材料製造プロセス
合成カエデタンニンの大量生産技術と長期保存条件の確立
香川県
株式会社伏見製薬所
2020年4月9日更新
プロジェクトの基本情報
プロジェクト名 | 角質層内セラミドの増加作用を有する合成カエデタンニンの低コスト大量生産技術の開発 |
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基盤技術分野 | 材料製造プロセス |
対象となる産業分野 | 医療・健康・介護、化学品製造 |
産業分野でのニーズ対応 | 高機能化(新たな機能の付与・追加)、高性能化(既存機能の性能向上)、高性能化(信頼性・安全性向上)、低コスト化 |
キーワード | アンチエイジング、シワ改善、保湿、美白効果、セラミド増加 |
事業化状況 | 事業化に成功し継続的な取引が続いている |
事業実施年度 | 平成28年度~平成30年度 |
プロジェクトの詳細
事業概要
国内外の化粧品・健康産業では、保湿効果や皮膚のバリア機能を向上させる素材のニーズが高い。従来、これらの効果を得るには植物由来のセラミド成分や角質層内セラミド分解制御効果のある成分を皮膚に塗布する方法が主流であった。しかし、従来品は生体適合性が低くコストが高い。そこで、生体適合性が高く、角質層内セラミドの分解を効果的に抑制・増加させる作用を有する合成カエデタンニンの低コスト大量生産技術を開発する。
開発した技術のポイント
・大量生産方法の確立:反応条件の最適化、精製条件の最適化、スケールアップ検討、試験製造を実施し、従来技術では達成できなかったカエデタンニンの大量生産技術を確立した。これにより、主にスキンケアの分野において効果が期待できるカエデタンニンが低コストで大量供給可能になった
・長期保存方法の確立:カエデタンニンの水溶性を高める溶解補助剤を選定し、さらに水溶液中の長期安定性を確認した。この結果は、長期間にわたって使用する商品が多い化粧品やトイレタリー製品へのカエデタンニンの使用可能性を示唆するものである
・安全性・有効性の確認:カエデタンニンの皮膚に対する安全性と有効性を確認した。特に有効性に関しては、カエデタンニンによってセラミドが増加することを確認した。この結果はカエデタンニンによる化粧品としての機能性発現を示唆できるものであり、今後の新たな用途展開が期待できる
具体的な成果
・大量生産技術の確立:収率88%及び純度98%、生産量1.4kg/バッチ50L反応槽)を達成した
・長期保存技術の確立:添加剤濃度5%以下、カエデタンニン濃度1%(w/が完溶する条件で、1年間保存後、析出物無し、分解率5%以下を確認した
・安全性・有効性の確認:化粧品素材として使用できないほどの重篤な刺激性や障害が無いこと、角質細胞における細胞間結合及び保湿因子生成に悪影響を与えないことを確認した
知財出願や広報活動等の状況
株式会社伏見製薬所と国立大学法人富山大学はカエデタンニンに関して2件の用途特許を共同出願している。
「セラミド調整剤」(特願2016-004473)、及び「セラミド含量増加剤」(特願2017-561557)
また広報活動としては、国内外の化粧品メーカー、トイレタリーメーカーへの積極的な訪問、化粧品原料の展示会への出展などを行っている。(「CITE-Japan」(2019年5月・横浜)、「in-cosmetics asia2019」(2019年11月、タイ・バンコク)) 2020年1月に開催される化粧品開発展(幕張メッセ)ではカエデタンニンの機能性に関して富山大学加藤准教授が学術発表を行う予定である。
さらに、化粧品の業界誌であるFragrance Journalにカエデタンニンのスキンケアとしての有用性に関する記事を投稿した。(2020年1月号に掲載予定)
研究開発成果の利用シーン
近年、化粧品分野においては国内外を問わず、抗シワや保湿、美白などの、いわゆるアンチエイジング素材のニーズが高まっている。カエデタンニンは角質層に存在するセラミドの分解を抑制することによって皮膚の保湿性を向上させる効果があり、更に、抗シワ効果や美白効果も期待できることから、アンチエイジング素材としての利用が期待できる。また近年の研究により、アトピー性皮膚炎の患者の肌ではセラミドが大幅に不足しており、その結果、乾燥肌や肌荒れ、皮膚バリア機能の低下を引き起こし、更なる症状の悪化につながっていることが判明している。セラミドの分解を抑え、肌の保湿性を向上させることのできるカエデタンニンにはアトピー性皮膚炎の症状緩和作用を期待することができる。
実用化・事業化の状況
事業化状況の詳細
2019年12月、国内化粧品メーカーからカエデタンニン(表示名称:没食子酸無水ソルビトール)含有の化粧品が発売が開始された。伏見製薬所から当該化粧品メーカーへのカエデタンニンの販売は2019年12月時点までに3回を数え、今後も継続される見込みである。また、当該化粧品メーカー以外の国内外の化粧品メーカー、トイレタリーメーカーにおいてもカエデタンニンの採用に向けたサンプルの評価が進んでいる。
提携可能な製品・サービス内容
素材・部品製造、製品製造
製品・サービスのPRポイント
カエデタンニンは角質層におけるセラミドの分解を抑制するため、皮膚の保湿性を向上させ、結果的に小ジワや肌荒れを改善することができる。さらに、非常に強い抗酸化作用を持つことから、美白効果や肌のハリを維持する効果を期待することができる。即ち、化粧品素材としてカエデタンニンを使用することにより、肌の保湿や抗シワ、美白など、ほとんど全てのアンチエイジング効果を期待することができることから、化粧品メーカーにとっては、使用する原料の種類を減らすことが可能になり、化粧品のコスト低減や品質管理作業の軽減が期待できる。
今後の実用化・事業化の見通し
2019年12月、国内の化粧品メーカーからカエデタンニン配合化粧品が発売された。他の国内外の化粧品メーカー、トイレタリーメーカーにおいてもカエデタンニンの採用に向けた評価実験が進んでいる。化粧品の開発は年単位の時間を要するため、販売量は来年度後半あたりから伸びると予想している。
また、広報活動としては、年間を通しての化粧品メーカー、トイレタリーメーカーへの訪問や、業界誌への記事の投稿などを実施しており、今後も継続する予定である。
さらに、2020年1月に開催される化粧品開発展において、国立富山大学加藤敦准教授がカエデタンニンの有用性に関する口頭発表を行う予定である。
プロジェクトの実施体制
主たる研究等実施機関 | 株式会社伏見製薬所 港町事業所 糖質・バイオ研究部機能性糖質グループ |
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事業管理機関 | 公益財団法人かがわ産業支援財団 技術振興部 産学官連携推進課 |
研究等実施機関 | 国立大学法人富山大学 附属病院 薬剤部 ・ 准教授 加藤敦 |
主たる研究等実施機関 企業情報
企業名 | 株式会社伏見製薬所(法人番号:5470001007604) |
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事業内容 | 医薬品製造業 |
社員数 | 239 名 |
本社所在地 | 〒763-0042 香川県丸亀市港町307番地 |
連絡先窓口 | 港町事業所 糖質・バイオ研究部 機能性糖質グループ 石川文博 |
メールアドレス | ishikawa@fushimi.co.jp |
電話番号 | 0877-55-6763 |
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