文字サイズ
標準
色の変更

研究開発された技術紹介

  1. トップ
  2. 研究開発技術検索
  3. 農産物の輸出に向けた長期品質保持を実現するカテキン・酸素水ナノミスト技術の開発

バイオ

農産物の輸出に向けた長期品質保持を実現するカテキン・酸素水ナノミスト技術の開発

大阪府

株式会社プロテクティア

2023年2月12日更新

プロジェクトの基本情報

プロジェクト名 農産物の輸出に向けた長期品質保持を実現するカテキン・酸素水ナノミスト技術の開発
基盤技術分野 バイオ
対象となる産業分野 農業
産業分野でのニーズ対応 高効率化(同じ生産量に対するリソースの削減)、高効率化(生産性増加)、環境配慮
キーワード 農産物、輸出、カテキン・酸素水、ナノミスト技術、鮮度維持
事業化状況 実用化間近
事業実施年度 令和1年度~令和3年度

プロジェクトの詳細

事業概要

本事業は農産物の輸出を促進するために、カテキンと酸素水ナノミストを用いた鮮度維持システムの開発を行った。農産物の品質は熟度の進行・カビの発生によって日々変化することが知られている。そこで本事業では酸素水ナノミストを用いて農産物に付着したカビ胞子を効果的に殺菌し、カテキンナノミストを用いて継続的な抗菌活性と熟度進行を抑制することで、鮮度を20日以上維持する新品質保存技術の開発を目標とした。H31年度は主としてカテキンの抗菌効果の実証と噴霧検討、農産物保存効果の評価方法検討、ミスト機の検討を中心に実施した。R2年度は農産物の長期保存を可能とする噴霧薬液の基本組成確立と、評価方法に関して目標通りの開発を遂行することができた。R3年度は繊細な農作物に対するカテキン・酸素水ナノミストの噴霧処理システムを開発し、その優れた保存性を示すメカニズムを明らかにした。また開発したシステムを元に実際のユーザーの一つである農場でのイチゴへの噴霧評価を行ったところ、35日間のイチゴ保存効果を実現した。

従来技術と新技術の比較
開発した技術のポイント

【1-1】 ナノミスト技術に適したカテキン類の抗カビ活性評価
→複数種類のカテキン類の抗菌効果を探索し、特に効果の高いカテキン類の選定に成功した。
【1-2】カテキン・酸素水ナノミスト薬液の開発
→農産物、特にイチゴにとって禁忌である"濡れ"を防ぎつつ、まんべんなくミストを噴霧するための薬液と噴霧の確認試験方法を策定した。
【1-3】酸素水ナノミスト+カテキン類ナノミストの作用機序解析
→イチゴの品質保持にかかわる遺伝子を複数解析し、カテキン・酸素水の作用機序を解析し、複数の品質保持遺伝子の同定に成功した。
【2-1】カテキン・酸素水ナノミストの噴霧方法の検討
→ミスト処理するためのブースの検討を行い、ブースの違いや処理方法に関して最適なプロセスを見出した。
【2-2】カテキン・酸素水ナノミスト噴霧の鮮度保持効果の評価
→ミスト処理したイチゴの遺伝子解析および硬度維持効果に関して評価を行い、特に硬度に関しては高い保持効果が確認された。
【2-3】カテキン・酸素水ナノミスト生成システムの実証
→実際の農場において噴霧実証試験を行ったイチゴを持ち帰り35日間貯蔵したものを評価したところ、硬度・ハリ・酸度などの項目で品質の維持が確認された。川下企業の担当者にも実食いただき、特に硬度の維持に関して高い評価を受けた。

実地噴霧試験
具体的な成果

・3年間の補助事業により、農農産物の長期保存を可能とする噴霧システムの基本構築を完了した。
・収穫直後のイチゴ8種に対して酸素水・カテキンナノミストの噴霧実証試験を行い、最大35日間保存できることを確認。
・本事業で開発したシステムは1平方メートルのブース内でまんべんなくミストが充満することが確認されており、当初の目標である600パック/1時間の処理も可能であることを確認。また、実際のユーザーとなる農場でも実施が可能であることを確認。
・噴霧3週間後のブラインド官能試験において、甘味、酸味、硬度の保持効果が見られた。
・複数の輸出関連業2社・貯蔵設備業2社の担当者を対象に35日貯蔵後のナノミスト処理したイチゴの試食会を実施したところ、果実のハリ、味、香りにおいても高い評価を得た。
・夏イチゴ「すずあかね」を用いた試験において酸素水・カテキンミスト処理および鮮度保持資材の併用により鮮度保持(貯蔵20日:食味成分変動 10%以下、カビ増殖抑制(カビ発生率20日後に0%、硬度低下なし)を達成。

カビ抑制効果
知財出願や広報活動等の状況

広報活動の一環として、令和4年10月26日~28日に農林水産省が主催したアグリビジネス創出フェア2022において、農産物の長期貯蔵に資する鮮度保持技術の紹介として展示会に出展し、関連技術の紹介を実施した。アグリビジネス創出フェア2022は、全国の産学官の機関が持つ、農林水産・食品分野などの最新の研究成果を展示やプレゼンテーションなどでわかりやすく紹介し、研究機関同士や研究機関と事業者との連携根拠場として開催する「技術・交流展示会」である。開催の3日間の展示化に100社を超える関連企業がブースに来訪し、開発した技術に非常に高い関心を示した。展示会の後、関連分野の20社を超える企業との技術連携に関して打ち合わせおよび実証試験を開始している。

アグリビジネス創出フェア
研究開発成果の利用シーン

本技術の利用シーン(ユーザー)としては、農産物生産者(農場)と流通企業(農協及び輸出企業)の2者をターゲットとして考えている。農産物の輸送においては小売店に並ぶまでにいくつかのステップがあり、その道中において例えば収穫後の洗浄時に噴霧を行う場合や、コンテナ中でのミストなどの手法を用いて本技術を使用する場面が想定される。また、今後の研究開発の対象としては、栽培時に噴霧を行うことでうどんこ病などの感染症を防ぐことができないか?といった異なる使い方での検討も想定される。

実用化・事業化の状況

事業化状況の詳細

事業化に向けて、ユーザーへのヒアリングをもとにした開発を主として実施中である。具体的には、イチゴ農家での実演およびプロトタイプ機を農家で使用してもらい、フィードバックを元に開発を進めている。また、本使用ユーザーである農家や農協に対してのヒアリングと営業活動も並行して進めていく予定である。

提携可能な製品・サービス内容

設計・製作、素材・部品製造、製品製造、試験・分析・評価、共同研究・共同開発、技術ライセンス、技術コンサルティング

製品・サービスのPRポイント

収穫直後のイチゴを対象に酸素水・カテキンナノミスト処理することで、35日間貯蔵しても外観も美しくハリがあり硬度および酸度の維持が可能。イチゴ等の青果物は収穫後に貯蔵経過時間に準じて軟化するとともに酸味が急激に減少していくのに対して、酸素水・カテキンナノミスト処理することで収穫後に急上昇するアクアポリン関連遺伝子発現を抑制する。結果として果実の水分を保持し硬度を高めていることを明らかにした。イチゴだけでなくパイナップルやメロンなど収穫後の果実の硬度維持することでこれまで困難であった日本産の青果物の輸出を促進する新サービスを提供。

今後の実用化・事業化の見通し

日本のイチゴは世界でもトップレベルにあり、糖度、大きさ、ジューシーさなどにおいて、主要輸出先の香港や台湾でも高い評価を得ている。実際に年々輸出額は増加しており、今後特に富裕層の多いシンガポールや中東への輸出は今後のビジネスチャンスである。そのうえで最大35日間の品質保持効果を示したカテキン・酸素水ナノミストは輸出可能範囲を大きく広げることができるため、輸出入の技術として展開することが第一の展開として考えている。今後輸出入関連企業との提携を目指して事業化を進めていく。

実用化・事業化にあたっての課題

本開発技術の事業化に向けて、今後の課題は1. 省庁へのレギュレーション確認(ポストハーベスト対応)、2. 農家以外のニーズ探索とヒアリングの強化、3. 実際の農場での作業ヒアリングを行い、処理方法の効率化・改善という点を課題としている。特に2の営業部分に関しては重要となるが、本補助事業内でも輸出業者へのヒアリングと情報交換は行っているところである。また本技術に関するヒアリングにおいて、国内だけでなく海外市場においても技術導入したいとの要望もあった。3年間にわたる本事業の成果によって噴霧システムの開発を行うことができたため、今後イチゴ農家での実演およびプロトタイプ機を農家で使用してもらい、フィードバックを元に開発を進めつつ、農家や農協などへのヒアリングと営業活動を進めていく予定である。

事業化に向けた提携や連携の希望

本事業で開発した新技術・酸素水・カテキンナノミスト処理による青果物の硬度維持の上昇は流通時に発生する新事業スタートアップのための補助金等の支援を求めたい。

プロジェクトの実施体制

主たる研究等実施機関 株式会社プロテクティア 本社
事業管理機関 国立大学法人大阪大学 産業科学研究所
研究等実施機関 株式会社ビズジーン 本社

主たる研究等実施機関 企業情報

企業名 株式会社プロテクティア(法人番号:6120901018271)
事業内容 カテプロテクト搭載製品の開発・販売、抗ウイルス抗菌受託試験
社員数 3 名
本社所在地 〒567-0047 大阪府茨木市美穂ヶ丘8-1 インキュベーション棟 I208
ホームページ http://www.protectea.co.jp
連絡先窓口 株式会社プロテクティア 田中伸幸
メールアドレス info@protectea.co.jp
電話番号 06-6155-8553