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接合・実装

木造建築物の倒壊の原因は、「柱脚部分が脆弱である」「木柱が腐朽しやすい」、の2点である。この問題を解決する建築構造を開発する。

奈良県

株式会社瀧川寺社建築

2023年2月13日更新

プロジェクトの基本情報

プロジェクト名 寺社等を含む木造建築において伝統的外観を維持しつつ、耐震性・耐久性を飛躍的に向上させる柱と地面の結合方法の開発
基盤技術分野 接合・実装
対象となる産業分野 建築物・構造物
産業分野でのニーズ対応 高性能化(既存機能の性能向上)、高性能化(耐久性向上)、高性能化(信頼性・安全性向上)、高性能化(精度向上)、高効率化(同じ生産量に対するリソースの削減)、高効率化(工程短縮)、高効率化(人件費削減)、高効率化(使用機器削減)、環境配慮、デザイン性・意匠性の向上
キーワード 掘立柱工法、木造建築物、木材強度、耐震性、耐久性
事業化状況 事業化に成功
事業実施年度 令和1年度~令和3年度

プロジェクトの詳細

事業概要

本研究開発は、寺社等の木造建築における柱の根元部分の耐食性と強度を高める新しい接合方法を確立する。具体的には現状直接埋め込んでいる柱脚を密閉鋼管に挿入した上で埋設し、同時に耐久性、高強度に対する処置を行う事で、現状20年ほどで交換が必要な掘立柱の根元を長寿命化し、かつ建物にごくまれな極大地震にも耐えうる耐震性を確保する。また本工法は、大規模公共建築物への適用やイベント会場での活用にも展開できる。

開発した技術のポイント

伝統的工法である掘立柱工法について、その問題点である耐震性と耐久性を大きく改善し、加えて木柱の埋め込み長さの短縮を図る接続方法の諸課題を解決するための研究を行った。その成果として、柱脚接合金物における各種の詳細仕様の決定、樹種・円柱直径に対する水平せん断耐力性能の予測式の確立とその妥当性の確認、長期的な耐久性維持にともなう性能保証の確認、等の結果を得るに至った。
これまでの研究成果により、限界耐力計算法による手段をとれば、建築基準法に則り、本工法を実建築において有効な耐震要素として事業化に繋がることとなる。

柱脚接合部曲げ試験状況
具体的な成果

・耐震性の向上
-各種の実大構造試験、要素試験を経て長期性能を考慮しつつ詳細仕様を決定し、従来よりも小さい、円柱径と同程度の埋め込み深さでありつつも、高品質丸太の強度性能を最大限活かした耐力性能※を持ち、かつ1/15radを上回る大変形性を持つ掘立柱脚接合部を開発した。評価式により、耐力推定が可能であり、また既存住宅の耐震補強要素として有効である事を確認した。
※円柱材の強度をやや下回る強度で向上
・耐久性の向上
-耐久性試験により本工法に適した防腐効果が長持ちする薬剤の種類とその塗布量を決定し、暴露試験により柱脚接合部の防水性の評価を行い、施工法を検証した。

知財出願や広報活動等の状況

1.木柱の掘立構造
国内特許 第6585316号
国際出願 PTC/JP2019/007623
韓国特許 第10-2293464号
中国特許 ZL 2019 8 0001134.6
国内意匠 第1647900号、第1644388号
韓国意匠 第30-1048179号、第30-1048180号
中国意匠 ZL 2019 3 0483206.8
2.木柱連結構造及び木柱設置構造
国内特許 第6810984号
国際出願 PTC/JP2020/021512
韓国特許 第10-2403893号
中国特許 ZL 2020 8 0001691.0
国内意匠 第1681258号、第1679986号
韓国意匠 第30-1134084号、第30-1122597号
中国意匠 ZL 2020 3 0561827.6、ZL 2020 3 0562362.6
3.木柱設置構造
国内特許 第6929584号
国際出願 PTC/JP2021/004760
韓国特許 (出願/10-2021-7023490)
中国特許 (出願/202180001990.9)
国内意匠 第1695325号
韓国意匠 第30-1163333号
中国意匠 (出願/202130483032.2)
4.木柱設置構造及び木柱設置方法
国内特許 (出願/特願2021-125893) 

研究開発成果の利用シーン

伝統的外見を残した寺社建築物や建築基準法適用外の全国の木造鳥居および寺院の山門への適用が見込める。その他にも、文化財などの再建や修理、イベント時の木造建築物や図書館、老人ホームなどの大広間、駐輪場などへの公共建築物への適用も可能性がある。

イベント会場の仮設建築物

実用化・事業化の状況

事業化状況の詳細

本開発の成果を用いて、伝統的外観を維持しつつ現在の建築基準法に適合させた諸堂等の寺社建築物の施工および建築基準法適用外の全国の木造鳥居及び寺院の山門において、震度7程度の地震に耐えるものの施工の事業化を目指す。
また文化財等の再建や修理などの市場や全国の神社の木造鳥居及び寺院の山門、各諸堂等の柱などの需要の取り込みが見込める。また将来的には中国や東南アジアなどの仏教国への販売の可能性もある。

提携可能な製品・サービス内容

設計・製作、加工・組立・処理、共同研究・共同開発、技術ライセンス、技術コンサルティング

製品・サービスのPRポイント

・遺構の出土が多い地域での建設物の施工が容易になる
本工法では、基礎構造物天端より1m以内に遺構が無ければ建設可能である。
・森林資源の保護
本工法は、埋め込み部の長さが従来工法に比べ短く、かつ長寿命であるため、世界的に希少な巨木使用量が削減できる。
・文化財遺跡における再建や修理などの需要
地下埋設物が多い地域における建物の復元事業では、比較的浅い掘削で柱が施工できる
・全国の神社の木造鳥居及び寺院の山門、各諸堂等の柱の需要
木造鳥居や山門等の長寿命化ニーズに対応できる
・イベント等の木造仮設建築物の建設需要
本工法では、イベント会場における仮設建築物の建造が比較的安価で実現できる。
・耐力壁を必要としない大規模木造建造物の建設需要
本掘立柱工法は現在の他の工法と比較して耐震性能に優れ開放的空間を簡便な手法で実現できる。
・公共建造物の建設需要
国が取り組んでいる「公共建築物における木材の利用の促進に関する基本方針」(平成22年10月4日農林水産省、国土交通省告示第3号)に沿った木造建築物の建設促進に貢献できる。

平城宮跡廻廊復元予想図
今後の実用化・事業化の見通し

事業化に向けては、「全国の神社の木造鳥居及び寺院の山門、諸堂への事業化」「文化財遺跡等への事業化」「耐力壁を必要としない大規模木造建築物、木造仮設建造物やイベント等の仮設会場での建設事業化」の三つの方向への工法採用に向け、各所(奈良県内及び全国の各寺院、神社や全国の文化財建造物の設計、監理等を行う財団法人文化財建造物保存技術協会等)への模型及び研究成果資料等を用いた営業活動を計画通り進めている。なお、社寺等営業活動の実施先からは概ね評価を頂いている。建築基準法適用範囲外の10㎡以内の木造建築や工作物への引き合いがあり、成果も具体的となっている。

円柱採用時柱脚金物模型
角柱採用時柱脚金物模型
実用化・事業化にあたっての課題

接合部の性能認証を取得し行政手続きの簡略化が求められる。円柱類JASを取得した認定工場がなく、許容応力度計算による構造計算ルートに載せることは難しく、限界耐力計算による構造計算を行うのが現実的になるが、本手法の設計は煩雑であり費用も高額となるため、導入障害となりうる。

事業化に向けた提携や連携の希望

引き続き、大学及び森林技術センター等とともに補完研究の実施を行いたい。

プロジェクトの実施体制

主たる研究等実施機関 株式会社瀧川寺社建築 代表取締役 瀧川 悟
事業管理機関 公益財団法人奈良県地域産業振興センター 事業化推進課:課長 杉山 淳一、事業化推進コーディネーター 大野 二郎・坂倉 眞、新事業創出支援係 木村 智子
研究等実施機関 株式会社瀧川寺社建築 代表取締役 瀧川 悟
学校法人大阪産業大学 工学部都市創造工学科 准教授 北守 顕久
奈良県森林技術センター 木材利用課 課長 岩本 頼子、総括研究員 柳川 靖夫 
一般財団法人 日本建築総合試験所 試験研究センター 構造部 構造試験室 上席専門役 今西 達也
国立大学法人京都大学 生存圏開発創生研究係 木質構造科学分野 准教授 中川 貴文
アドバイザー 有限会社安芸構造計画事務所
Y’s建築工房
奈良県銘木協同組合

主たる研究等実施機関 企業情報

企業名 株式会社瀧川寺社建築(法人番号:1150001009405)
事業内容 建設業
社員数 18 名
生産拠点 奈良県桜井市橋本工場
本社所在地 〒633-0047 奈良県桜井市橋本463番地
ホームページ http://takigawa-jisha.sakura.ne.jp/
連絡先窓口 株式会社瀧川寺社建築 代表取締役 瀧川 悟
メールアドレス takigawajisya@tiara.ocn.co.jp
電話番号 0744-43-1383