研究開発された技術紹介

コバルト基合金製人工関節部品の鋳造において、従来の大気溶解プロセスを見直し、ロストワックス法による真空精密鋳造プロセスにおけるるつぼからの汚染低減のための電磁浮遊溶解法及び凝固過程での制御冷却技術の開発による熱処理効果を有する凝固組織制御技術の確立を目指す。そして、従来工程において高額HIP処理や熱処理の削減及び材料リサイクルを図り、強度、耐摩耗性に優れた金属嵌合による人工関節の製品化を目指す

人工関節の利用者層・利用者数の拡大に対応できる、製品の高度化と生産コストの削減
・鋳造部品の機械的性質の向上→0.2%耐力、引張強度、伸びおよび絞りの20%向上
・鍛造部品の製造コスト、仕上げ機械加工コストの削減→鍛造部品の製造コスト、仕上げ機械加工コストの各30%削減
・耐摩耗性の向上→メタル－プラスチック嵌合からメタル－メタル嵌合への置き替えにより、摩耗速度を1/60に
・人工関節部品のリサイクルシステム→鋳造返り材、鍛造端材、加工残材の90%回収および100%再利用
・HIP処理の省略
・熱処理の簡略化・省略
・磨き(熟練技術)の自動化・高速化
・鍛造工程の省略化
・材料のリサイクル
(新技術)
＜新たな凝固組織制御技術を活用した人工関節＞
・人工関節鋳造部品の鋳造において、HIP処理や熱処理を行わなくても、鋳放しで欠陥のない、F75規格を満たす製品を製造
・人工関節鍛造部品用荒地材について、型打前工程に予備鍛造を行い、鋳造品に熱処理を追加することで必要な性能を満たす
・生産工程全体でのコスト削減のため、材料リサイクルシステムを構築

・鋳造時制御冷却法による凝固組織制御技術
‐チタンやホウ素の添加により、樹枝状晶が小さくなり、0.2%耐力および引張強度は向上するが、伸びおよび絞りには悪影響を及ぼさない
‐凝固時間は5秒程度であり、ASTM-F75(コバルト基鋳造合金)規格を満たす製品を製造することが可能。また、HIP処理や熱処理を省くことで約40%のコストダウンを実現
・鍛造部品用荒地材の鋳造凝固組織制御技術
‐上記の鋳造法によって作成される鍛造用荒地材について、型打前工程に予備鍛錬を追加、鋳造材に熱処理を追加して要求される機械的性能を得る鍛造方案を確立
‐荒地材の形状の検討によって、製造コストをトータルで最大約30%削減
・仕上げ加工法の検討
‐疑似体液中における摩擦摩耗試験を行い、電子ビームプロセスによる仕上げ加工によって耐摩耗性が損なわれないことを確認。後処理加工が可能に
・リサイクルによるコストダウン
‐鋳造工程・鍛造工程・機械加工工程から排出されるスクラップは全て回収可能
‐回収したスクラップの適切なリサイクルにより、原料費コストを最大で約30%削減
・熱交換器の操業圧力と凝固時間の関係(ハイカーボン材の場合)～28φ骨頭モデルをハイカーボン材で製造する場合、鋳放しで機械的性質を満足させるには200kPaの操業が望ましい～

現行製品より高強度・高機能かつ低コストな人工関節部品として技術を活用

・H23年度に実用化に成功、事業化間近
・サンプルの依頼に応じて有償サンプル対応が可能

・低コスト化:現状製品のコストを約30～40%削減する
・耐摩耗性向上:現状製品の約1.2倍の耐摩耗性を持つ

新製品として材料試験を実施し、H24年中の上市を目指す
・従来型の鋳造部品については、H23年4月に実用化し、川下企業への出荷も始まっている。
・新製品については川下企業へのサンプル出荷を行っており、サポイン事業終了以降、認可を受けるべく、材料試験を実施中
・更なる技術向上のため、摩耗試験を含めた補完研究を実施