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立体造形

射出成形技術の応用により、従来と比較してコストメリットに優れたマイクロプレートを提供!

千葉県

株式会社精工技研

2020年4月11日更新

プロジェクトの基本情報

プロジェクト名 射出成形における、超薄肉、超微細転写技術の開発
基盤技術分野 立体造形
対象となる産業分野 医療・健康・介護、自動車、光学機器
産業分野でのニーズ対応 高効率化(同じ生産量に対するリソースの削減)、高効率化(生産性増加)、低コスト化
キーワード 熱可塑樹脂、薄肉、微細転写、細胞培養、射出圧縮
事業化状況 事業化に成功し継続的な取引が続いている
事業実施年度 平成23年度~平成25年度

プロジェクトの詳細

事業概要

再生医療や創薬などの先端医療分野でナノ構造を持つ細胞培養シートを用い「より生体環境に近い」細胞研究が行われている。近年はより高精細化かつ高アスペクト比の製品需要が増えている。既存の細胞培養シートのナノ構造は主にインプリント技術で形成されており、高い生産性及び低コスト化が可能な射出成形での製品事例は少ない。これは、既存の射出成形技術では高精細、高アスペクト比の微細転写要求に対して技術的に実現が難しい為である。また、高倍率で細胞を観察する場合に一般の顕微鏡では焦点距離が短くなるために製品の薄肉化が求められるが、射出成形では薄肉化が難しいこともその要因となっている。本研究開発では射出成形による生産コストを抑えた製造方法で、今後の先端医療に不可欠な高精細、高アスペクト比、かつ薄肉な樹脂製品を実現するために新しい射出成形技術の確立に取り組んだ。

開発した技術のポイント

本研究開発では既存技術である光ディスク成形の射出圧縮金型技術をベースに断熱金型技術とHeat&Cool成形(H&C成形)を融合させた特殊射出成形装置及び高機能金型を製作。主な取り組みとして以下を実施した。
・射出圧縮金型の製作
薄肉成形品を得るために射出圧縮成形が可能なサイドゲート構造の金型(図1)を製作した。微細パターンを容易に変更できるよう微細パターン部を交換可能な金型構造とした。さらにこの金型を以下に記す金型の断熱構造及びH&C成形装置を組み込むためのスペースを設けた構造とした。
・金型の断熱構造の最適化
成形品の転写向上及び金型の加熱冷却時間を短くするために金型のキャビティー近傍及び冷却水路との間に熱伝導率の異なる材料を配置した。熱解析による最適値をシミュレーションで導き出し金型部品に展開した。
・H&C成形装置の具現化
微細で転写が困難なパターンを転写させるためにキャビティー近傍のみを樹脂のガラス転移温度(TG)以上に加熱する熱源を検討し具現化した。射出成形の射出圧に耐えうる面状のヒーターを製作しその制御器も製作した。

射出圧縮金型とその成形品
射出圧縮金型とその成形品
具体的な成果

本研究開発で製作した成形品について
・製作した製品例
-ナノ構造を持つ細胞培養容器としてφ35ディッシュ(図2)と96穴マイクロプレートを製作(図3)。ディッシュでさまざまな微細パターンを試作し、有効な培養結果が得られたパターンをマイクロプレートに展開。
・薄肉性
-ディッシュサイズで薄肉部0.15mmを達成(図4)。
-マイクロプレートサイズで薄肉部0.3mmを達成。
・微細転写性
-最小の微細パターンとしてφ150nmのドットパターンで高さ300nm(アスペクト比2)を達成。

微細ディッシュ
微細ディッシュ
微細マイクロプレート
微細マイクロプレート
薄底ディッシュ
研究開発成果の利用シーン

・低価格に抑えた微細構造を持つ96穴マイクロプレート等(細胞培養容器)
・薄肉・微細構造を必要とする成形品の試作・量産受託
・薄肉・微細転写を行う射出成形システム、精密金型

実用化・事業化の状況

事業化状況の詳細

・サポイン事業及びその後の検討を通じて、ほぼ狙い通りの進捗と成果を得ることができた。
・本研究開発で確立した製造方法を用いることで、従来の製造方法より安価に微細構造を持つマイクロプレートの提供が可能である。

提携可能な製品・サービス内容

設計・製作、素材・部品製造、製品製造

製品・サービスのPRポイント

・製造プロセスの転換により、価格を大幅に抑えたマイクロプレートの提供が可能
‐従来、微細構造を持つマイクロプレートは製造工程に手間がかかり、微細構造の成形にも時間がかかっていたため、トータルコストが高くついていた
‐射出成形技術の応用により微細構造を持つマイクロプレートの製造が可能になったことで、製造にかかる時間が大幅に短縮されるとともに、大量生産も可能になった
‐高精細な医療・細胞培養ニーズを満たすマイクロプレートを安価で提供することが可能になった
・薄肉と材料選定により、ガラスと同等の観察特性の付与が可能
‐カバーガラスと同様の製品厚みを実現した
‐蛍光顕微鏡、微分干渉顕微鏡、共焦点顕微鏡などで、ガラス製品と同等の観察特性が得られた

今後の実用化・事業化の見通し

・事業化展開の準備として、2013年5月に開催されたBIOtech2013で当社が参画している神戸医療産業都市ブースで本研究開発品を紹介した。そこで市場参入していく上でのパートナーを得ることができた。まずは薄肉商品の評価・改良を進め、販売を開始し、細胞培養容器の量産を手掛け始めた。
・微細構造を持つ商品で新たな培養効果を得るために大学等の研究機関と共同研究を進めたが新たな効果を見出すことは難しかった。一方で、微細構造を持つ商品の量産化を考えているニーズは多く、本研究開発手法を用いて量産化を目指すパートナーを得ることができた。微細構造を持つマイクロプレートはOEM供給での量産を続けている。
・本成形技術は細胞培養容器に限らず多くの産業分野への応用、横展開を進めている。

プロジェクトの実施体制

主たる研究等実施機関 株式会社精工技研
事業管理機関 株式会社精工技研
研究等実施機関 国立大学法人東京大学
テラ株式会社

主たる研究等実施機関 企業情報

企業名 株式会社精工技研(法人番号:6040001035845)
事業内容 金型及び成形品の製造・販売
社員数 169 名
本社所在地 〒270-2214 千葉県松戸市松飛台296-1
ホームページ https://www.seikoh-giken.co.jp/
連絡先窓口 精機事業部 営業課 工藤秀一
メールアドレス sales.mold@seikoh-giken.co.jp
電話番号 047-386-3111