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精密加工

冷間鍛造による高強度で安価な軸付はすば歯車の量産化対応

静岡県

金田工業株式会社

2023年2月12日更新

プロジェクトの基本情報

プロジェクト名 次世代自動車向け軸付きはすば歯車の冷間鍛造新製法にかかる研究開発
基盤技術分野 精密加工
対象となる産業分野 環境・エネルギー、自動車
産業分野でのニーズ対応 高性能化(既存機能の性能向上)、高性能化(耐久性向上)、高性能化(小型化・軽量化)、高性能化(静粛性向上)、高効率化(同じ生産量に対するリソースの削減)、高効率化(工程短縮)、高効率化(生産性増加)、環境配慮、低コスト化
キーワード 歯車精密鍛造、強度向上、電動化、コストダウン、小型/軽量化
事業化状況 実用化に成功し事業化に向けて取り組み中
事業実施年度 令和1年度~令和3年度

プロジェクトの詳細

事業概要

HEV、EV駆動系の主となるモーター及び発電機付き変速機構に使用される軸付きはすば歯車の製造。高強度で量産性のあり安価な軸付きはすば歯車の量産化対応のため、金田工業が発案した「回転力付加はすば成形」ではすば歯車の鍛造化を図る。

HEV EV車に多く使われる軸付はすば歯車
開発した技術のポイント

最初に平行歯を成形して、その後更にはすば歯形状へと成形する「2段成形」は軸方向毎の歯スジと歯形の精度ばらつきが大きいため、「回転力を付加してねじり成形する」を同時に行う「一体成形」の金型を考案。「回転力付加はすば成形」工法では、はすば歯車形状に材料が流れるときに回転力を付加することで摩擦による抵抗を少なくし、金型負荷を大きく低減させることで大モジュール、高ねじれ角の軸付きのはすば成形を成立させた。
金型は、放電加工の荒取りをした後、鏡面まで磨き、表面処理をしている。これにより目標型命数3万本は達成できる見込みである。
材料にバリが発生しないように、軸方向のプレス圧力の制御を確立した。

冷間鍛造による はすば歯車成形品
具体的な成果

・プレス力と回転力を同期させるプレス機を設計、製作した。ワンショット成形に必要な条件と目標値を決定し、ワンショット成形を達成した。
・サイクルタイムは、13.4秒まで短縮することが出き、目標の15秒を達成した。
・冷間鍛造による歯精鍛ギア精度は、累積ピッチ精度などJIS等級N6相当で成形することができた。
・歯車の疲労試験用のギアBOXを製作し、ダイナモ試験機に掛け強度テストを行った。結果、歯切品に対して、鍛造品の歯精鍛ギヤは 高負荷では69%。中負荷では25%。低負荷では153%の耐久回数の向上が見られ、目標を達した。
・バリ高さ3mm以下で脱落のない歯の成形は、プレス荷重を低減してギア歯を成形することでバリ発生を抑えた。
・回転力を成形時に適切に付加してワークと金型との摩擦を抑えることで、金型の摩耗を抑えることができた事より、命数Upが図れると判断する。

SN線図_歯切歯車対鍛造歯車
知財出願や広報活動等の状況

金田工業が発案した「回転力付加はすば成型」は、特許第7178687号 特願2018-060612 にて、登録済み。
新たな特許についても、出願を計画している。

研究開発成果の利用シーン

「回転力付加はすば成形」によって、高ネジレ角のはすば歯車のサイクルタイムを短縮し、冷間鍛造による歯精鍛ギア精度等級 累積ピッチ精度でJIS N6級相当を実現したHEV、EV向けのはすば歯車一体型シャフトの提供。
鍛造化による軸付きはすば歯車の高強度化により、使用される鋼材種の安価化や、静粛性を向上させるためのギア諸元の設計自由度の向上、歯幅の縮小による減速機などの駆動装置の省スペース化、歯車の小型化などによる軽量化が提供可能となる。
生産能力の高い鍛造加工による はすば歯車生産であるため、大量生産において歯切り設備のようなサイクルタイムの長い設備設備を大量に投資がする必要が無く、冷間鍛造に必要なプレス機も小規模(本研究内容の歯車諸元であれば200tプレス機)であり、従来必要とする投資に比べ安価で提供できる。

実用化・事業化の状況

事業化状況の詳細

軸付きはすば歯のワンショット成形を確立した。自動車などの輸送機器業界で大きな需要がある歯車形状の鍛造化、不可能とされてきた冷間鍛造の20度以上の高ネジレ、2以上の大モジュールでの軸付きはすば歯車の量産化への道筋を明確にした。

提携可能な製品・サービス内容

素材・部品製造、製品製造、共同研究・共同開発

製品・サービスのPRポイント

軸付きはすば歯のワンショット成形の確立と、金型耐久回数の向上により、軸付きはすば歯車製造時間の短縮とコスト低減を実現した。
鍛造化による軸付きはすば歯車の高強度化により、使用される鋼材種の安価化や、静粛性を向上させるためのギア諸元の設計自由度の向上、歯幅の縮小による減速機などの駆動装置の省スペース化、歯車の小型化などによる軽量化が実現可能となる。

今後の実用化・事業化の見通し

はすば歯車サイクルタイムの目標値達成と、金型目標寿命を達成できたことから、量産化の見通しが立った。鍛造品の累積ピッチ精度等は、JIS N6級相当であり安定して精度がよく鍛造の有効性が確認できた。歯研磨での取代低減は客先ニーズがある。本工法の歯車精度をより高精度化し、取り代低減ニーズに答えていく必要が有るため、継続して鍛造はすば歯車の高精度化に取組んでいく。
主要な取引先より、EV向けの新規開発案件での見積打診を受けている。早期事業化を図る為、その新規製品形状での開発展開を行い2023年5月までにサンプル品の製作を行う。同時に、金型の長寿命化の取り組みも同時に行い、鍛造コストの低減取り組みも継続して行い、工法の付加価値向上を図る。

実用化・事業化にあたっての課題

量産化のためには、鍛造条件(加工上の制約)をできるだけ少なく、設計の自由度を上げる必要がある。多様な歯車形状に対応できる様に継続的な開発を行う。加えて、金型の長寿命化は、向上すれば向上するほど成形の高速化などの工程改善に繋げることができ、「回転力付加はすば成形」の価値を高めることができるように継続的に取り組む課題である。軸付きはす歯の鍛造製法は確立したばかりである。その潜在的な可能性は、とても大きいと考えている。

プロジェクトの実施体制

主たる研究等実施機関 金田工業株式会社 技術部、技術部冷鍛技術課
事業管理機関 公益財団法人浜松地域イノベーション推進機構 事業推進部 技術支援グループ
研究等実施機関 国立大学法人静岡大学 学術院工学領域機械工学系列
アドバイザー 本田技研工業株式会社 トランスミッション製造部
静岡県工業技術研究所浜松工業技術支援センター 材料科

主たる研究等実施機関 企業情報

企業名 金田工業株式会社(法人番号:7080401001260)
事業内容 2輪車・4輪車のエンジン部品、各種ねじ販売
社員数 417 名
本社所在地 〒433-8117 静岡県浜松市中区高丘東三丁目18番5号
ホームページ https://www.kanetakogyo.co.jp/
連絡先窓口 金田工業株式会社 技術部 清水勇貴
メールアドレス y_shimizu@kanetakogyo.co.jp
電話番号 053-436-1211