精密加工
ポーラス超硬の特性である通気性を活かし、生産効率を向上できる半導体モールド用の金型と、前駆体からの厚肉の成形が可能なポリイミド成形用の金型を開発
山形県
株式会社カナック
2022年3月2日更新
プロジェクトの基本情報
プロジェクト名 | ポーラス超硬による機能性金型の開発 |
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基盤技術分野 | 精密加工 |
対象となる産業分野 | 航空・宇宙、自動車、産業機械、半導体 |
産業分野でのニーズ対応 | 高機能化(新たな機能の付与・追加)、高性能化(既存機能の性能向上)、高性能化(小型化・軽量化)、高効率化(同じ生産量に対するリソースの削減)、高効率化(工程短縮)、環境配慮、低コスト化 |
キーワード | ポリイミド厚肉成形、モールド用金型、軽量化、固形ポリアミック酸、ポーラス金属 |
事業化状況 | 研究実施中 |
事業実施年度 | 平成30年度~令和2年度 |
プロジェクトの詳細
事業概要
半導体製造における樹脂封止工程では、通気率を向上させることで揮発成分の影響を軽減して生産効率を向上し得るモールド用金型を、樹脂軸受などに用いられるポリイミドの厚肉成形では、成型時に発生する多量の水分を除去し得る成形金型の2種類を開発する。開発では特に、吸引と水分除去のキーパーツとなるポーラス超硬の高精度加工技術の確立と通気率の制御技術の確立を目指す。
開発した技術のポイント
1.ポーラス超硬の高精度加工技術・通気率制御技術の確立
2.従来機構と比べて通気率が5.9倍以上、Cv比53%の高精度な半導体モールド用金型を開発
3.成形厚さ11.5mm、比重1.42〜0.24のポリイミド成形用金型を開発
具体的な成果
・ポーラス超硬の高精度加工技術・通気率制御技術の確立
-ポーラス超硬を研削および放電加工した際の加工面性状ならびに通気率への影響を明らかにし、金型部材への適用を可能とした。
-「ポーラス金属とその通気率制御方法(特願 2020-84104)」を出願した。
・従来機構と比べて通気率が5.9倍以上、Cv比53%の高精度な半導体モールド用金型を開発
-リリースフィルムの吸引力と金型への密着性において、従来のスリット金型よりも今回開発したポーラス超硬金型に優位性があることを明らかにした。
-パッケージの厚さの変動係数が0.01以内となり半導体製品として問題ないことを明らかにした。
-「樹脂成形金型、樹脂成形装置及びフィルム吸着方法(特願 2021-28755)」を出願した。
・成形厚さ11.5mm、比重1.42〜0.24のポリイミド成形用金型の開発
-真空プレス成形によって厚さ10mm以上の真比重と同等のポリイミド成形体が得られた。また、プレス圧力を調整することで多孔質ポリイミド成形体をも成形した。
-「ポリイミド前駆体粉末(特願 2021-33187)」、「ポリイミド成形体の成形方法(特願 2021-47779)」を出願した。
知財出願や広報活動等の状況
4件の特許を出願
・特願 2020-84104:「ポーラス金属とその通気率制御方法」
・特願 2021-28755:「樹脂成型金型、樹脂成型装置及びフィルム吸着方法」
・特願 2021-33187:「ポリイミド前駆体粉末」
・特願 2021-47779:「ポリイミド成形体の成形方法」 論文 「放電加工によるポーラス超硬合金の除去加工メカニズムの考察」 秋田県立大学 浅沼 丈裕 ,鈴木 庸久, 藤井 達也,野村 光由
山形工業技術センター 大津加 慎教 株式会社カナック 金澤 直一郎
研究開発成果の利用シーン
半導体パッケージ成形工程での清掃頻度の低減、樹脂注入圧力低下による微細配線化品への対応、大型パッケージ製造時の精度向上が期待できる。
航空宇宙・自動車・エネルギー等の分野でニーズのある、高強度・高耐熱性を有するポリイミド樹脂の厚肉形状の成形品が実現できる。
実用化・事業化の状況
事業化状況の詳細
市場製品に特化した形状でのポリイミド成形品適用技術について1年間の補完研究を実施、量産体制を構築し市場での展開速度を加速する。引き続き株式会社カナック、エムテックスマツムラ株式会社および山形県工技術センターと共同で研究を実施する。
提携可能な製品・サービス内容
設計・製作、共同研究・共同開発、技術ライセンス
製品・サービスのPRポイント
半導体モールド金型では、金型清掃頻度の低減による製造の効率化、パッケージ形状の高精度化による高付加価値化、低圧でのモールド成形が可能となり配線へのダメージの低減が可能となる。
ポリイミド成形金型では、ポリアミック酸粉末から厚肉成形が可能となることでポリイミド製品完成までの工程を簡略化できる。また、ポリイミド成形による軽量で高強度・耐熱性・摺動性のニーズに応える製品が実現できる。
今後の実用化・事業化の見通し
航空宇宙分野ではアルミニウムに代わり、より軽量で代替可能な候補としてポリイミド樹脂が着目されている。同様に自動車関連部材でも軽量高強度で耐熱性に優れるポリイミドの活用ニーズがあるが、製造工程の煩雑さと価格が高止まりとなることから採用が見送られてきた。ポリイミド成形品の量産化が可能となれば、エンジン周辺部材、足回り部材やシャシー・車体など適用され得る部品製品への材料候補となる。成形品が安価に供給可能となれば、市場優位性は非常に大きく、新たな市場としての販路を見出せる。
実用化・事業化にあたっての課題
・ポリイミド成形の高度化
・ポリアミック酸粉末の量産化工程の確立
・高圧樹脂成形用途、圧粉成形用途への展開
事業化に向けた提携や連携の希望
ポリアミック酸供給会社の株式会社T&K TOKAとの連携を模索中。ポリアミック酸の粉末化及び販売を委託したいが、新開発技術であり、需要が未知数であるために難色を示されている。
プロジェクトの実施体制
主たる研究等実施機関 | 株式会社カナック 製造部 |
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事業管理機関 | 公益財団法人やまがた産業支援機構 振興部 プロジェクト推進課 |
研究等実施機関 | 公立大学法人秋田県立大学 システム科学技術学部 機械工学科 鈴木庸久 エムテックスマツムラ株式会社 天童事業所 産業機器事業部 河野正博 山形県工業技術センター 置賜試験場 特産技術部 大津加慎教 |
アドバイザー | サクサテクノ株式会社 NTN株式会社 ハイコンポーネンツ青森株式会社 |
参考情報
主たる研究等実施機関 企業情報
企業名 | 株式会社カナック(法人番号:8390001009820) |
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事業内容 | 半導体製造用治工具製造 |
社員数 | 7 名 |
本社所在地 | 〒992-0003 山形県米沢市窪田町窪田2464-6 |
ホームページ | http://www.kanack1.com/ |
連絡先窓口 | 株式会社カナック 製造部 特別推進事業担当 金澤凡子 |
メールアドレス | n.kanezawa@kanack1.com |
電話番号 | 0238-37-6790 |
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