精密加工
モータの構成部品である電磁鋼板の加工工具の先端をナノサイズに先鋭化することによりモータ効率向上を図る
長野県
株式会社小松精機工作所
2024年12月6日更新
プロジェクトの基本情報
プロジェクト名 | 電動化社会を支える、モータ向け電磁鋼板せん断加工用の先鋭化高硬度工具の開発 |
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基盤技術分野 | 精密加工 |
対象となる産業分野 | 自動車、ロボット、スマート家電 |
産業分野でのニーズ対応 | 高性能化(既存機能の性能向上)、高性能化(耐久性向上)、高性能化(精度向上)、低コスト化 |
キーワード | ナノメートル先鋭化工具、セラミック工具、電磁鋼板せん断工具、一般せん断製品の品質安定化・耐用向上、異形加工 |
事業化状況 | 実用化に成功し事業化に向けて取り組み中 |
事業実施年度 | 令和1年度~令和3年度 |
プロジェクトの詳細
事業概要
モータの高効率化は電動化社会を支える技術となる。電磁鋼板をせん断して製作するモータ鉄心は、せん断加工中のひずみが鉄損を招くことにより高効率性を確保できていない。そこで、高効率な次世代モータ市場を構築するため、本開発ではナノメートル先鋭化工具、電磁鋼板せん断用高硬度セラミック工具を開発し、鉄心の鉄損の減損 及びせん断加工の耐用向上を実現し、モータ透磁率3%向上、工具耐用20%向上を実現する。2025年時に3,000億円のモータ市場に展開を目指す。
また、自動車の電動化において、動力伝達用モータに限らずモータ全体をターゲット市場としている。更に、せん断加工用先鋭化高硬度工具は、一般のステンレスや銅合金などのせん断加工に適用でき、せん断製品の品質安定化および耐用を向上が期待できるため、高付加価値化工具として市場への展開も目指す。
開発した技術のポイント
〇ナノメートル先鋭化工具の開発に関する下記技術的課題を解決する。
・試料サイズの制限:イオンビーム径φ20 mmを持つ装置の導入
・異形形状への対応:均質なイオン研磨量を異形形状で保証する加工技術の開発
・鉄損の定量評価:具体的な鉄損量の評価方法の確立
・ダイヤモンド工具先鋭化工法:市販の超硬+ダイヤモンドコーティングを、超短パルスレーザを用いて先端R 1 µm未満まで先鋭化する技術開発
・レーザ加工機の開発:集光による傾きを補正する制御プログラム開発と、異形形状製品へのレーザに対応するステージを組み合わせた加工機の開発
〇電磁鋼板せん断用高硬度セラミック工具の開発に関する下記技術的課題を解決する。
・SiCコーティングとWC+Co超硬材の密着性:市販超硬材をSiCコーティングした場合、100ショットでパンチ先端のSiCが剥離してしまうため、工具母材となる元素の耐熱性確保の技術開発
・WC+SiC工具母材とSiCコーティングの課題:WC+Co超硬材とSiCコーティングの密着性改善には、CoをSiCにに置き換えることが有効であるが、SiC母材にSiCコーティングが優先して成膜される(選択成長)ため、WCの含有量やSiCコーティング方法の技術開発
具体的な成果
・ナノメートル先鋭化工具の開発
‐イオン加工による工具先鋭化技術の開発
*超硬、セラミックを用いた塑性加工用工具の刃先先端R:1.0μm未満を達成
‐レーザ加工による工具先鋭化技術の開発
*ダイヤモンド工具の刃先先端R:1.0μm未満を達成
‐先鋭化工具の性能確保
*10万ショットまでの加工を実施しそのデータを基に対数グラフより摩耗予想評価を実施した結果、現行比+50%以上を確認、及び透磁率現行比1%向上を確認
‐先鋭化工具の実用展開
*川下企業のパナソニック、日立製作所様と小松精機工作所内関連部門に開発技術を提案
・電磁鋼板せん断用高硬度セラミック工具の開発
‐SiCコーティング皮膜の開発
*硬度2800HV、面粗さRa0.3μm以下を達成
‐WC+SiC工具母材の開発
*WC粒径0.5μm以下、SiC粒径0.3μm以下を達成
‐硬度セラミック工具の性能確保
*硬度、靭性特性を向上させたセラミック工具で、10万ショットまでの加工を推進したが、5,000ショット加工後にエッジ部に欠損(コーティングが割れて剥がれた)発生したため、継続研究中
知財出願や広報活動等の状況
特許出願:
・特願2020-187999号:打抜き加工用金属及び打抜き部品の製造方法
・特願2021-111293号:打抜き加工方法
・特願2022-111574号:アモルファス合金箔のせん断加工法
新聞掲載:
・信濃毎日新聞社 2021年3月27日
研究開発成果の利用シーン
・電気自動車の動力伝達用モータに使用される電磁鋼板のせん断
通常工具に比べ「透磁率現行比:1%」向上しており、モータの効率化に貢献できる
・一般のステンレスや銅合金などのせん断加工工具
通常工具に比べ「摩耗率:50%以上」向上しており、せん断製品の品質安定化 及び耐久性が向上を実現可能
実用化・事業化の状況
事業化状況の詳細
モータ用鉄心の加工をしている企業は多数あるが、まずは本研究のアドバイザーを中心に、開発技術の提案を実施する。
提携可能な製品・サービス内容
加工・組立・処理、素材・部品製造、製品製造
製品・サービスのPRポイント
・電気自動車に搭載されるモータの鉄損改善によるモータの高効率化
・自動車の電動化において、動力伝達用モータに限らずモータ全体をターゲット市場としている。
・一般のステンレスや銅合金などのせん断加工に適用でき、せん断製品の品質安定化および耐用を向上が期待できる。
今後の実用化・事業化の見通し
学会活動による先鋭化高硬度工具採用の裏付けと成果発表から新規顧客を開拓していく。
実用化・事業化にあたっての課題
本プロジェクトによって開発した技術から、製品を量産化するための設備導入費用の調達
事業化に向けた提携や連携の希望
独自で営業活動を推進しており、すでに興味を頂いている企業との打ち合わせが進んでいるため、提携や連携の希望はなし。
プロジェクトの実施体制
主たる研究等実施機関 | 株式会社小松精機工作所 本社工場・研究開発課 |
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事業管理機関 | タマティーエルオー株式会社 第2オフィス・産官学連携事業部 |
研究等実施機関 | 株式会社ジャパン・アドバンスト・ケミカルズ 開発センター・技術開発本部・取締役 技術開発本部長・安原 重雄 金属技研株式会社 神奈川工場・技術開発本部開発センター イノベーションセクション・次長・尾ノ井 正裕 公立大学法人東京都立大学 システムデザイン学部・機械システム工学域・教授・楊 明 地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター 本部・森河 和雄 国立研究開発法人産業技術総合研究所 つくばセンターつくば東事業所・製造技術研究部門 素形材加工研究グループ・主任研究員・加藤 正仁 国立大学法人富山大学 学術研究部工学系 機能材料加工学講座・教授・白鳥 智美 |
アドバイザー | パナソニック株式会社 インダストリアルソリューションズ社 株式会社日立製作所 研究開発グループ |
主たる研究等実施機関 企業情報
企業名 | 株式会社小松精機工作所(法人番号:7100001018306) |
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事業内容 | 精密プレス部品一貫製造、各種精密機械部品製造(自動車部品、腕時計部品、医療機器部品、情報機器部品、宇宙航空機部品、各種金型部品・治工具)、難削材の切削・研削加工 |
社員数 | 290 名 |
生産拠点 | Komatsu Seiki (Thailand) Co., Ltd.(タイ)、Rosies Base Holdings(アメリカ・ボストン)、株式会社ナノ・グレインズ |
本社所在地 | 〒392-0012 長野県諏訪市大字四賀942-2 |
ホームページ | https://www.komatsuseiki.co.jp/ |
連絡先窓口 | 株式会社小松精機工作所 鈴木 洋平 |
メールアドレス | y-suzuki@komatsuseiki.co.jp |
電話番号 | 0266-52-6100 |
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