材料製造プロセス
高品質粒子材料の量産に向けたプラズマスプレー技術の高度化および生産性の向上を実現する製造装置の開発
兵庫県
竹内電機株式会社
2023年2月14日更新
プロジェクトの基本情報
プロジェクト名 | 高収率粒子製造を可能とするインバータ式ハイブリットICP装置開発 |
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基盤技術分野 | 材料製造プロセス |
対象となる産業分野 | 環境・エネルギー、航空・宇宙、自動車、電池 |
産業分野でのニーズ対応 | 高性能化(既存機能の性能向上)、高性能化(耐久性向上)、高性能化(信頼性・安全性向上)、高性能化(精度向上)、高効率化(同じ生産量に対するリソースの削減)、高効率化(生産性増加) |
キーワード | プラズマスプレー技術、金属球状粒子、シリコンナノ粒子、グリーン成長分野 |
事業化状況 | 実用化に成功し事業化に向けて取り組み中 |
事業実施年度 | 令和1年度~令和3年度 |
プロジェクトの詳細
事業概要
プラズマ発生部であるICPトーチにおいて、DC プラズマと重畳させることで加熱効率とプロセス安定性を向上させることが可能なハイブリッドICP装置の開発を実施した。また開発機の適用分野を粉末製造業に定め、製造現場で汎用的なニーズとして挙げられる「高生産性」「粒子高機能化」「高品質化(酸化抑制)」の3つに対応するため、ハイブリッド ICP 技術とあわせて、プロセスの高度な制御技術 、および大気非暴露回収技術も開発し、今後の成長産業で必須とされる粉体材料を製造するための装置として完成した。また開発装置を用いて試作した粒子材料は各適用分野の基本的なニーズを満たし、川下企業から品質面で好評価を受けている。
開発した技術のポイント
■高効率電源の開発
インバータ式ICP電源をベースとした高い電力効率に加え、DCプラズマ付加による加熱効率の向上および作業安定性を実現した量産用ハイブリッドプラズマ電源を開発した。
■高収率粒子構造化技術
シミュレーション技術を活用し、粒子生成・回収プロセスのモデル化およびプロセス制御機構の設計を行うことで量産に向けた粒子構造化技術を開発した。
■非暴露回収技術
減圧・不活性プロセスであるICP技術の特徴を活かしつつ、高温ガス流れから粒子を回収する手法を開発した。
具体的な成果
プラズマ発生部かつ原料供給部であるICPトーチにおいて、ハイブリッドプラズマの発生に成功。安定制御に向けた最適化を進め、プラズマ発生連続運転1時間による安定性検証、および産業規模の粉末供給レート(球状化処理:11kg/h以上、ナノ粒子化処理:1.5kg/h以上)にて粉末処理性能の信頼性検証を実施した。
また処理粒子の回収部においては、製造した粉末材料を、処理チャンバから大気暴露させることなく回収可能な回収機構を作製し、開発機に実装して含有酸素量の低減効果を評価した。非暴露回収機構の利用により、大気開放を伴う通常回収品と比較して粉体の酸素量が低減し、市場ニーズに応え得るレベル(Ti系材料にて2,000ppm以下、Siナノ粒子にて10mol%以下)を達成できることを確認した。
その他、熱流体シミュレーション技術を活用してチャンバ内ガス流れを把握することでICPプロセスの制御性を向上させ、粒子構造化処理のモデル化を行った。また粒子球状化、ナノ構造化の実験とあわせて実証した。また回収性能の向上も進め、産業規模の回収量(球状化処理:11kg/h以上、ナノ粒子化処理:1.0kg/h以上)も確認した。
知財出願や広報活動等の状況
●知財出願
特願2022-194904 ナノ粒子製造装置及びナノ粒子製造方法
●広報活動
R Ohta, T Tanaka, A Takeuchi, M Dougakiuchi, K Fukuda and M Kambara “Feasibility of silicon nanoparticles produced by fast-rate plasma spray PVD for high density lithium-ion storage”(J. Phys. D: Appl. Phys. 54 (2021) 494002 https://doi.org/10.1088/1361-6463/ac23ff)
M. Kambara, M. Fukuda, R. Ohta, T. Tanaka, A. Takeuchi, M. Dougakiuchi and K. Fukuda “Effect of powder loading on plasma spheroidization of hydride-dehydride titanium powders” (Jpn. J. Appl. Phys. 60(2021)105507 https://doi.org/10.35848/1347-4065/ac28e1)
Akihiro Tanaka, Ryoshi Ohta, Masashi Dougakiuchi, Toshimi Tanaka, Akira Takeuchi, Kenichi Fukuda & Makoto Kambara “Silicon nanorod formation from powder feedstock through co-condensation in plasma flash evaporation and its feasibility for lithium-ion batteries” (Scientific Reports 11(2021) 22445 https://doi.org/10.1038/s41598-021-01984-y)
研究開発成果の利用シーン
本事業により開発された技術を内包した高収率粒子製造用ハイブリッドICP 装置の完成により、産業レベルで製造できる高い生産性と、出来上がり形状の品質を高めた材料粉末の製造が可能となった。これにより、 国内で高品質球状粒子の製造を行うにあたり、低コスト化、高効率化にも配慮して部素材製造を供給する装置としての役割を担うことができる。
・開発装置による粒子球状化処理は、適用分野として金属積層造形があげられる。開発機では従来手法と比較してサテライト状の異形粒子を低減することが可能であり、流動性や充填性の向上を図ることができる。
・開発装置によるナノ粒子化処理は、適用分野として次世代リチウムイオン電池負極材料があげられる。従来機では困難であった1kg/hを超える高い生産性を実現しており、試作粒子の品質面でも良好な結果が得られている。
実用化・事業化の状況
事業化状況の詳細
・金属積層造形におけるTi材料球状化については、Ti粉末メーカーと良好な関係を構築しており、メーカー側の評価を今後の装置開発に反映させたいと考える。
・次世代リチウムイオン電池に向けたシリコンナノ粒子については、川下企業である電池材料を取り扱うメーカー2社に対してサンプル出荷を行っており、高評価を得ている。
提携可能な製品・サービス内容
素材・部品製造、製品製造、試験・分析・評価、共同研究・共同開発、技術コンサルティング
製品・サービスのPRポイント
高収率粒子製造用ハイブリッドICP装置の完成により、産業レベルで製造できる高い生産性と、出来上がり形状の品質を高めた材料粉末の製造が可能となった。これにより、国内で高品質球状粒子の製造を行うにあたり、低コスト化、高効率化にも配慮して部素材製造を供給する装置として役割を担うこととなる。
今後の実用化・事業化の見通し
今後は粉末製造開発の活発化により、市場が大きく立ち上がっていくことが予想される。3D造形用Ti球状粒子市場は、NEDOの予測によると2019年の1,614億円から2030年には5,000~6,000億円まで拡大することが見込まれている。このような市場拡大に伴い、本装置を市場に認知させるため、成果を広くPRし、今後国内外含め装置の販売促進を行いさらなる事業化に結び付けていきたいと考えている。
実用化・事業化にあたっての課題
ICPプラズマスプレー技術は材料選択の幅が広く、金属以外にも耐熱合金やセラミックス、磁性材料なども供給原料として利用できることから、各種材料試作を実施し、ラインナップの増強をはかる。
事業化に向けた提携や連携の希望
開発した技術成果の事業化に向けて、引き続き、しまね産業振興財団、島根県産業技術センターや大阪大学と研究開発を進めている。事業を拡大するにあたり、より広く電池材料企業との連携を模索中である。
プロジェクトの実施体制
主たる研究等実施機関 | 竹内電機株式会社 松江研究室 |
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事業管理機関 | 公益財団法人しまね産業振興財団 企業振興部 新事業支援課 |
研究等実施機関 | 島根県 島根県産業技術センター シミュレーション・可視化技術応用プロジェクトチーム 国立大学法人東京大学 大学院工学系研究科マテリアル工学専攻 神原 淳 研究室 |
アドバイザー | 日本電子株式会社 IE 事業ユニット IE技術開発部 シニアアドバイザー 小牧 久氏 パナソニック株式会社 マニュファクチャリングイノベーション本部 課長 大熊崇文氏 |
主たる研究等実施機関 企業情報
企業名 | 竹内電機株式会社(法人番号:2140001049797) |
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事業内容 | 制御盤、高低圧電気工事、自動機械装置、高周波電源、高周波応用装置、高真空装置、及びその利用技術の研究開発 |
社員数 | 14 名 |
生産拠点 | 本社工場、焼入工場(ともに兵庫県) |
本社所在地 | 〒661-0965 兵庫県尼崎市次屋三丁目11番23号 |
ホームページ | https://www.takeuchi-e.co.jp/ |
連絡先窓口 | 竹内電機株式会社 技術部 研究開発 田中暁巳 |
メールアドレス | tanaka@takeuchi-e.co.jp |
電話番号 | 080-5362-8569 |
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