バイオ
ウイルス感染症の病因となるウイルスにかかわらず、宿主の異常な防御反応を直接調節し、重症化阻止やパンデミック対策に寄与するユニバーサル治療薬を創出する
北海道
株式会社エヌビィー健康研究所
2024年12月16日更新
プロジェクトの基本情報
プロジェクト名 | 新規基盤技術によるウイルス感染症に対するユニバーサル治療薬の開発 |
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基盤技術分野 | バイオ |
対象となる産業分野 | 医療・健康・介護 |
産業分野でのニーズ対応 | 高機能化(新たな機能の付与・追加) |
キーワード | ウイルス感染症、宿主標的分子 |
事業化状況 | 実用化間近 |
事業実施年度 | 令和2年度~令和4年度 |
プロジェクトの詳細
事業概要
ウイルス感染症の重症化において特徴的な宿主生体の過剰応答に着目し、病因となるウイルスに関わらず重症ウイルス感染症に対して有効なユニバーサル治療薬を開発し、治療薬試作品を川下企業に提供する。
開発した技術のポイント
本技術は、ウイルス感染症に対するユニバーサル治療薬の開発を目指している。ユニバーサル治療薬創薬標的探索のためのインフルエンザマウスモデルの重症化関連オミックス情報ライブラリーを構築し、ヒト重症インフルエンザおよびCOVID-19に共通と考えられる7種の新規標的(脂質受容GPCR,ケモカイン受容GPCR,Myometrialパスウェイ,フェロトーシス関連過酸化脂質パスウェイ,脂質受容体パスウェイ,核酸受容体パスウェイ,インテグリン受容体パスウェイ) を見出すことができた。また、MoGRAA(R)製造エンジンを用いて阻害抗体の開発を行い、ヒトへの適用可能性を証明した。これにより、汎用的な治療薬の実現が見込まれている。
また、本技術により構築したオミックス情報ライブラリーからさらなる新規標的を探索する手法としてバイオインフォマティクス技術を掛け合わせる試みを行い、オミックス情報×バイオインフォマティクス×MoGRAA(R)製造エンジンの掛け合わせにより、継続的にウイルス感染症の重症化阻止を目標とした新規抗体医薬を創出する抗体医薬開発プラットフォームに発展させた。
具体的な成果
・研究項目1
-インフルエンザマウスモデルの重症化関連RNAオミックス・プロテオミックス情報ライブライリーを構築した。既存の抗ウイルス薬では治療できない宿主生体応答を明らかにした。公的臨床データを活用し、ヒト重症インフルエンザおよびCOVID-19に共通と考えられる7種の新規標的候補を発見した。
・研究項目2
-4種の標的候補の有用性を重症インフルエンザマウスモデルにて検証した。うち1種は心血管障害、2種は肺炎治療標的として有用であると結論した。
・研究項目3
-標的候補GPCRに対するヒト・サル用阻害抗体をMoGRAA(R)製造エンジンを用いて製造した。
-抗ウイルス薬タミフルによる治療に応答しない患者を想定した重症インフルエンザサルモデルを構築した。標的候補パスウェイ阻害剤のサルモデル薬理試験により、ヒト重症インフルエンザへの適応可能性を証明した。
知財出願や広報活動等の状況
本補助事業で得られた成果である7種の標的のうち、抗ヒトケモカイン受容GPCR抗体および抗ヒト脂質受容GPCR特異的抗体については特許を取得する。
Myometrialパスウェイ阻害剤に関しては、論文発表により研究成果を公表し自社技術を広く発信する。
研究開発成果の利用シーン
本研究開発成果は、インフルエンザやCOVID-19をはじめとする急性ウイルス感染症の重症化を防ぐ治療薬として広く利用されることを目指している。従来の抗ウイルス薬は特定のウイルスにのみ効果を発揮していたが、本技術に基づくユニバーサル治療薬は、重症化による引き起こされる宿主応答に関わる因子を治療標的とすることで、ウイルス種に依存せず、複数のウイルスに対する重症化を抑制することが可能である。この技術で開発された治療薬は、パンデミック時の緊急対応薬としてだけでなく、季節性インフルエンザなどの流行期において予防的投与や早期治療として適応可能であり、既存の抗ウイルス薬との併用による治療効果の向上も期待される。特に、高齢者・基礎疾患を持つなどウイルス感染症による重症化リスクが高い患者に対しては極めて重要な治療ツールとなると期待される。
実用化・事業化の状況
事業化状況の詳細
本技術の事業化に向けた取り組みでは、まず、インフルエンザやCOVID-19に共通する重症化治療標的の探索を通じて、脂質受容GPCRやケモカイン受容GPCRなどの新規標的分子を発見した。これらの標的に対して、開発した阻害抗体や既存低分子阻害剤を用いて動物モデルにより有効性を確認した。
現在、これらの治療標的に対する特許取得を進めており、取得後は製薬企業への技術移転も視野に入れ、ライセンス契約やマイルストン収入による事業化を見込んでいる。
また、既存の抗ウイルス薬との併用による相乗効果を活かし、重症化治療薬の早期市場投入を目指している。今後は、さらなる資金調達を行い、前臨床試験や臨床試験への移行を進める計画である。
提携可能な製品・サービス内容
共同研究・共同開発、技術ライセンス
製品・サービスのPRポイント
本研究成果はCOVID-19のような世界的パンデミックを引き起こした新興ウイルス感染症に対しても応用可能なため、医学的価値と患者貢献の観点からそのニーズは高まっている。さらに、抗ウイルス薬を開発販売する川下企業にとって、本事業成果である宿主を標的とした重症化阻止薬は、既存の抗ウイルス薬との治療効果と販売戦略において相乗的効果をもたらし、売上の向上に寄与することが期待できる。
今後の実用化・事業化の見通し
本事業成果が川下企業に技術移転されたのちには 、当社と川下企業が医薬品開発を協力して進めていくことで、製品化への迅速化と、収益化を実現することができ、相互に有益な関係性を構築することが可能となり、新薬の臨床開発、製造販売といった事業化の実現性は高いと考えられる。
実用化・事業化にあたっての課題
重症化を防ぐための新規ウイルス感染治療薬の開発は、その重要性は認識されているものの抗ウイルス薬と比べ確立された創薬戦略が定まっていないことから、製薬企業にとって重症予防・治療薬開発は比較的挑戦的なテーマである。一方で、当社のような中小企業やバイオベンチャーがリスクを取って独自に研究開発を推進することを大手製薬企業から期待されているが、その費用負担は大きい。
本課題解決のため、本補助事象の成果について、特許化し、国内外の投資家、ベンチャーキャピタルから当社主体に治験薬製造、臨床開発のための資金を調達する必要があり、 事業化成功のためには、研究開発の進捗のみならず、資金調達に対する課題も解決する必要がある。
プロジェクトの実施体制
主たる研究等実施機関 | 株式会社エヌビィー健康研究所 |
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事業管理機関 | 公益財団法人北海道科学技術総合振興センター 研究開発支援部 |
研究等実施機関 | 北海道大学人獣 共通感染症国際共同研究所 滋賀医科大学 病理学講座 |
アドバイザー | 塩野義製薬株式会社 |
主たる研究等実施機関 企業情報
企業名 | 株式会社エヌビィー健康研究所(法人番号:7430001031762) |
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事業内容 | バイオテック創薬企業 |
社員数 | 24 名 |
本社所在地 | 〒001-0021 北海道札幌市北区北21条西12丁目北海道産学官協働センター内 |
ホームページ | https://nbhl.co.jp/ |
連絡先窓口 | 株式会社エヌビィー健康研究所 佐々木昌子 |
メールアドレス | nbhl_suishin@nbhl.co.jp |
電話番号 | 011-708-7156 |
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