精密加工
フッ素樹脂の残留応力計測
福島県
有限会社飯田製作所
2023年2月12日更新
プロジェクトの基本情報
プロジェクト名 | テラヘルツ波偏光計測を用いたフッ素樹脂(PTFE)内部残留応力評価法での残留応力計測による切削加工品質の安定化の研究開発 |
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基盤技術分野 | 精密加工 |
対象となる産業分野 | 自動車、産業機械 |
産業分野でのニーズ対応 | 高機能化(新たな機能の付与・追加) |
キーワード | テラヘルツ波、フッ素樹脂(PTFE)、残留応力計測、偏光強度計測 |
事業化状況 | 研究実施中 |
事業実施年度 | 令和1年度~令和3年度 |
プロジェクトの詳細
事業概要
切削加工分野でのフッ素樹脂(PTFE)部材は、焼成・切削加工後の残留応力の開放により、部材の安定性が低下する。「残留応力計測技術」と「残留応力の発生を低減する切削設計技術の確立と体系化」を図り、品質の安定性・安全性の向上により、材料歩留まり向上に寄与する切削加工技術の確立を目指す。
開発した技術のポイント
・計測手法の確立
‐PTFEは柔らかく、薄膜(厚さ1mm程度)はテラヘルツ波を透過し易いが、それ以上の厚みの場合ではテラヘルツ波の透過は実証されていない。そのため、厚さ数mmのPTFEでのテラヘルツ波偏光計測手法の検証、確立した。また、再現性評価も実施し、相関係数を求めた。
・テラヘルツ波偏光光学系の基礎試作
‐偏光子によって高効率で回転することを確認。
-フッ素樹脂が設置可能な引っ張り圧縮試験機を開発し、荷重印加にて、応力、テラヘルツ波強度、ひずみの関連性を研究した。
-部材の各箇所偏向強度を低減する、高効率PTFEレンズ部材の基礎試作開発を実施。
・切削条件最適化
‐切削条件と残留応力指標との相関関係の抽出により、残留応力の発生低減に寄与する切削条件の最適化を行う。
具体的には、歩留まりに寄与することがわかっている製造パラメータ(焼成成形時の焼成温度・時間・温度カーブ、切削時の送り速度・回転数・押圧)とテラヘルツ波偏光特性の関連性を評価し、切削条件の最適化を行う。
具体的な成果
・計測手法の確立
‐成形直後は回転角度と透過光強度の関係は測定位置により異なった。時間経過に伴い寸法が変化し、40~50日である寸法へ収束した。寸法変化が収束すなわち残留応力の解放が終わった時点では、回転角度と透過光強度の関係はどの測定位置でも類似した傾向を示すことが確認された。
・テラヘルツ波偏光光学系の基礎試作
‐適用する周波数帯(0.3-3THz)において、0.3THzでは、感度透過効率99%、強度比0.00001となった。また、3THzでは、感度透過効率97%、強度比0.001となり、目標感度透過効率50%以上を達成した。
-実円筒部材テラヘルツ計測では、0日目テラヘルツ強度>14日目テラヘルツ強度であり、得られたグラフからの傾向として、0日目は内在引張強度100MPa程度、14日目は内在引張強度20MPa~40MPa程度と推定できた。本試験にて、実部材に内在する残留応力の評価手法を創出した。
・切削条件最適化
‐切削パラメータである切込量、回転数、送り速度は、外径側(D)テラヘルツ強度に影響は無いため通常パラーメータとする。
知財出願や広報活動等の状況
・偏光特性計測手法の特許申請中
・偏光強度及び偏光角度を踏まえた高効率テラヘルツレンズ部材製作の特許申請中
・焼成条件・切削条件の関係性と計測手法や指標などの基本技術を特許申請中
・各箇所での、各方向テラヘルツ波偏向強度の割合について国際特許PCT出願済
・テラヘルツ波偏光強度とフッ素樹脂の基本物性の関係について特許申請予定
研究開発成果の利用シーン
精度を求められるPTFE切削部品ニーズを通じて、PTFE切削部品自体の適用分野が拡大する。
また、日本の熟練技術者の匠の技・ノウハウ・経験が、計測技術を通して体系化する事例となり、設計技術の継承の一助となるコンサルティングサービスが可能となる。
実用化・事業化の状況
事業化状況の詳細
テラヘルツ波計測手法により、残留応力と相関関係の高い特定のテラヘルツ偏光波長選定と独自指標の抽出した。
テラヘルツ波偏光強度と引張強度の関係から計測された偏光強度にて、非破壊にて残留応力計測が可能となった。
継続して偏光強度を計測することで再現性を示し、テラヘルツ波計測手法を確立する。
提携可能な製品・サービス内容
設計・製作、試験・分析・評価、技術ライセンス
製品・サービスのPRポイント
本研究開発では、新規性及び独創性のあるテラヘルツ波偏光計測にて非破壊計測を可能とする。
計測分野でのブレイクスルーを通じて、熟練者の切削加工知見を統合させ、「樹脂残留応力発生変形を抑えた品質の安定化・安全性の確保」と、
「熟練技術者の技能継承等を通じて川下製造業者へ継続した品質安定性・安全性を担保」を実現できる。
今後の実用化・事業化の見通し
フッ素樹脂での再現性、他樹脂の水平展開を意図し、樹脂残留応力の定式化、データベース化を図る。
実用化・事業化にあたっての課題
樹脂の形状(丸材、角材、異形形状等)、及び厚みを含めた計測データの蓄積、データマッピングに関する研究を推進中。
プロジェクトの実施体制
主たる研究等実施機関 | 有限会社飯田製作所 |
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事業管理機関 | 公益財団法人福島県産業振興センター |
研究等実施機関 | 国立大学法人東京大学 |
主たる研究等実施機関 企業情報
企業名 | 有限会社飯田製作所(法人番号:5020002002293) |
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事業内容 | フッ素樹脂・エンジニアリングプラスチック切削加工品(パッキン・シール・バックアップリング) |
社員数 | 160 名 |
生産拠点 | 福島工場・福島第二工場(福島県)、横浜本社(神奈川県) |
本社所在地 | 〒969-1204 福島県本宮市糠沢字水上21-2 |
ホームページ | https://iidaf.com |
連絡先窓口 | 有限会社飯田製作所福島第二工場 営業開発 主幹技師 三宅茂夫 |
メールアドレス | miyake_s@iidaf.co.jp |
電話番号 | 0243-64-2320 |
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