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機械制御

小型、高剛性(高応答)且つ連続回転検出可能な磁歪式トルクセンサの開発

長野県

多摩川精機株式会社

2023年2月11日更新

プロジェクトの基本情報

プロジェクト名 アモルファス金属ガラス溶射を用いた磁歪式トルクセンサの開発
基盤技術分野 機械制御
対象となる産業分野 航空・宇宙、自動車、ロボット、産業機械、工作機械
産業分野でのニーズ対応 高機能化(新たな機能の付与・追加)、高性能化(既存機能の性能向上)、高性能化(小型化・軽量化)、高性能化(精度向上)、低コスト化
キーワード 磁歪、トルクセンサ、高剛性、自動運転、モータ制御
事業化状況 研究実施中
事業実施年度 令和2年度~令和3年度

プロジェクトの詳細

事業概要

自動車業界では今後自動運転化が進む中、ステアリングシステムは電動パワーステアリング(EPS)システムからステアバイワイヤ(SBW)システムへ移行する流れがある。一般的にトーションバー式トルクセンサを用いるEPSシステムでは、自動運転化に伴う操舵に対する車両の応答性や路面からの反力伝達等の追従性に課題がある。高応答に追従できる磁歪式トルクセンサを開発し、SBWシステムに用いる事で、システムの操作性、安全性の向上に寄与する。

開発した技術のポイント

1. 専用溶射装置の開発
・磁歪材料 (アモルファス金属ガラス)の成膜手法として専用の溶射装置を開発した。
溶射時の軸温度の安定化(設定温度セ氏±10度以下)、溶射サイクルの短縮(25s以下)、またセンサ特性としてリニアリティ±0.5%F.S.以下、ヒステリシス±0.1%F.S.以下を達成した。

2. 高速変換及び高速通信対応信号処理部の開発
・高速変換及び高速通信対応として、専用ICの設計開発を実施した。
目標応答性10kHz以上、通信速度5Mbps以上となるIC仕様の設計を実施。IC完成品での特性評価の結果、応答周波数10kHz以上、通信速度5Mbps以上を達した。

専用溶射装置
磁歪膜を形成したシャフト
専用ICの外観
具体的な成果

1. 磁歪式トルクセンサに適した磁歪材成膜設備の開発
磁歪式トルクセンサに適した磁歪材成膜設備として、専用溶射装置化の検討を行い、装置の開発および導入を行った。導入装置を評価した結果、以下の装置目標を達成できた。
・温度安定化:設定温度セ氏±10度
・安定化時間:10s以下
・溶射サイクル:サイクル時間25s以下
また、専用溶射装置を用いて、溶射条件を様々に振って磁歪膜の特性を評価した結果、最適条件を見出せた。その結果、センサリニアリティ(直線性精度):±0.5%FS以下、センサヒステリシス:±0.1%FS以下を確認し、開発目標の達成を果たした。
これにより、アモルファス金属ガラスを溶射した磁歪膜を有する軸と検出コイルを組み合わた小型検出部が完成した。

2. 高速変換及び高速通信対応信号処理部の開発
専用ICの設計及び製作を行い、高速変換及び高速通信対応信号処理部を完成させた。これにより、1.で進めた小型検出部と組み合わせる事で機電一体となる磁歪式トルクセンサが完成した。また、完成した磁歪式トルクセンサを用い、トルクセンサ信号をモータ制御にフィードバックさせるトルク制御用のデモ機を作製し効果を確認した。

磁歪式トルクセンサ
知財出願や広報活動等の状況

学会発表:2021.10.8 電気学会東海支部主催若手セミナー「電動モビリティー用磁歪式トルクセンサに適した磁歪膜材料評価」

研究開発成果の利用シーン

・SBWシステム等の次世代の自動運転制御システムにおいて、本研究開発品を用いることにより、小型で高剛性(高応答)なトルク検出ユニットを適用する事が出来、車両の応答性の向上、また、路面状況に対して高応答に反応する事が出来るステアリングシステムの構築が可能となる。従って、SBWのうれしさである、理想の操舵特性の実現(車両応答性、トレース性、安定性や、車両取り回し性、また高速域での走行安定性向上)に大きく貢献し得る。
・また、タイヤ軸にも本トルクセンサを用いる事で、スリップ制御が可能となり、雨天や雪道等の低μ路面においても高い走行安定性を確保出来るようになり、また或いはEVモータやインホイルモータとの組み合わせにおいても、上述に加えて各モータ制御の高次元化に期待が出来る。

実用化・事業化の状況

事業化状況の詳細

車載向け、工作機械向け、ロボット用向けに試作開発を行っている。

提携可能な製品・サービス内容

製品製造

製品・サービスのPRポイント

SBWシステム等の次世代の自動運転制御システムにおいて、本研究開発品を用いることで、小型かつ高剛性(高応答)なトルク検出ユニットの適用が可能。
車両の応答性の向上と、路面状況に対して高応答に反応可能なステアリングシステムの構築が実現できる。したがって、SBWの長所である、理想の操舵特性の実現(車両応答性、トレース性、安定性、車両取り回し性、高速域での走行安定性向上)に大きく貢献し得る。
また、小型化に伴いSBWユニットの設置場所の自由度が増す。その結果、車両本体の居住空間拡大にも貢献でき、SBWシステムのメリットを最大限に活かすシステムの構築が可能となる。さらに、タイヤ軸に本トルクセンサを用いることで、スリップ制御が可能となる。それにより、雨天や雪道等の低μ路面でも高い走行安定性の維持が可能。また、EVモータやインホイルモータの組み合わせにおいても、上述に加えて各モータ制御の高次元化が期待が出来る。

今後の実用化・事業化の見通し

本研究成果のトルクセンサ用いたサーボモータ実験機を作製し、トルクセンサ信号をフィードバックしたモータ制御の有効性PRを実施している。

実用化・事業化にあたっての課題

更なる小型化、低価格化に加え、トルクと角度の複合検出のニーズは高く、機能・性能向上に向けた研究を開始している。

事業化に向けた提携や連携の希望

新たに進めているトルクと角度の複合センサの開発研究への川下製造業者の参画を計画している。

プロジェクトの実施体制

主たる研究等実施機関 多摩川精機株式会社 センサトロニックス研究所
事業管理機関 公益財団法人長野県産業振興機構 伊那センター
研究等実施機関 国立大学法人信州大学 学術研究院(工学系)

主たる研究等実施機関 企業情報

企業名 多摩川精機株式会社(法人番号:6100001022548)
事業内容 電子部品・デバイス・電子回路製造業
社員数 645 名
生産拠点 本社・第1、第2、第3事業所(長野県)、八戸事業所(青森県)等
本社所在地 〒395-8515 長野県飯田市大休1879番地
ホームページ https://www.tamagawa-seiki.co.jp/
連絡先窓口 多摩川精機株式会社 センサトロニックス研究所 石橋和之
メールアドレス kazuyuki-ishibashi@tamagawa-seiki.co.jp
電話番号 0265-56-5433