バイオ
きのこの大量廃棄問題を解決 有用微生物を用いた新堆肥化技術によるきのこ廃菌床堆肥の製造
岐阜県
株式会社エムスタイル
2020年4月10日更新
プロジェクトの基本情報
プロジェクト名 | 施肥後の土壌酸性化を大きく低減するきのこ廃菌床堆肥製造技術の研究開発 |
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基盤技術分野 | バイオ |
対象となる産業分野 | 医療・健康・介護、環境・エネルギー、農業、食品、化学品製造、製薬 |
産業分野でのニーズ対応 | 高機能化(新たな機能の付与・追加)、環境配慮、低コスト化 |
キーワード | 再資源化、環境浄化、有効成分産生、リグニン分解、植物傷病低減技術 |
事業化状況 | 事業化に成功 |
事業実施年度 | 平成21年度~平成25年度 |
プロジェクトの詳細
事業概要
きのこの生産量は医薬品原料等の需要増加から増産傾向にあるが、廃菌床の効率的な処理技術は未だ確立されておらず、大量に廃棄処分されている。廃菌床の堆肥化活用には、大量処理ができ、通常数年程度を要する処理時間を数ヶ月程に短縮し、かつ施用後に問題となる土壌酸性化を抑制できる技術の開発が必要である。本研究では複数の有用微生物を用いた新堆肥化技術によるコンポスト化技術を確立し、農協等を対象とした事業化を図る
開発した技術のポイント
複数の有用微生物を用いた新堆肥化技術によるコンポスト化技術を確立する
・実用化を目指した大規模生産時における腐食発酵作用の発現時に、原料塊の全ての領域で中小規模生産時と同じように酸性化物質がほとんど検出されないようにする
・腐食発酵作用を進める過程で、微生物の活性を高いまま維持するための条件把握と生産方法を確立する
(新技術)
<微生物を使った場合>
(特徴)
・繊維質等難分解性物質の分解に優れ、作用が早い有用微生物を利用
・取扱いを簡単にし、手順等を定型化することで、農家レベルで十分対応可能な易しい処理法となる
・特殊な設備、場所が不必要であり、簡易に実施可能である
転じて、微生物による有機物の分解作用から生じる有効成分・物質の産生が可能になってきている → 本研究から派生した副次技術
具体的な成果
・廃菌床堆肥の作用安定発現のための管理手法構築
‐廃菌床堆肥の作用安定発現に向け、最も腐食熟成の作用が高く生じる条件を探索
‐堆肥化過程の前・中・後期において、資材状態モニタリング装置を用いて原料塊内のリアルタイムな計測、サンプリング計測を実施し、微生物活性状態等を把握
‐原料塊内の酸素濃度推移の把握により、微生物活性状態とともに時間の推移に伴い、層状に腐食熟成が進行する等、本研究で用いた微生物特有の現象を確認
‐上記の手法を用いて作られた最終成果物は、一般の廃菌床堆肥資材と比べるとpH、EC、イオン物質等の点で土壌を酸性化させることがほとんどないことが判明
・施肥後の土壌・農作物に対する影響の分析
‐本研究資材を用いて試験圃場を製作し、実際に農作物を定植して経過を調査した結果、本資材は農作物の収量増加とその後の保存・物流等に対し好影響を与える効果が期待された
‐施用後の圃場の土壌状態を調査した結果、本究資材が農作物収穫終了後も土壌酸化抑制効果を持続していることが判明
・pHとアンモニウムイオン、亜硝酸イオンの挙動
〜約80日間観察した中では、資材生産開始直後にpH(平均値)が5.5程度である時期があったものの10日経過後からはほぼpHが中性領域を推移するようになり、以降は酸性に振れることはなかった〜
・小松菜の生育状況の比較
〜小松菜を定植し、約4週間育成した後に収穫したものを比較検討した結果、廃菌床堆肥を施用した区で収穫された小松菜は、慣行農法区に比べて、すべての項目で上回っていた〜
知財出願や広報活動等の状況
新聞:中日新聞(H21.9)
研究開発成果の利用シーン
地域で発生する有機系産廃物の再資源化により、産廃物量の低減を実現。産廃処理費として浪費していたコストを減らし、再資源化による新たなインカムを創出している。本研究技術だけでは事業化は難しかったが、発酵プロセスの見直しや、リグニン分解の副次作用により生じる有効成分が高付加価値物であったりするなど、補完研究以降に生じた新たな取り組みが、今までなかったビジネスチャンスを生み出している。佐賀県や長野県で技術供与事業を展開中。
当初は特定の有機廃棄物を微生物による発酵処理によりたい肥化するというストーリーであったが、たい肥化は日本国内においては商品自体が生み出す付加価値が非常に低廉であるため、かかる技術コストに対し得られる収益が非常に小さいボランティアモデルになりがちなきらいがあった。しかし、特定の有機物を微生物が分解処理するプロセスを緻密に制御することにより、有効成分を抽出することが極めて容易にできることが分かってきた。明言は避けるが、人体における循環器系に有効作用を及ぼすある物質においては従来の酵素抽出法などと比べても数倍から数十倍の抽出量を確保することができることから、製薬・健康食品分野からオファーを得るなど明確な方向性が出てきており、今までのたい肥化とは比較にならない利益を生じさせる可能性が出てきている。
実用化・事業化の状況
事業化状況の詳細
・H26年度の実用化を目指し、補完研究を実施中
・成果物サンプルあり
提携可能な製品・サービス内容
共同研究・共同開発、技術ライセンス、技術コンサルティング
製品・サービスのPRポイント
・製造期間短縮→農地圃場に摘要可能な状態に至るまでに最短3ヶ月程度で到達可能に(従来製法では1~2年を要した)
・環境負荷削減→本技術により野天管理でも臭気問題が一切生じなくなった(従来管理では、腐敗等による臭気発生により付帯管理設備等が必要だった)
・減容化→本技術により原材料(廃菌床)が成果物になるまでに35%以上の減容化を実現した
・従来、担子菌類にしか行えないとされてきたリグニンの分解に本技術で用いる微生物群が高い作用を発生させることが分かってきたため、リグニン保護質に守られた有機物中の各種有用成分の取り出しが可能になってきている。リグニンが分解できるからこそ、高速な土壌還元が可能になるわけであるが、その過程で産生される有効成分・物質は、従来法では非常に高いコストをかけて作られることが多いが、本技術の応用により従来法の半分以下のコストで数倍の収量を得ることが可能になる可能性があるなどの知見を得ている。
今後の実用化・事業化の見通し
農地圃場における継続的な性能試験により農家の理解獲得に努める
・試作品の性能試験を複数の協力農家で実施中。農地圃場における一定の農業従事者からの反応(土壌状態・農作物状態)の確認、技術普及のための追検証(原材料の品質が毎年一定でないため、その変遷に伴う影響等)、コストダウン手法の開発等の補完研究を継続中
・過去に廃菌床堆肥による土壌汚染の被害を受けた経験がある農家が多い地域でもあることから、継続的な状態把握に努めていく。農協の専売資材としての普及にはやや時間を要する見込み
・本技術のみでの提案・PRは今後収束させていく予定であるが、たい肥化という手法をコンサルを通じて一般市場の有志に提供し、国内に広く認知させていく事業展開を行っている。また、今後は有機物内の有効成分・物質の微生物作用に基づく産生・抽出技術に重きを置き、製薬・健康食品業界、工業界のメーカーからの引き合い・技術供与にシフトしていく予定。現在、物質精製技術を持つ企業と連携してある物質の低コスト型精製技術を確立予定である。
実用化・事業化にあたっての課題
各種セルラーゼ産生のメカニズム及び溶媒中のセルラーゼ濃度の検定、セルラーゼ純度の上げ方等に詳しい専門家とのコネクションを必要としている
事業化に向けた提携や連携の希望
ミクロフィブリルおよびセルラーゼに関して生体が及ぼす影響まで知見している専門家(大学・研究機関・企業を問わず)との相互的提携が可能な関係構築を希望したい(一方的な研究依頼ではない)
プロジェクトの実施体制
主たる研究等実施機関 | 株式会社エムスタイル |
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事業管理機関 | 公益財団法人名古屋産業科学研究所 |
研究等実施機関 | 学校法人中部大学 |
参考情報
主たる研究等実施機関 企業情報
企業名 | 株式会社エムスタイル(法人番号:6200001022926) |
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事業内容 | 農業資材開発・製造・販売、事業系環境対策(微生物技術を用いた臭気対策支援等)、微生物分解に基づく有効成分・物質産生技術の開発 |
社員数 | 3 名 |
生産拠点 | 岐阜県瑞浪市釜戸町2529 エムスタイル・バイオマスセンター |
本社所在地 | 〒507-0027 岐阜県多治見市上野町4-53 |
ホームページ | http://www.m-style.asia |
連絡先窓口 | 代表取締役 橋本真 |
メールアドレス | hashimoto@m-style.asia |
電話番号 | 0572-22-7884 |
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