バイオ
微細藻類の増殖を向上する微生物製剤の開発
北海道
環境⼤善株式会社
2025年1月21日更新
プロジェクトの基本情報
プロジェクト名 | 光合成微生物増殖促進剤の純粋培養製造技術開発 |
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基盤技術分野 | バイオ |
対象となる産業分野 | 食品、化学品製造 |
産業分野でのニーズ対応 | 高機能化(新たな機能の付与・追加) |
キーワード | 微細藻類、微細藻類増殖促進細菌、MGPB |
事業化状況 | 研究実施中 |
事業実施年度 | 令和2年度~令和4年度 |
プロジェクトの詳細
事業概要
本プロジェクトでは、家畜の糞尿から得られる発酵液に含まれる光合成微生物の増殖促進成分を分離し、純粋培養技術を開発することが目標とされている。具体的には、藍藻や微細藻類の増殖を促進する微生物の分離および同定を行い、これらの成分を利用して高効率な増殖促進剤を製造することを目指している。また、従来製品では不可能であった医薬品や食品向けの高品質製品を供給するために、排泄物由来の不純物を除去した製品開発が求められている。
開発した技術のポイント
本研究開発では、光合成微生物の増殖を促進する微生物を分離・同定し、共培養による高効率な増殖促進技術を確立し。特に、AF2108株やJM311株が、それぞれSynechococcus elongatusおよびEuglenaの増殖を劇的に強化する効果を示した。また、これらの微生物の純粋培養条件を検討し、また、分離した微生物の培養条件を最適化し、細胞生産性を30倍まで向上させることにも成功した。本技術により、医薬品原料、機能性食品、バイオ燃料等の生産に用いられる光合成微生物の培養効率を大幅に改善できる可能性が示された。
具体的な成果
次世代バイオ産業において重要な光合成微生物の増殖を促進する液体堆肥から微生物を分離し、純粋培養によって高品質・高性能な製品開発を目指して研究開発を実施した。当初の計画通りに微生物を探索できなかったものの、方法を再検討した結果、新規性が高く、性能に優れた光合成微生物増殖促進細菌を複数分離することに成功した。AF2108株は、共培養によりラン藻Synechococcus elongatusの増殖を最大16.8倍に増強し、JM311株は共培養によりEuglenaの増殖を最大9倍まで促進した。この結果は、これらの分離株が増殖促進物質を供給することで、光合成微生物の増殖速度を劇的に向上させる可能性を示す画期的な成果である。この増殖促進活性を維持したまま純粋培養できれば、目的の光合成微生物増殖促進製剤の生産が可能となる。
知財出願や広報活動等の状況
このプロジェクトでは、次の特許出願が行われた。
1. 特願2023-000957「微細藻類増殖促進用微生物、微細藻類増殖促進剤、微細藻類の培養方法、スクリーニング方法」
小西正朗、加藤勇太、タン ペイ ユ、窪之内誠 (令和5 年1 月6 日出願)
2. 特許第7148099 号(特願 2021-118370) 「植物生長促進剤、微細藻類成長促進剤、フルボ酸含有液及びフルボ酸含有液の製造方法」
加藤勇太、窪之内誠、小西正朗 (令和3 年7 月19 日出願、特許査定:令和4 年9 月27 日)
さらに、プロジェクト期間中には超異分野学会や日本農芸化学会をはじめとする複数の学術集会において、計13件の研究成果発表を行った。これらの活動は産学連携の事例および独創的な研究開発として評価を得ている。
研究開発成果の利用シーン
本研究開発で得られた増殖促進微生物は、藍藻や微細藻類の増殖を劇的に改善することが確認されている。これにより、川下事業者が行うバイオ燃料や食品素材の生産プロセスの効率を向上させることが期待されている。また、純粋培養された増殖促進剤は、医薬品やファインケミカルの製造においても高品質な製品を提供する可能性が高く、今後の産業利用の拡大が見込まれる。
実用化・事業化の状況
事業化状況の詳細
当初の計画通り、光合成微生物増殖促進細菌を大量培養し、その培養液から増殖促進物質を取り出し製剤化する方向での事業展開は、活性を維持したままでの大量培養技術が確立しておらず、見通せていない。今後の継続研究で課題を解決し、事業展開を検討したい。一方で、共培養によりSynechococcus やEuglena の増殖を劇的に改善する微生物の分離に成功していることから、川下事業者と共培養による有用物質生産プロセスの開発や藻類関連商材の開発の可能性も見出すことができた。
提携可能な製品・サービス内容
試験・分析・評価
製品・サービスのPRポイント
・増殖促進微⽣物の分離同定
-共培養により藍藻Synechococcus elongatusの増殖を促進する微⽣物を分離同定した。
-共培養により微細藻類Euglenaの増殖を促進する微⽣物を分離同定した。
・純粋培養による藍藻増殖促進物質の⾼効率⽣産
-共培養により増殖を藍藻や微細藻類の増殖を促進できる微⽣物の培養条件を検討し、細胞⽣産性を30倍に⾼めた。
今後の実用化・事業化の見通し
当初の計画通りに光合成微生物増殖促進細菌を大量培養し、その培養液から増殖促進物質を抽出して製剤化する事業展開については、活性を維持したままの大量培養技術が確立しておらず、見通しが立っていない。今後の継続的な研究でこの課題を解決し、事業展開の可能性を検討したいと考えている。
一方で、共培養によってSynechococcusやEuglenaの増殖を劇的に促進する微生物の分離に成功したことから、川下事業者との共培養による有用物質の生産プロセスや藻類関連商材の開発における可能性を見出すことができた。
実用化・事業化にあたっての課題
実用化に向けては、増殖促進活性が高い微生物を純粋培養した培養液でも高い活性が確認されていることから、活性を維持した状態で分離微生物を大量生産できれば、さらに高性能な増殖促進剤の開発が可能である。しかし、増殖が良好な条件下で培養した場合、光合成微生物の増殖促進活性が確認されないことがあることも判明しており、どのように培養方法を構築するかが重要な技術的課題である。一方で、共培養によって劇的な増殖促進が見られるが、共培養菌の菌体や代謝物が製品に混入することから、安全性試験など、厳しいハードルをクリアする必要がある。
事業化に向けた提携や連携の希望
本研究で得られた成果を実用化するため、まず微細藻類・シアノバクテリアを用いた医薬品原料、機能性食品、化成品原料等の物質生産を行う企業との連携を希望する。また、食品・医薬品製造向けの培地・添加剤メーカーとの連携により、本技術を活用した新規培養添加剤の開発・製品化を進めたいと考えている。さらに製品の市場投入に向けた安全性試験や規制対応のため、学術機関や公的試験機関との協力も視野に入れて進めている。
プロジェクトの実施体制
主たる研究等実施機関 | 環境⼤善株式会社 |
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事業管理機関 | 国⽴⼤学法⼈北⾒⼯業⼤学 |
研究等実施機関 | 国⽴⼤学法⼈北⾒⼯業⼤学 |
アドバイザー | 株式会社リバネス副社長CTO 井上浄氏 農林水産研究センター長宮内陽介氏 |
主たる研究等実施機関 企業情報
企業名 | 環境⼤善株式会社(法人番号:7460301002709) |
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事業内容 | 製造業 |
社員数 | 16 名 |
本社所在地 | 〒099-2103 北海道北見市端野町三区438-7 |
ホームページ | https://kankyo-daizen.jp/ |
連絡先窓口 | 国⽴⼤学法⼈北⾒⼯業⼤学・⼩⻄正朗 |
メールアドレス | konishim@mail.kitami-it.ac.jp |
電話番号 | 0157-24-9402 |
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