第1章 下請代金法関係 2 見積り
下請110番 目次
第1章 下請代金法関係
1.総論
- 下請かけこみ寺の相談業務について
- 下請事業者にとって下請代金法を学ぶ意義
- 下請代金法が適用される取引
- 下請代金法が適用される製造委託
- 下請代金法が適用される修理委託
- 下請代金法が適用される情報成果物作成委託
- 下請代金法が適用される役務提供委託
- 下請代金法違反の疑いがある場合の対応
- 下請代金法の適用除外の行為
- 下請取引適正化のためのガイドライン
- 下請取引適正化の取り組み
- 商社介在の時の親事業者
- システム開発の人材派遣
- トンネル会社の利用
2.見積り
3.発注
4.受領・返品・やり直し
- 一方的な納期設定による受領拒否
- カタログからの抹消による損害
- 不当なやり直し
- 変更指示による部品の不具合の発生
- 受入検査
- 不当な給付内容の変更
- 発注取消
- 不当な設計変更
- 見積にない追加作業
- 瑕疵担保期間を越えるやり直し
- 瑕疵担保
5.支払い:減額・支払遅延・割引困難手形・有償支給材の早期決済
- 検査後の支払
- 不当な値引要求
- 代金回収
- 代金未払
- 継続役務の支払
- 設計料の支払遅延
- 金型代の支払
- 瑕疵による支払い留保
- やり直しと同時の変更依頼
- 支払日の繰り延べ
- 値引要請
- 手数料名目による減額
- 代金の減額
- 情報成果物の値引
- 修理代からの手数料の控除
- 手形払から現金払への変更
- ソフトウェアの開発代金
- 一定割合の損害負担
- 5ヶ月手形の交付
- 160日手形の交付
6.下請け事業者への要請
第2章 独占禁止法関係
第1章 下請代金法関係 2 見積り
一定率の値下要請
【区分】下請代金法
【違反類型】買いたたき
A社(資本金1,000万円)は、B社(資本金1億円)が製造するペットボトルに印刷加工する仕事を受託し、長年継続的に行っています。今回、B社からの15%の単価の引き下げに対して、A社は7%であれば対応できると提案したものの、15%下げなければ仕事を引き上げると言われ困っています。
1 相談内容
A社とB社の取引は、下請代金法の資本金基準を満たしており、「製造委託」に該当することから、下請代金法が適用される取引と考えられます。
本事例では、B社が単価の引き下げが一方的に決めようとしていることが下請代金法の「買いたたき」に該当するかどうかが問題となります。
一般的に、「買いたたき」に該当するか否かは、下請代金の額の決定にあたり、下請業者と十分な協議が行われたかどうかなどの対価の決定方法や通常支払われる対価との乖離状況などを総合的に判断することになります。
法令の根拠
- 下請代金法第4条第1項第5号
大幅な値下要請
【区分】下請代金法
【違反類型】買いたたき
A社(資本金50万円)は、タッチパネルのメーカーB社から、部品を支給され組立てのみを請け負っています。注文書はもらっていません。
B社の資本金は分かりませんが、ある大手の電機メーカーの100%子会社で、資本金は1、000万円を超えています。
最近、加工費を今までの半分にすると言われ困っています。どうしたらいいのでしょうか。
A社とB社の取引は、B社の資本金額を確認して、1,000万円を超えている場合は下請代金法の資本金基準を満たすこととなり、「製造委託」に該当することから、下請代金法が適用される取引と考えられます。
なお、子会社の資本金が1,000万円以下であっても、電機メーカーが子会社を介して、A社と取引を行っていると認められる場合は、子会社等が親事業者と見なされ、本法が適用されます。
相談によれば、発注時に書面が出されていないことから、3条書面の不交付に該当し、また、現行加工賃を半分にするという引き下げ要求が、「買いたたき」に該当するかどうかが問題となります。
一般的に、「買いたたき」に該当するか否かは、下請代金の額の決定にあたり、下請業者と十分な協議が行われたかどうかなどの対価の決定方法や通常支払われる対価との乖離状況などを総合的に判断することになります。
法令の根拠
- 下請代金法第3条、第4条第1項第5号
下請代金法第3条、第4条第1項第5号
【区分】下請代金法
【違反類型】買いたたき
鋳造業であるA社(資本金3億円)は、自動車メーカーB社(資本金1千億円)からエンジン部品の製造委託を受けていますが、原材料が高騰したため、値上げの交渉を行いましたが、何度か協議したものの、折り合いがつかず、B社からどうしても値上げするというのであれば、発注を取りやめると言われました。B社の対応に問題はないのでしょうか。
A社とB社の取引は、下請代金法の資本金基準を満たしており、「製造委託」に該当することから、下請代金法が適用される取引と考えられます。
一般的に、「買いたたき」に該当するか否かは、下請代金の額の決定にあたり、下請業者と十分な協議が行われたかどうかなどの対価の決定方法や通常支払われる対価との乖離状況などを総合的に判断することになります。
契約を誰と結ぶかは、最終的には発注側の裁量に委ねられますが、相談者としては、取引を引き続き継続したいという意志や、原材料の高騰分を転嫁できなかった場合、今後の生産活動に支障を来すなどの窮状を訴え、発注側と十分な意思疎通を図ることが大切であると考えます。
法令の根拠
- 下請代金法第4条第1項第5号
単価値上要請
【区分】下請代金法
【違反類型】受領拒否・買いたたき・不当な給付内容の変更
A社(資本金1億円)は、B社(資本金100億円)から電子部品の基板の組立てを行う仕事を請け負っています。材料はB社から支給されるのではなく、A社が商社に注文して仕入れています。今年になって単価の値上げの話をしたら、それから注文がストップして困っています。
B社に材料を引き取ってくれるよう申し入れていますが、担当が変わったということで相手にしてくれません。
A社とB社の取引は、下請代金法の資本金基準を満たしており、「製造委託」に該当することから、下請代金法が適用される取引と考えられます。本件では、発注書面の内容を確認することが必要です。
一般的に、「買いたたき」に該当するか否かは、下請代金の額の決定にあたり、下請業者と十分な協議が行われたかどうかなどの対価の決定方法や通常支払われる対価との乖離状況などを総合的に判断することになります。
A社からの値上げ要請に対してB社が発注停止を行ったものですが、既に発注していたものについて、発注書面に記載されている契約内容をA社の責めに帰すべき理由がないにもかかわらず、取消した場合は、「不当な給付内容の変更」に該当するおそれがあります。また、既に発注した製品を下請事業者が納入した場合に、親事業者は下請事業者の責任がないのに受領を拒むと「受領拒否」に該当するおそれがあります。
さらに、契約上、納期が予め材料を仕入れておくことを前提に設定され、かつ、当該材料が他に転売や活用ができない特殊なものである場合は、B社に対して引き取りを求めたり、損害賠償請求を行うことも考えられます。
法令の根拠
- 下請代金法第4条第1項第1号、第5号、同条第2項第4号
運送業者の役務提供委託
【区分】下請代金法
【違反類型】買いたたき
運送業者A社(資本金500万円)は、運送業者B社(資本金1億円)から商品の配送を受託していますが、従来1日1便でしたが、今後は1日3便に増やすとの要請を受けました。A社は、従前の代金では対応できないことから、B社に対して、輸送費、人員の増加が必要であるとして、新たに見積書を提出しましたが、A社が求めた値上額の10パーセントほどしか値上げを認めてくれません。下請代金法に違反しないのですか。
A社とB社の取引は、下請代金法の資本金基準を満たしており、「役務提供委託」に該当することから、下請代金法が適用される取引と考えられます。
本事例では、下請代金法4条1項5号に定める「買いたたき」に該当するかどうかが問題になります。
一般的に、「買いたたき」に該当するか否かは、下請代金の額の決定にあたり、下請業者と十分な協議が行われたかどうかなどの対価の決定方法や通常支払われる対価との乖離状況などを総合的に判断することになります。
B社は、A社と下請代金の額の決定にあたり、十分な協議が行われず、かつA社が見積書で提示した増加額の10パーセントしか認めなかったということですが、それが1回の配送から3回の配送に変更になった場合の対価として著しく低い額であったと判断される場合は、「買いたたき」に該当するおそれがあるということになります。
法令の根拠
- 下請代金法第4条第1項第5号
大幅な数量の減少
【区分】下請代金法
【違反類型】買いたたき・不当な給付内容の変更
A社(資本金1億円)は、B社(資本金1千億円)から電子部品の製造を受託しています。新製品向けの部品として10万個の発注を受け、A社は、10万個分の材料を調達しましたが、1万個を納品した時点で、他の部品の瑕疵が発見され、結果的にB社は、新製品の製造を断念しました。このため、A社は、発注の取り消しを受けてしまい、B社は、9万個の半数の材料をA社の仕入れ価格で引き取ったものの、当初10万個を前提に見積もった単価でしか支払ってくれませんでした。9万個の残り半数の材料代と、10万個を前提とした単価と1万個分しか発注しなかったときの単価との差額を支払ってもらうことはできませんか。
A社とB社の取引は、下請代金法の資本金基準を満たしており、「製造委託」に該当することから、下請代金法が適用される取引と考えられます。
相談内容からは、本件発注部品と他の部品の瑕疵の関係が明らかではありませんが、10万個の発注に関してA社に帰すべき責めがないにもかかわらず、1万個に削減されているのであれば、「不当な給付内容の変更」に該当するおそれがあります。
さらに、「買いたたき」も問題となります。買いたたきは、本来値決めの時点で問題となるものですが、本事例では、値決め後の事情により価格を算定した際の事情に大きな変動が生じたケースです。このような場合には、再協議を行うべきであり、再協議を行わず、当初の単価を押しつけることは「買いたたき」に該当するおそれがあります。
法令の根拠
- 下請代金法第4条第2項第4号、第4条第1項第5号