接合・実装
北海道産カラマツを用いた高性能なCLTの効率的な製造技術と接合技術の開発
北海道
協同組合オホーツクウッドピア
2023年2月4日更新
プロジェクトの基本情報
プロジェクト名 | 中高層木造ビルを実現する高性能な大型木質パネルの効率的な製造技術と接合技術の開発 |
---|---|
基盤技術分野 | 接合・実装 |
対象となる産業分野 | 建築物・構造物、林産業 |
産業分野でのニーズ対応 | 高性能化(既存機能の性能向上)、高性能化(耐久性向上)、高性能化(信頼性・安全性向上)、高効率化(同じ生産量に対するリソースの削減)、高効率化(生産性増加)、低コスト化 |
キーワード | 北海道産カラマツ、CLT(直交集成板)、製造技術、接合技術 |
事業化状況 | 事業化に成功し継続的な取引が続いている |
事業実施年度 | 平成30年度~令和2年度 |
プロジェクトの詳細
事業概要
建設業界が求める環境負荷の低減、短工期による人手不足の解消、現場作業環境の改善を可能にするとともに、人工林木材の需要拡大につながる中高層木造ビルの実現に向けて、高強度な北海道産材カラマツと高耐久な接着剤を用いた大型木質パネル「CLT」の効率的で低コストな製造技術を開発するとともに、耐震性に優れた構造体をスピーディに組み立てられる接合技術を開発した。
開発した技術のポイント
①高周波プレスを用いたカラマツCLTの効率的な製造技術
-JASが規定する3層~9層までの層構成のCLTの加熱条件を確立。
-電力量を大幅に抑制でき、異常発熱による不良発生も抑制できる、新たな高周波印加方法を独自に開発。
-高強度で高耐久なカラマツCLTを安定的に量産可能。
②カラマツCLTに適した高耐力な接合技術
-カラマツに適した接合ビスを選定、従来ビスより粘り強く、接合耐力を向上。
-CLT規格金物6種類を対象に検証、従来よりビス本数を3~5割削減可能、取り付け作業時間を大幅に短縮可能。
③新技術による製造・建築コストの検証
-プレス時間短縮と生産量拡大により、従来より製造コストは3割削減可能。
-高強度なCLTと高度な設計法により構造躯体の建築コストを従来より2~3割削減可能。
具体的な成果
①高周波プレスを用いたカラマツCLTの効率的な製造技術
-カラマツに最適な高周波プレス条件を確立し、CLTの使用環境のグレードをJASの最上位(使用環境A)に高められた。
-パネルサイズは幅1m×長さ3.6mから幅1.25m×長さ6.2mへ拡大し、プレス面積を2倍に増やすことができた。
-プレス時間を1/3に削減(60分→20分)し、目標よりも大幅に生産性を向上することができた。
②カラマツCLTに適した高耐力な接合技術
-汎用的な電動工具で打込み可能な径8mmのビスを選定し、従来よりも1本あたりの耐力とねばり強さが4~8割ほど向上した。
-カラマツCLTに最適な新規ビスにより、従来よりも接合金物のビス本数を3~5割ほど減らすことが可能となった。
③新技術による製造・建築コストの検証
-高周波プレスにより、現状の生産方式よりも28%削減することができた。
-中層モデル建築物の試設計を行い、高性能カラマツCLTを用いることで、構造躯体コストを従来より2~3割ほど低減できることを明らかにした。
知財出願や広報活動等の状況
知財出願は行っていない。
広報活動については、道産CLTに関心のある道内外の建設会社や設計事務所の15社に対して情報提供を行っている。
論文発表については以下の発表を行っている。
・宮﨑淳子:「高周波誘電加熱によるカラマツCLTの製造と接着性能」、第69回日本木材学会大会研究発表要旨集、2019.
・冨髙亮介:「大径ビスを用いたカラマツCLT接合部のせん断性能の検討」、第38回日本木材加工技術協会年次大会発表要旨集、2020.
・冨髙亮介:「カラマツCLTの大径ビスを用いた接合の評価」、第71回日本木材学会大会研究発表要旨集、2021.
・冨髙亮介:「北海道産CLTの効率的な製造・利用技術の開発」、北海道建築技術協会会報、第17号、p.16、2021.
・大橋義徳:「道産カラマツCLTの効率的な製造技術と接合技術の開発」、林産試だより、8月号、p.1、2021.
研究開発成果の利用シーン
高性能なカラマツCLTについては、まずは低層の事務所等での部分利用から、中層ビルや中高層ビルの躯体全体での利用へと段階的に部位や数量、建設事例を増やしていくことを想定している。接合技術についても、CLT加工の手間や現場での施工の労力を軽減できることでコスト低減になることもアピールしつつ、CLTとセットで道内、道外へと販路を拡大していくことを想定している。
実用化・事業化の状況
事業化状況の詳細
・製造技術については、事業成果を活用して製造したカラマツCLT(80m3)が令和3年度に札幌市内で竣工した物件に使用された。施工の簡略化と工期短縮に大きく貢献しているとの評価が得られている。
・新規接合技術については、まだサンプル出荷・販売等はできていないが、今後の計画物件において採用を働きかけている。設計者からはカラマツでも粘り強い接合性能を有し、ビス本数も大幅に削減できる新規接合技術に対する期待と評価は高い。
提携可能な製品・サービス内容
製品製造
製品・サービスのPRポイント
①高周波プレスを用いたカラマツCLTの効率的な製造技術
-電力量を大幅に抑制でき、異常発熱による不良発生も抑制できる、新たな高周波印加方法を独自に開発。
-高強度で高耐久なカラマツCLTを安定的に量産可能。
-プレス時間短縮と生産量拡大により、従来より製造コストは3割削減可能。
②カラマツCLTに適した高耐力な接合技術
-カラマツに適した接合ビスにより、従来ビスよりも接合耐力を1.5倍に向上。
-CLT用規格金物では、従来よりビス本数を3~5割削減可能、取り付け作業時間を大幅に短縮可能。
-高強度なCLTと高度な設計法により構造躯体の建築コストを従来より2~3割削減可能。
今後の実用化・事業化の見通し
・CLT製造技術については、本事業で得られた成果を踏まえて高周波プレスによる道産CLTの量産体制が整っており、事業化計画の達成の見込みが高い。
・CLT接合技術については、本事業で得られた接合部データシートを活用して、建設計画のスタート段階から設計者に対してメリットや優位性を説明するように心がけ、事業化計画の達成を目指す。
実用化・事業化にあたっての課題
事業化展開を図る上では、2019年3月に施行された建築基準法関連告示により、Mx90やMx120という高い強度等級にも基準強度が追加されたことも追い風となる。従前は、カラマツCLTでも構造設計上はスギ相当の強度で設計せざるを得なかったが、カラマツCLTを本来の強度で設計できるようになった。さらに本事業の成果で最上位グレードのMx120のカラマツCLTを量産でき、高耐力接合金物も開発できたことで、カラマツCLTの優位性を発揮できるようになっている。今後は、実物件が増えていく中で、CLTの材積や接合部の無駄を省いた、構造躯体コストを抑えた設計技術の確立が重要となる。
プロジェクトの実施体制
主たる研究等実施機関 | 協同組合オホーツクウッドピア |
---|---|
事業管理機関 | 地方独立行政法人北海道立総合研究機構 森林研究本部 林産試験場 |
研究等実施機関 | 北海道プレカットセンター株式会社 地方独立行政法人北海道立総合研究機構 森林研究本部 林産試験場 |
アドバイザー | 竹中工務店 北海学園大学工学部建築学科 一般社団法人北海道建築技術協会 |
主たる研究等実施機関 企業情報
企業名 | 協同組合オホーツクウッドピア(法人番号:9460305000005) |
---|---|
事業内容 | 木材・木製品製造業 |
社員数 | 30 名 |
生産拠点 | 北海道北見市留辺蘂町旭東11番地 |
本社所在地 | 〒091-0022 北海道北見市留辺蘂町旭東11番地 |
ホームページ | http://www.rubeshibe-rinsan.com/pages/15_okhotsk/index.htm |
連絡先窓口 | 北堀篤 |
メールアドレス | kitahori@okhotsk-woodpia.jp |
電話番号 | 0157-67-2323 |
研究開発された技術を探す