バイオ
工場排水をバイオマス資源ととらえた創・省エネルギー型排水処理装置の高機能化
愛媛県
株式会社愛研化工機
2023年2月13日更新
プロジェクトの基本情報
プロジェクト名 | 海外展開を見据えた世界初の高濃度排水処理(EGSB法)用グラニュール量産システムの開発 |
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基盤技術分野 | バイオ |
対象となる産業分野 | 食品 |
産業分野でのニーズ対応 | 高機能化(新たな機能の付与・追加)、高性能化(信頼性・安全性向上)、高効率化(人件費削減)、高効率化(生産性増加)、環境配慮、低コスト化 |
キーワード | 良質なグラニュールの評価、グラニュールの培養技術、グラニュールの貯蔵技術、グラニュールの診断、グラニュールの安定供給 |
事業化状況 | 実用化間近 |
事業実施年度 | 令和1年度~令和3年度 |
プロジェクトの詳細
事業概要
高負荷・高効率型排水処理法であるEGSB法等の普及に向けて最大の課題であるグラニュールの大量培養・貯蔵技術の開発を実施。同処理法の運転管理実績をもとに生成率の高い標準型グラニュールの菌相を次世代シーケンサーにより決定の上、それを品質基準や生成最適化指標として利用し、大量培養技術を開発。更に長期保存による減量を最小化する貯蔵法を開発し、国内外での需要変動に対応可能な供給体制を確立。
開発した技術のポイント
MBR装置を使用することで培養槽上部から流出する微細なグラニュールを保持することができる。一方、MBR装置を使用するには膜表面を常に洗浄しなければならない。従来型のMBRシステムでは空気を用いて膜表面の洗浄を行うが、本システムは嫌気処理であるため空気を用いた洗浄はできないため、培養槽から発生するバイオガスを膜洗浄に利用するシステムを構築した。培養装置の稼働後、膜洗浄の為のガス量が培養槽から発生するバイオガスだけでは賄えない課題が発生し、追加分は既設の排水処理装置に利用しているバイオガスを使用しなければならなくなった。実証場所であるメグミフーズでは、回収したバイオガスで発電を行うなど、既設から発生するバイオガスを使用することは困難なものであるため、その対策として培養装置の改造を検討し、2020年度末に改造を実施した。
具体的な成果
■高濃度有機性排水に適した標準グラニュールの定義付け、および培養・貯蔵グラニュールの評価
・ 11工場のグラニュールの解析により、EGSB法で特徴づける微生物として優占種20種を同定
・ グラニュール微生物群集と有機物分解性能の強い関係性を見出し、培養条件のデータを取得
・ 半年間の貯蔵グラニュールにおいての微生物データを取得
■標準グラニュールの培養装置の設計・実装および培養条件の検討
・ グラニュール培養装置の実装、運転条件を変更しながらデータを取得
・ 本事業におけるグラニュール生成率が最大8%
・ 負荷量と生成率の関係性のデータを取得
■標準グラニュールの貯蔵制御技術の開発
・ 酢酸添加有無、温度条件4、10、20℃でのラボ試験を半年間実施し、自己消化率ゼロ達成
・ 大型貯蔵試験においては酢酸添加のみで半年間の自己消化率ゼロを達成
・ 自己消化率をゼロにするデータを取得
知財出願や広報活動等の状況
(国研)産業技術総合研究所との共同論文を予定(論文名等未定)
研究開発成果の利用シーン
《標準型グラニュール製品およびEGSB排水処理装置》 培養・貯蔵一体型システムのグラニュール量産装置で生成されたグラニュールを製品を販売。国内では新規プラントの立ち上げ時、及び既存施設でシステム不良に陥っているプラントの再セットアップでニーズが見込まれ、量産化したグラニュールはEGSB法だけではなく、嫌気性グラニュールを利用したUASB(上向流嫌気性汚泥床法)、IC(内部循環法)などの排水処理法へも汎用化が可能である。
《グラニュール診断サービス》
グラニュール診断内容としては、汚泥濃度、汚泥負荷、活性度、浮上ポテンシャル、粒径分布、有機酸分解、沈降速度、栄養微量金属などを分析し、安定運転の継続をサポートしていく。
実用化・事業化の状況
事業化状況の詳細
自社独自にて、国内外の顧客ニーズ及び市場規模の調査を実施。また、NEDO事業において、EGSB処理の普及先として有望な国内の染色繊維産業の環境について分析を行い、今治市内の染色工場の複数社との協議を実施。JICA事業および環境省事業にて、インドネシアにおけるEGSB処理の普及調査を実施し、染色繊維工場および食品工場複数社からの引合を受けている。
提携可能な製品・サービス内容
設計・製作、製品製造、試験・分析・評価、共同研究・共同開発、技術コンサルティング
製品・サービスのPRポイント
最も大きいと想定される国内顧客のニーズは、コスト削減である。海外からの補充グラニュール購入費、システム停止事故に伴う損失補填など、これまでの支出を軽減したいというニーズへの対応が可能となる。また、海外で新規導入する場合は、グラニュールを現地生産できるためコストダウンにつながり、他国企業の輸入グラニュールと比べた価格優位性が得られるだけでなく、常時のグラニュール補填体制が確保できるため、今後の新規事業展開に大きなメリットが生じる。その他、グラニュールに対するノウハウの向上により、既存嫌気処理施設の性能向上にもつながる。
今後の実用化・事業化の見通し
①本事業を通し、EGSB処理装置・標準型グラニュール製品・グラニュール診断サービス、でのビジネス展開を計画しており、三つの製品の事業化に向けた計画及びスケジュールは、順調に進んでいる。主な計画としては、2022年より事業化評価を実施しており、今後、具体的な経済性効果を検証することで事業化に向けた最終判断を行う予定である。 ②培養したグラニュールを用いたEGSB装置の性能検証を進めており、併設する実排水処理装置に導入することで、処理性能を検証している。培養グラニュール量は微量であるが、今後も、実機EGSB排水処理装置での性能状況を検証を行った上で、実用化に向け他の装置や新たな販売先への導入を検討する予定である。 ③グラニュール培養量に対し、培養装置建設のための材料費の高騰が懸念されている。この点は、設備仕様の検証でコストダウンを進める対策を行っている。
実用化・事業化にあたっての課題
①今後の取り組み内容は、ビジネスモデルの検証を進める予定で、サンプル製品の評価と設備の経済性を検証深化する。ともに、22年度までに得られた検証をもとに、事業化に向けた具体的な戦略を立案する予定である。また、研究開発および実用化体制は、既に計画が進んでいる。これまでEGSB装置でのEPC業務の販売体制が構築されており、既存体制も活用しながら、協力深化を進めている。 ②ニーズ調査では、国内と海外ともにターゲットを掲げ、JETRO等の行政事業も活用し、具体化をはかっている。ともに、データ収集は終えており、本事業に関する成果が、ニーズに合致していることを確認済みである。 ③事業化に向けた資金計画では、事業化評価の結果に応じて、追加研究の有無を判断する予定である。現状、追加研究の必要が生じた場合でも、自己資金をもとに検証を進める計画である。 ④販路開拓では、行政事業の採択を受けており、主な販売先である海外、特にインドネシアをターゲットとした取組みを進めている。新たに、JICAと環境省の事業に採択を受けたことで、現地調査とEGSB装置の実証を計画しており、並行して培養グラニュールの販売を調査していく予定である。
事業化に向けた提携や連携の希望
国内においては、自社単独での販売および、販売協力先(東京、札幌、仙台、名古屋、大阪、広島、福岡の各地に有す)と協働した、具体的ユーザーへの製品展開を想定している。また、海外においては、東南アジアを中心に、現地の技術販売協力先と協働の上、現地市場への製品展開を想定している。収益方法については、自社単独販売を除き、販売協力先へのライセンス販売を中心とし、コア製品の販売とSV派遣による報酬および、ライセンス報酬による収益を想定している。弊社は、当事業化モデルにおいて、既に国内および海外で実績を有しており、主に地域別に販売体制を分ける形で対応している。瀬戸内海を中心とする中四国地域については自社単独での販売体制をとり、国内他地域および海外向けには販売協力先へのライセンス販売を実施している。
プロジェクトの実施体制
主たる研究等実施機関 | 株式会社愛研化工機 |
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事業管理機関 | 一般財団法人四国産業・技術振興センター 産業振興部 |
アドバイザー | 愛知県産業技術研究所 主任研究員 中村 仁 三菱ケミカル株式会社 鶴見研究所アクア研究室 水処理技術グループGM 川岸 明樹 阿波製紙株式会社 中川 浩一 株式会社岩本工業 代表取締役社長 岩本 英一郎 |
主たる研究等実施機関 企業情報
企業名 | 株式会社愛研化工機(法人番号:5500001005505) |
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事業内容 | 排水からのエネルギー回収が可能な嫌気性排水処理法を得意技術とし、主製品である高速・超高負荷EGSB排水処理装置「SUPER Depcer(スーパーデプサー)」が、全体売上の半分を占めている。 |
社員数 | 12 名 |
本社所在地 | 〒791-1125 愛媛県松山市小村町353番地6 |
ホームページ | https://www.aiken-h2o.com/ |
連絡先窓口 | 株式会社愛研化工機 代表取締役社長 岩田 佳大 |
メールアドレス | y.iwata@aiken-h2o.com |
電話番号 | 080-2970-3536 |
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