研究開発された技術紹介

メカニカルシールは回転機械の軸封装置の1つであり、過酷な用途では、摺動面に表面コーティングや表面テクスチャリングなどが施されている。しかし、高性能化された表面が剥がれると大幅に特性が低下するため、部材自体の高性能化がユーザーサイドから強く望まれている。これまでに炭化ホウ素-炭化ケイ素複合材料は長期使用しても潤滑性が維持されることを見出し、本材料のメカニカルシール用部材への実用化へ向け開発を行う。

・B4C-SiC複合材をメカニカルシール部材に適用したことで、高硬度、高摺動特性が付与された。
・高温下においても無冷却運転実現の可能性が考えられ、省資源、省エネ寄与が期待できる。

・材料開発
-抗折強度611MPa、ビッカース硬度2700Hvの開発材を得て目標達成
-開発材の摺動特性は無潤滑下摩擦係数0.29、無潤滑下比摩耗量4.5×10-6mm3/N-m、水潤滑下摩擦係数0.15で目標を達成
・実形状化
-ニアネットシェイプ成形技術を検討し実形状化を達成
・実機評価
-温度140℃、圧力0.6MPa、周速6m/s、無冷却下で100h連続運転を達成
-シール部からの漏れは認められず良好なシール性を示した
-従来材料と比較して摩耗量が60%低減

・特許出願　　名称：複合セラミックス部材及びその製造方法　　出願番号：特願2018-046128
・特許出願　　名称：摺動部材及びその製造方法　　出願番号：特願2018-156875
・公益社団法人日本セラミックス協会　第31回（2018年）秋季シンポジウム（名古屋）にて発表

過酷な環境下でかつメンテナンスフリーが要求されるポンプ軸等のシール要素など。
①高温無冷却での使用
②スラリー環境下の高周速・高圧力領域での使用

耐久性を実証し、事業化する予定。

従来材料と開発材を比較評価した結果、従来材料に比べ摩耗痕の表面状態と摩耗量(従来材料と比較し60%減)で優位な結果がでている。また、従来材料は運転中の漏れの痕跡があったのに対し、開発材は漏れがなく、無冷却で使用できる可能性が示唆されている。
冷却装置が不要となることから、省エネ・省資源化につながる。

社内における実機評価にて耐久性を実証し、サンプル提供の実績があるメーカーA社への令和3年度の採用を目指す予定である。A社での採用・実績後に他社(国内主要メーカー:5社)への展開を図る計画である。

長時間での耐久性の実証