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材料製造プロセス

水素社会に向けた高リサイクル・高強度・耐水素脆性結晶微細化ステンレス棒材の小規模高効率生産技術の開発

長野県

株式会社小松精機工作所

2025年1月24日更新

プロジェクトの基本情報

プロジェクト名 水素社会に向けた高リサイクル・高強度・耐水素脆性結晶微細化ステンレス棒材の小規模高効率生産技術の開発
基盤技術分野 材料製造プロセス
対象となる産業分野 医療・健康・介護、航空・宇宙、自動車
産業分野でのニーズ対応 高機能化(新たな機能の付与・追加)、高性能化(既存機能の性能向上)、高性能化(耐久性向上)、高性能化(小型化・軽量化)、高効率化(同じ生産量に対するリソースの削減)、高効率化(工程短縮)、高効率化(生産性増加)、環境配慮、低コスト化
キーワード 結晶微細化、耐水素脆性、小規模生産、水素社会、圧延
事業化状況 実用化間近
事業実施年度 令和3年度~令和5年度

プロジェクトの詳細

事業概要

本事業では、水素社会の実現に向け、高リサイクル・高強度・耐水素脆性を備えた結晶微細化ステンレス棒材の小規模高効率生産技術の開発を目的とした。 具体的には、φ3mm以上φ12mm以下の結晶微細化ステンレス鋼の製造が可能な装置の開発、φ3mm以上の材料を用いた部品加工実験、水素雰囲気に長時間置いた材料の再溶解時の影響検証等を行った。

開発した技術のポイント

高強度・耐水素脆性を備えた結晶微細化ステンレス棒材を小規模高効率に生産する技術を開発した。主なポイントは以下のとおりである。
・結晶微細化技術
-加熱と溝ロール圧延を組み合わせ、SUS316L鋼の結晶粒径を制御した。従来材比約3倍の降伏強度を持つ材料を創製した。温間圧延により、
強度と延性のバランスに優れた材料を実現した。
・小型圧延機の導入
-工場2階にも設置可能な小型圧延機を導入し、小規模・低コスト生産ラインを構築した。少量多品種生産や市場国でのライセンス生産など、柔軟な生産体制を実現した。
・品質管理技術の開発
-圧延時の温度・形状データと微細組織状態の相関性を検証し、品質管理技術を開発した。圧延条件をリアルタイムに調整することで、均一な結晶微細化を実現した。

これらの技術により、強度、耐水素脆性、リサイクル性、コストなどの面で優れた材料供給が可能となった。

導入した小型圧延機
具体的な成果

・φ3mm以上φ12.5mmまでの結晶微細化ステンレス鋼棒材の製造を実現した。
-太径向けの圧延機導入により、従来の限界であった直径 φ2.6mm を超える製造が可能となった。
・外径φ6.5mm、内径φ3.0mm、長さ120mmのパイプの製造に成功した。
-開発材料を用いて、水素供給部品として使用可能なパイプを製造した。
・水素脆性試験の結果、開発材は優れた耐水素脆性を示した。

開発したパイプ材
知財出願や広報活動等の状況

令和5年に下記の来客、セミナーや展示等にて本事業の情報提供を行った。事業化に向けて、継続して展示会や学会への参加を積極的に行い、顧客の拡大を進めていく。
2023年6月21~23日 新価値創造展 in 機械要素技術展 2023 (東京ビックサイト)
2023年8月26日 模具科專成果發表會暨國際論壇 台北世界貿易中心南港展覧館
2023年10月4~6日 サステナブル マテリアル展 (幕張メッセ)
2023年10月19~21日 諏訪圏工業メッセ2023 (岡谷市民総合体育館)
2023年11月21日 令和5年度 産業技術連携推進会議 製造プロセス部会
2023年11月23日 フィールドワーク・トライアル逆参勤交代 長野県諏訪市:産業界における担い手創出型逆参勤交代
2024年1月24~26日 第16回オートモーティブ ワールドの「自動車部品&加工EXPO」
2024年2月4日 令和5年度やまなし水素・燃料電池セミナー オンライン
2024年2月16日 日本自動車技術工業会 来社 結晶微細化材料の開発の講演
2024年4月17日~19日 MEDTEC JAPAN(東京ビッグサイト)
2024年10月15日~18日 JAPAN MOBILITY SHOW BIZWEEK (東京ビッグサイト)
2024年10月29日~31日 サステナブルマテリアル展 (幕張メッセ)

研究開発成果の利用シーン

開発した高強度・耐水素脆性を備えた結晶微細化ステンレス棒材は、従来材と比較して強度、耐水素脆性、リサイクル性、コストなどの面で優れていることから、燃料電池車や水素ステーション等における水素供給部品への適用が期待されている。
具体的には、以下のような部品への利用が考えられる。
・水素タンクに使われる部品
-高圧水素を貯蔵する水素タンクに使用される部品は、高い強度と耐水素脆性が求められるため、開発した材料は最適な材料となる。
・配管
-水素ステーションや燃料電池車内における水素の輸送には、高圧に耐えうる配管が必要となる。
- 開発した材料を用いることで、より安全性の高い配管を構築することが可能となる。
・バルブ・継手
-水素の流量を制御するバルブや、配管同士を接続する継手にも、高い強度と耐水素脆性が求めらる。
- 開発した材料は、これらの部品にも適用可能
・燃料電池セパレータ
-燃料電池内部で水素と酸素を分離するセパレータは、耐食性と導電性が求められる。
- ステンレス鋼はこれらの特性を備えているため、開発した材料は燃料電池セパレータとしても有望

さらに、本研究開発で得られた成果は、水素エネルギー分野以外にも応用が可能である。 例えば、高い強度と疲労特性が求められる航空機部品や自動車部品、医療機器などへの適用も期待されている。

実用化・事業化の状況

事業化状況の詳細

事業化状況は以下のとおりである。
・A社との共同研究が進行中であり、2026年の量産開始に向けて協力している。
・鉄鋼関係B社との比較検証により、開発材料の優位性が確認された。
・アメリカと国内での事業展開を並行して進めている。
・チタンの微細化により医療市場への展開可能性が浮上し、信州大学医学部と連携して事業化を目指している。
・自動車系流通商社から、アメリカでの水素ビジネス展開に関する引き合いを受けている。
・人工衛星向け水素供給ポンプ材料としての引き合いがあり、試作提供を進める予定である。
・展示会、セミナー、学会等に積極的に参加し、顧客拡大に向けた活動を継続している。

提携可能な製品・サービス内容

設計・製作、加工・組立・処理、素材・部品製造、試験・分析・評価、共同研究・共同開発

製品・サービスのPRポイント

・高強度化: 従来のSUS316L鋼と比較して約3倍の降伏強度を実現した。
・優れた耐水素脆性: 結晶粒微細化により、水素環境下でも高い強度を維持する。
・高加工性: 加工安定性・バリ抑制・加工面平滑化の効果により、コストダウンが可能である。
・リサイクル性: 金属成分を変更せずに実現できるため、リサイクル性に優れている。
・低コスト化と短納期化: 小規模設備での製造により実現した。
・多品種少量生産への対応: 柔軟な生産体制を構築した。

これらの特徴により、水素社会における様々な部品や、航空機、自動車、医療機器など幅広い分野への応用が期待されている。

今後の実用化・事業化の見通し

・水素エネルギー分野
-水素社会の実現に向けて、燃料電池車や水素ステーション等の普及に伴い、高強度・耐水素脆性を備えた材料の需要が高まると予想され、研究開発を含めた需要による売り上げの発生が見込まれる。
-開発した結晶微細化ステンレス棒材は、これらのニーズに応えられる可能性があり、水素タンクに使用される部品、配管、バルブ、継手等への適用が期待される。
・その他の分野
-高強度・高疲労特性が求められる航空機部品、自動車部品、医療機器等への応用も期待される。
-当該技術はSUSのみならずチタンにも応用できることから、特に、医療機器分野では、チタンの結晶微細化による高強度化と疲労特性向上により、動物実験、製品展開アドバイス、試作提供等、事業化に向けた取り組みが進められている。
・海外展開
-アメリカでは水素ビジネスが成長しており、耐水素脆性材料の具体的な引き合いががきている。
-開発した材料は、価格競争力もあることから、アメリカ市場への進出が有望

実用化・事業化にあたっての課題

実用化・事業化にあたっての課題は3つある。まず最初にコストダウンが挙げられる。従来材と比較して低コスト化を実現しているものの、さらなる製造プロセスの効率化によるコスト削減が求められる。また、量産化技術の確立も重要な課題である。安定供給体制を整えるため、量産体制の構築が不可欠である。そして、更なる高強度化・高延性化が求められる。SCM440等のより高強度な材料への適用に向けて、圧延時に発生する割れの問題を解決し、強度と延性のバランスを最適化する必要がある。最後に、マーケティングの強化が必要である。開発材料の優位性を広くアピールし、顧客獲得のための積極的な活動が重要となる。

事業化に向けた提携や連携の希望

今後は事業化に向けて、製品設計が出来る会社との連携を行い、本材料仕様を図面に反映してもらう。その製品での評価を内部及び外部機関で行い、最終製品に用いられた時の効果を明確にする。このような連携を地域から国内、海外へ広げていきたい。

プロジェクトの実施体制

主たる研究等実施機関 株式会社小松精機工作所 研究開発部
事業管理機関 公益財団法人⾧野県産業振興機構 グリーンイノベーション推進部
研究等実施機関 公立大学法人兵庫県立大学 工学研究科
アドバイザー 株式会社堀場エステック
JFEテクノリサ―チ株式会社

参考情報

主たる研究等実施機関 企業情報

企業名 株式会社小松精機工作所(法人番号:7100001018306)
事業内容 製造業・精密プレス部品一貫製造
社員数 290 名
生産拠点 本社(長野県諏訪市)、 Komatsu Seiki (Thailand) Co., Ltd.(タイ)
本社所在地 〒392-0012 長野県諏訪市大字四賀942-2
ホームページ https://www.komatsuseiki.co.jp/
連絡先窓口 小松隆史
メールアドレス takafumi@komatsuseiki.co.jp
電話番号 0266-52-6100