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複合・新機能材料

燃料不要!ボンベ不要!大気中のCO2を集めてハウス栽培作物に供給するC-SAVE Green®で持続可能な農業に貢献

福岡県

株式会社西部技研

2025年1月22日更新

プロジェクトの基本情報

プロジェクト名 高生産性施設栽培向け新規吸着材によるIoT施用システム搭載大気中CO2濃縮・供給装置の開発
基盤技術分野 複合・新機能材料
対象となる産業分野 農業、産業機械、食品、建築物・構造物、化学品製造
産業分野でのニーズ対応 高機能化(新たな機能の付与・追加)、高性能化(既存機能の性能向上)、高性能化(耐久性向上)、高性能化(信頼性・安全性向上)、高効率化(生産性増加)、環境配慮、低コスト化
キーワード 農業、二酸化炭素吸着、ハウス栽培、DAC、光合成促進機
事業化状況 事業化に成功し継続的な取引が続いている
事業実施年度 令和3年度~令和5年度

プロジェクトの詳細

事業概要

本研究では、農業分野でのCO2施用技術の向上を目指し、大気中のCO2を濃縮・供給する新たな装置「C-SAVE Green®」の開発に取り組んでいる。この装置は、常温で高濃度(800ppm程度)のCO2を作物の葉近傍に局所的に供給できることを目的としており、従来の石油燃焼式技術に代わる環境負荷の少ない解決策として注目されている。装置の中心技術である新規吸着材と、それを担持したハニカムロータを開発し、エネルギー効率の向上と低コスト化を図る。事業の目標には、劣化が少なく長寿命の吸着材と、CO2濃度を高めるハニカムロータの製造技術の確立が含まれている。また、IoTを活用した施設内環境に応じたCO2施用システムを開発し、イチゴ栽培における収量の50%増を目指す実証試験も行う。この研究開発は、農家の要望に応えるべく、運転コストの削減とメンテナンス負荷の軽減を目指し、より持続可能で効率的なCO2施用技術を提供することを目的としている。

いちごとフロー
開発した技術のポイント

・劣化防止技術の検討
-CO2吸着材の劣化を抑えるため、劣化防止剤の探索、吸着材製造方法の見直し、新規材料の開発を行った。
・吸着材の耐久試験と評価
-1,500時間と4,500時間の耐久試験を行い、CO2濃度800ppmを維持する劣化基準値を設定。劣化後の吸着材は加熱拡散反射装置で評価し、分解機構と劣化メカニズムを検討した。
・新製法のハニカムロータの開発
-新製法で製造したハニカムロータが4,500時間の耐久試験でも性能を保持することを確認。また、製造コストの低減と高性能を両立するための最適化を行った。
・復活技術の導入
-劣化した吸着材の性能復活が可能であることを確認し、コスト削減と廃棄量削減を実現した。
・低コストCO2製造システムの開発
-CO2製造コストを100円/kg以下にするためにシミュレーションソフトを開発し、最適条件を設定。その結果から装置設計を行った。
・自動化と省エネの最適化
-CO2施用装置の自動制御を開発し、環境に応じた濃度調整により、ランニングコストの低減と省エネを実現。

吸着剤とハニカムロータ
具体的な成果

【1】新規吸着材、ハニカムロータ担持技術および新規大気中CO2濃縮・供給装置の開発
-イチゴ3シーズン(4,500時間)後においてもCO2濃度800ppmのガスを供給する新規吸着材を担持したハニカムロータ完成。
-CO2製造コスト100円/kg以下を実現する装置の完成。
【2】CO2施用アルゴリズムならびにIoTによる新規CO2施用システム開発
-イチゴ1株あたりのCO2必要量(g/h)の明確化とCO2施用アルゴリズム完成。
-ランニングコスト15円/(a・h)以下を達成するCO2施用装置およびシステム完成。
【3】施設栽培(イチゴ)における収量向上の実証試験
-収量50%増(無施用比)達成

C-SAVE Green
装置仕様
知財出願や広報活動等の状況
2024年5月J AGRI展示会

・特許出願は、①新規吸着材、②装置構成、③CO2施用の全体的システムについての合計3件出願した。
・2023年10月(幕張メッセ)と2024年5月(グランメッセ熊本)で開催されたJ AGRI展で出展した。
・製品紹介ホームページや、導入事例紹介として農家へ取材をして記事をホームページに掲載した。

研究開発成果の利用シーン
施用状況

・高設いちご栽培では、ハウスを閉め切り、全熱交換器を併用することでCO2濃度を高め、収量を最大50%増加させる効果が確認されている。
・トマトやキュウリなどの他作物の栽培でも、CO2供給量を最適化し、作物の成長を促進することが期待される。
・植物工場においては、クリーンな栽培環境の提供やエネルギーコストの削減を支援し、環境負荷の低減に貢献する。
・環境規制が厳しい海外市場では、燃焼式装置に代わる環境に優しいソリューションとして導入が期待されている。
・農業生産の効率化と持続可能性を向上させるための重要なツールとして利用される見込みである。

実用化・事業化の状況

事業化状況の詳細

高設いちご栽培農家を対象に2024年4月から販売を開始し、次にトマトや植物工場など他の施設栽培作物への展開を計画している。これらの市場展開は、実証試験を通じた効果確認と口コミの拡散を戦略とし、信頼性を高めながら進めている。海外市場では、環境規制が厳しいEU諸国や中国をターゲットに、数年間の実証試験を経て本格的な販売を予定している。さらに、展示会やセミナーでの広報活動や政府・自治体の補助金を活用し、初期コストの削減と販売促進を図る。標準化設計による量産効果でコスト削減も目指している。

提携可能な製品・サービス内容

素材・部品製造

製品・サービスのPRポイント

・高効率なCO2施用装置
-C-SAVE Greenは、CO2を効率的に供給し、作物の収量を最大50%増加させる効果を確認済み。
・環境に優しい設計
-燃焼式装置を使わないクリーンなシステムで、脱炭素社会に貢献。
・低コスト運転
-自動制御技術により、電力量とランニングコストを削減、長期間の運転が可能。
・多用途対応
-いちご、トマト、キュウリなど様々な作物に対応し、幅広い農業ニーズに応える。
・省エネ性能
-国内の農家で効果を実証し、海外市場でも導入の準備が進行中。
-全熱交換器の併用で、ハウス内の温度・湿度を低電力で管理しつつ、高CO2濃度の維持が可能。
・補助金利用が可能
-国や地方自治体の補助金を活用できるため、導入コストを抑えられる。

施用イメージ
今後の実用化・事業化の見通し

・国内市場での展開
-高設いちご栽培農家を中心に販売を進め、トマトや植物工場など他作物栽培へと拡大する計画。
・コスト削減と普及促進
-標準化設計と量産効果で装置の初期コストを削減し、普及を促進。
・海外市場への進出
-EU諸国や中国などの環境規制が厳しい地域で数年間の実証試験を実施後、本格的な販売を開始予定。
・補助金の活用
-政府や自治体の補助金を活用し、導入コストを軽減して販売促進を図る。
・広報活動の強化
-展示会やセミナー、SNSでの広報活動を強化し、農業の高生産性と脱炭素を推進する装置としての認知度を向上させる。

実用化・事業化にあたっての課題

・劣化しにくい吸着材の開発
-既存の吸着材は3シーズン(4,500時間)の耐久性を持つが、さらなる耐久性向上が必要。特にメンテナンスが難しい海外市場への展開を見据え、より劣化しにくい新素材の探索が求められる。
・コスト削減
-装置の初期コストが高いため、量産効果によるコスト削減が重要。特に販売開始直後は価格が高く、補助金の活用や標準化設計の推進でコストを下げる必要がある。
・海外市場での実証試験と規制対応
-EU諸国や中国などの規制が厳しい地域での導入には、現地の規制に適合するための製品改良や、長期間にわたる実証試験が必要。
・品質管理とアフターサービスの整備
-海外展開に際して、現地での品質管理体制の確立や迅速なアフターサービスの提供が求められる。

事業化に向けた提携や連携の希望

・政府・自治体
-農業の高生産性や脱炭素を推進するため、各作物への展開において、国や各自治体の農業試験場への導入、試験などでの連携を希望
・JA全農、農機具メーカー、商社
-各農家への販売のため、代理店として連携を希望

プロジェクトの実施体制

主たる研究等実施機関 株式会社西部技研 開発本部 開発課 吉田和行、中村祥一、藤章裕、馬見塚璃奈
事業管理機関 公益財団法人福岡県産業・科学技術振興財団 産業技術イノベーション部研究開発支援グループ
研究等実施機関 福岡県農林業総合試験場 野菜部イチゴチーム チーム長 末吉孝行、技師 大林帆南
国立大学法人九州大学 大学院総合理工学研究員 教授 永長久寛
アドバイザー 稲畑産業株式会社
北菱電興株式会社
株式会社ONE GO

参考情報

主たる研究等実施機関 企業情報

企業名 株式会社西部技研(法人番号:5290001036357)
事業内容 機械
社員数 348 名
生産拠点 本社工場(福岡県)、福岡県内に4つの工場を保有、海外(中国、韓国、アメリカ、スウェーデン、ポーランド)へも展開
本社所在地 〒811-3134 福岡県古賀市青柳3108-3
ホームページ https://seibu-giken.com/
連絡先窓口 開発本部 開発課 プロジェクトマネージャー 吉田和行
メールアドレス sg-info@seibu-giken.co.jp
電話番号 092-942-3511