第1章 下請代金法関係 3 発注

下請110番 目次

第1章 下請代金法関係
1.総論
2.見積り
3.発注
4.受領・返品・やり直し
5.支払い:減額・支払遅延・割引困難手形・有償支給材の早期決済
6.下請け事業者への要請
第2章 独占禁止法関係
第3章 民法・商法関係

第1章 下請代金法関係 3 発注

発注書面の不交付

【区分】下請代金法
【違反類型】3条

A社は、運送会社であるB社から運送を請け負っていますが、B社からは品物を積み込まないと数量、重量等が判明せず、配送ルートもわからないため、発注内容が決まらないということで、発注書面を渡してもらえません。配送し、積荷を下ろした後に、金額等の明細が記載された書面を渡されていますが、このような取り扱いでよいのでしょうか。

1 相談内容

本事例が下請代金法の適用を受けるためには、資本金基準と取引内容の要件を両方とも満たすことが必要です。

下請代金法の適用を受ける場合は、B社は、発注時に下請代金法第3条に定められた事項を記載した書面を下請事業者に交付する義務があります。
発注時に発注内容が定まらない正当な事由がある場合は、決まっている事項だけを記載した当初書面を交付し、内容が定まった後に追加して補充書面を交付すれば良いことになっていますが、品物を積み込むまで数量等が判明せず、配送ルートもわからないという状況は「発注内容が定まらない正当な事由がある場合」とは認められません。いずれにせよ、発注時に何も交付しないことは、下請代金法第3条違反に該当するおそれがあります。
「内容が定められないことにつき正当な理由がある場合」とは、取引の性質上、当初の委託時点では具体的な内容を定めることができないと客観的に認められることが必要である点に注意する必要があります。

法令の根拠
  • 下請代金法第3条第1項、同条同項但書

仮単価による発注

【区分】下請代金法
【違反類型】3条

発注時に正式な単価が決められない場合は、仮単価等正式な単価でないことを明示した上で、仮単価による発注をしても差し支えないでしょうか。

発注時に発注内容が定まらない正当な事由がある場合は、決まっている事項だけを記載した当初書面を交付し、後に内容が定まった時点において補充書面を交付することは可能です。
ただし、その場合においても、当初書面には単価を決められない理由や単価が決定する予定期日等を記載する必要があります。
なお、当初書面に仮単価を記載し(仮単価であることを明示した上で)、後に補充書面により正式単価を示すことも可能です。

単価が決定できるにもかかわらず決定しない場合や、下請代金の額として「算定方法」を記載できる場合には、下請代金の額が決められないことにつき「正当な事由がある」とはいえない点注意して下さい。

法令の根拠
  • 下請代金法第3条第1項、同条同項但書

電子発注の要請

【区分】下請代金法
【違反類型】3条

A社(資本金1千万円)は、B社(資本金2億円)から機械部品の製造を受注しています。従来、B社は、書面による発注を行っていましたが、発注の合理化を理由にパソコンによる電子受発注に切り替えると通知してきました。
A社には、パソコンを扱える者がいないことから、従来どおり書面による方法をお願いしたいと伝えましたが、パソコンによる方法でないと取引をしないといってきました。どのように対処したらよいでしょうか。

本事例は親事業者・下請事業者の両者が資本金基準を満たしており、下請代金法が適用される「製造委託」と考えられます。
下請代金法では、親事業者は、発注時に発注書面を交付しなければならないということを定めていますが、書面に代えて電子発注を行うこともできます。ただし、下請事業者の承諾が必要であり、無理に強制したり、従わないことを理由に不利益を課すことは問題があります。使用する電磁的方法の種類(電子メール等〕と内容(ワード等)を下請事業者に示した上で、書面又は電磁的方法による承諾を得ることが必要とされています。
また、承諾後であっても使い勝手が悪い等の理由から、下請事業者から書面に戻すよう要望があった場合は、親事業者は、もとの方法に戻さなければいけません。

法令の根拠
  • 下請代金法第3条第2項

ソフトウェアの受領拒否

【区分】下請代金法
【違反類型】受領拒否

A社(資本金1億円)はソフトウェアの開発会社ですが、自動車をデザインするためのソフト開発の一部をB社(資本金1千億円の自動車メーカー)から受託しています。2年前にB社から受託したソフトを本年4月に完成させ、B社に納品したところ、内容は満たしているが、社内方針が変わったとの理由で採用をしないと通知がきました。どうしたらよいのでしょうか。

このソフトウェアは、自動車に内蔵されるものではないので、B社はソフトウェアの提供を業としているとはいえません。
しかし、B社は自ら同種のソフトウェアの開発を業として行っているのであれば、下請代金法の資本金基準を満たしているので、自家使用する情報成果物作成委託に該当する取引と考えられます。
契約どおりに成果物が完成しているにかかわらず、B社の社内方針変更というA社の都合によらない理由で採用しないことは、「不当な受領拒否」に該当するおそれがあります。

また、下請代金法の適用を受けない取引であっても、一方的な契約解除に対して、債務不履行に基づく損害賠償請求を行うことができる可能性があります。

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