ロボット、エレクトロニクス
産業分野でのニーズ対応 高機能化(新たな機能の付与・追加)、高性能化(既存機能の性能向上)、高性能化(小型化・軽量化)、高効率化(同じ生産量に対するリソースの削減)、高効率化(工程短縮)
キーワード 対雷性付与,電磁波シールド,CFRPの歪みモニタリング,銅めっき
事業化状況 実用化に成功し事業化に向けて取り組み中
事業実施年度 令和2年度~令和4年度

プロジェクトの詳細

事業概要

川下産業のニーズである「低コスト、軽量化、多機能化、大面積化」に応えるため、本研究開発では、以下の要素技術を統合することで、プリプレグシートへの連続めっき技術 (RtoR,ロールトゥロール)の確立を目指した。さらに、銅メッシュを上回る耐雷性および電磁波シールド効果を有すること、またプリプレグめっきによる機械的強度の劣化がないことを確認する試験を通じて、プリプレグめっきの有効性の発信を目指した。

開発項目
・Pdナノコロイド触媒の安定化
・無電解めっき膜の薄膜化
・パターンめっき技術の開発
・連続めっき(RtoR)装置の開発
・めっき膜の電気的・機械的特性の評価

開発した技術のポイント
開発した技術のポイント

CFRPプリプレグめっきをRtoRに展開するには、工程の簡略化と、各工程(洗浄工程、Pd触媒付与工程、銅めっき工程)の処理時間を同程度に短縮することが、コスト削減に直結する。この課題に対応するため、RtoRに関連する以下の技術開発を行い、従来の金属メッシュ貼付法と比較して、低コストかつ効率的なCFRPプリプレグめっき技術を実現した。また、量産時におけるスケールアップを見据えた設備投資額を計画通りに抑えることが可能であると試算される、コンパクトなRtoR装置を作製した。

成果
・界面活性剤とアルコールの混合液を用いた効率的な洗浄工程
・Pdナノコロイド触媒の5倍濃縮化による低コスト化 (触媒付与工程)
・低温でも高い析出速度を実現する無電解銅めっき条件の確立 (銅めっき工程)
・CFRPプリプレグ用のRtoRめっき装置の開発 (検討項目の統合)
・ラインパターンめっき技術による機能化 (プリプレグめっきで追加される新機能)
・めっき処理がCFRPの電気・機械的特性に与える影響の評価 (物性評価)

具体的な成果

国立研究開発法人産業技術総合研究所 (AIST)で開発したPdナノコロイド触媒を用いて、CFRPプリプレグ材への無電解Cuめっき処理工程を確立した。このPdナノコロイド触媒液は中性pHを示し、CFRP素材へのダメージを最小限に抑える特長を持つ。さらに、この工程を基に、長尺のプリプレグシートを連続でめっきするためのRtoR (ロール・トゥ・ロール)装置を設計し、実用化に成功した。

RtoRめっき装置を用いて、所望の生産スピードを確保しつつめっき処理を行うため、めっき条件の最適化を行った。具体的には、めっき液の組成バランスや液温を調整することで、高速成膜を可能とする条件を確立した。さらに、マスキング工程を導入することで、CFRPシートに配線を書き込むためのパターンめっき処理が可能となった。

研究開発成果
・安定かつ低コストでのPdナノコロイド触媒の作製を実現
・めっき成膜速度2.4 µm/hを達成
・2 mm幅、ピッチのラインパターンを作製可能
・RtoRめっき装置を用いて作製しためっき付きCFRPプリプレグを使用し、評価サンプルを成形した。その後、以下の試験を実施し、いずれも良好な結果を得た。
・耐雷性試験:損傷を表面第1層目までに抑制
・電磁波シールド試験:30 dB以上の高い電磁波シールド特性を確認
・機械的強度試験:通常のCFRP板と同等の機械的強度を維持 (プリプレグへのめっき処理による劣化なし)
・めっき成膜速度2.4µm/hを達成
・2mm幅,ピッチのラインパターンの作製
・RtoRめっき装置を用いて作製しためっき付きCFRPプリプレグを使用して評価サンプルを成形した。耐雷性試験、電磁波シールド試験、機械的強度試験を実施し、いずれも良好な結果を得られた。
・耐雷性試験時の損傷を表面第1層目までに抑制
・30dB以上の高い電磁波シールド特性を確認
・通常のCFRP板と同等の機械的強度を確認 (プリプレグへのめっきによる強度劣化なし)

具体的な成果
知財出願や広報活動等の状況
知財出願や広報活動等の状況

・解説記事: 「強化プラスチック」66号9巻に「CFRPへのめっき成膜」を掲載 (2020年9月)
・新聞掲載: 埼玉新聞に「落雷被害メッキで解決」として掲載 (2020年12月1日)
・講演: 産総研先進ドローンコンソーシアム (2024/8/1)
・展示会出展: SURTECH2021、SURTECH2022、5G通信技術展2022、彩の国ビジネスアリーナ2023&2024、NANOTECH2024(2024年1月)、第23回つくばサイエンスアカデミー2024テクノロジー・ショーケース (2024年1月)に出展

研究開発成果の利用シーン
研究開発成果の利用シーン

・航空機: 機体の耐雷性向上、電磁波シールド、軽量化
・自動車: 電気自動車等の電磁波シールド、軽量化
・ドローン: 耐雷性向上、電磁波シールド、軽量化
・電子機器: 電磁波シールドケース、放熱部材
・エネルギー産業: 風力発電ブレードの耐雷性向上
特に航空機分野では、従来の金属メッシュ貼付法に代わる新たな耐雷対策技術として期待される。また、自動車やドローン分野では、電動化に伴う電磁波シールドニーズに対応可能な技術として注目されている。

実用化・事業化の状況

事業化状況の詳細

航空機分野での実用化には長期的な取り組みが必要となるため、まずは自動車やドローン分野での早期実用化を目指している。これらの分野で実績を積み重ねながら、段階的に航空機分野への展開を図る計画である。

また、補助事業期間終了後には、川下産業からの新たな要望に対応するため、プリプレグのようなシート状素材だけでなく、炭素繊維などの糸状素材に対してもRtoRめっき装置を用いた連続めっき処理が可能となるよう改良を行った。

さらに、開発技術をドローン分野に適用するため、コンソーシアムへの参加や企業へのヒアリングを実施し、ドローン業界で求められる表面処理技術の調査を行った。その結果、誤作動防止を目的とした電磁波シールド特性や放熱性能向上のための金属膜付与などの需要があることを確認した。

取り組みの概要:
・自動車およびドローン分野をターゲットとした製品開発計画の立案
・潜在的ユーザーとの技術検討会や共同開発の実施
・量産化に向けたRtoRめっき装置の改良および製造プロセスの最適化
・各種性能評価試験の継続的な実施と信頼性の高いデータの蓄積
・コスト競争力強化を目的とした材料およびプロセスの改善

提携可能な製品・サービス内容

素材・部品製造、共同研究・共同開発

製品・サービスのPRポイント

・従来の金属メッシュ貼付法と比較して低コスト
・CFRPの軽量性を損なわない薄膜めっき (0.1〜100μm)
・優れた耐雷性と電磁波シールド性能
・CFRPの機械的特性を維持 (めっき処理による劣化なし)
・3D形状への追従性が高い
・パターンめっきによる多機能化 (損傷モニタリング等)が可能
・既存のCFRP成形プロセスをそのまま利用可能
これらの特長により、高性能かつ低コストなCFRP製品の実現が可能となり、航空機や自動車等の軽量化ニーズに応えることができる。

今後の実用化・事業化の見通し

・短期: 自動車・ドローン分野での実用化
- 電磁波シールド部材、放熱部材等での採用
- 量産プロセスの確立と生産体制の整備
・中期: 航空機以外の産業分野への展開
- 風力発電、電子機器等への応用拡大
- 大型部材への適用技術の確立
・長期: 航空機分野での実用化
- 認証取得と実証試験の実施
- 航空機メーカーとの共同開発推進
自動車・ドローン分野での早期実用化を足がかりに、段階的に適用分野を拡大し、最終的には航空機分野での採用を目指す。

実用化・事業化にあたっての課題

・認証取得期間の長さ
CFRPプリプレグめっきの最終目標は飛行機での使用であるが、それまでには航空機分野の認証を得るための長い期間を必要にする。その間の事業継続が課題となる。

事業化に向けた提携や連携の希望

現在進めている川下産業との共同開発に加えて、事業化に向けては、製品の実用化や市場展開を加速させるために、以下のような提携や連携を希望しております。まず、製造工程の効率化や品質管理の高度化を目指して、材料メーカーや加工技術を有する企業との協業を検討しています。また研究開発の推進を目的として、大学や研究機関との共同研究や技術交流にも積極的に取り組みたいと考えています。このような連携を通じて、より効率的かつ持続可能な事業化を実現したいと考えています。

プロジェクトの実施体制

主たる研究等実施機関 吉野電化工業株式会社 研究開発部
事業管理機関 公益財団法人さいたま市産業創造財団
研究等実施機関 国立研究開発法人産業技術総合研究所 ナノ材料研究部門
メルテックス株式会社 技術研究所先端技術サービス課
豊橋鍍金工業株式会社 技術部
アドバイザー 名古屋大学 大学院医学系研究科
めっき反応全般の技術専門家 電気化学研究者 笹野 順司
神奈川工科大学 創造工学部
東京大学 生産技術研究所 機械・生体系部門
藤倉化成株式会社
トヨタ自動車株式会社 第2材料技術部
地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター
株式会社樫の木製作所 CNT team
株式会社 UCHIDA

参考情報

主たる研究等実施機関 企業情報

企業名 吉野電化工業株式会社(法人番号:1030001064965)
事業内容 金属素材へのめっき (硬質クロムめっき, 下地ニッケル亜鉛合金)、樹脂素材へのめっき (装飾クロムめっき, MID)、熱処理 (浸炭, ガス軟窒化, 高周波焼入れ)、共同・委託開発
社員数 200 名
生産拠点 埼玉県内3工場:金属事業部 (埼玉県越谷市)、化成品事業部 (埼玉県越谷市)、吉川工場 (埼玉県吉川市)
本社所在地 〒343-0813 埼玉県越ヶ谷五丁目1番19号
ホームページ https://www.yoshinodenka.com/index.html
連絡先窓口 研究開発部 樫村賢治
メールアドレス kenji.kashimura@yoshinodenka.com
電話番号 048-993-1130