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顧客のワークに合わせて開発するオーダーメイドで、ユーザーの悩み、課題を刃物で貢献する企業戦略に基づき、超硬合⾦製曲線切断刃の抜き型及び成形加⼯を開発

株式会社ファインテック 管理部⻑兼技術開発部副部⻑    ⼭内克彦⽒

超硬材刃物にターゲットを置いた企業戦略に沿って、サポイン事業に採択され目標達成

研究開発の経緯、応募のきっかけをご説明ください。

過去に富⼠ダイス様のサポイン事業にアドバイザーとして参画した際に、社⻑が是⾮弊社としても取り組みたいとの意向を持ち、平成22年に「⾼機能ガラス代替樹脂材料の切断」でサポイン事業に取り組んだ。タッチパネルの量産時期と⼀致し、今でも継続している。この当時は直線の切断が多く、フィルムも柔らかいものであった。フィルムメーカーから、「硬い樹脂⽤の刃もできないか!」とのリクエストがあり、平成26年に九州産業技術センター様を事業管理法⼈にして、九州主体でチームを組み採択された。タッチパネルは、さらに⾼硬度化、薄膜、軽量化が望まれ、新世代樹脂複合板材(多層構造品)の開発が進んでいる。
経営環境では、電⼦部品が中⼼のため、リーマンショックで売り上げが⼤幅に減少した時期もあり、企業戦略⾒直しを⾏った。2009年に、当社では、鋼製の刃物は競争が激しいことから、トップダウンで、特に超硬材の刃物にターゲットを置き、市場開拓していく産業⽤刃物会社になることを宣⾔した。常にワークに最適な刃先形状を作り込むことにより、⽣産現場に切断の⾰命を起こし社会に貢献する戦略を⽴てた。

技術的な課題のポイントについてご説明ください。

直線切断から曲線切断へと技術のハードルが⾼くなり砥⽯加⼯の番⼿(ダイヤモンド粒⼦の⼤きさ)を⼀般的な2000番から20000番へと上げて加⼯できることを確認した。しかしながら、ダイヤモンド砥⽯が⼩さいと⽬詰まりする。これを除くため、インラインドレッシング研削(装置)に着⽬した。さらにもっと軟らかく当てられる砥⽯も必要との考えから、軟性砥⽯の開発も⾏い、曲線刃において刃先を尖らせる研究を進める。刃先先端R100nmの形状を超硬粒⼦径500nmの素材に削り込み、離脱、デコボコになることを防いだ。

絶対に必要な技術を保有する機関で構成される研究開発体制による研究開発計画・デザイン

研究開発体制構築に⾄る経緯をお話し下さい。

インラインドレッシング研削は⾃社で技術動向調査を⾏い、探し出してきた。理研にも相談に⾏き、ノウハウを聞いた。⾃社でできない技術を持っている機関とチームを構成する事が絶対に必要だと考え参画してもらった。
⻑崎⼤学機械⼯学科はチッピング検出を担当してもらった。刃の⽋損、⽋落があると切断⾯にダメージをもたらす。画像解析で処理して、顕微鏡⽬視に代わる⽅法を開発した。刃⻑200mmでの顕微鏡⽬視検査は20〜30分かかり、⼈の負荷も⼤きい。

研究開発の加速に繋がった⼯夫があればお話し下さい。

もともとなじみがあった2次元切削理論による解析を⾏い、結果の裏付けを⾏った。アカデミアであまり取り組まれていない。基本とする切断の理論が、未だ確定していない。研究者も少ない分野であったことから、⾃社で進めた。そこを押えれば、⾃社の強みになると考えた。九⼯⼤と有限要素法によるシミュレーションを開始している。

インラインドレッシング加⼯による研削⾯の検証

競合技術と比較して優れた生産性をもたらす刃物切断技術

競合技術との⽐較についてご説明ください。

レーザー加⼯があるが、⽣産性が全然異なり、加⼯に時間がかかる。新素材を開発するメーカーは、軟らかい樹脂では鉄の枠型で切断したが、硬い樹脂になって、透明度が上がり、加⼯が難しくなってきている。⼤量に⼀度の加⼯、例えば5〜6⾯抜く加⼯では、レーザーでは時間がかかる。機器も1億程度かかる。タッチパネルの抜型販売価格は数⼗万〜数百万円前後であり、市場性も認められる。レーザー加⼯を⽤いると歪を⽣じ、切断⾯近くの透明性を損ねる。またルーター加⼯では切りくずが多量に発⽣する。刃物切断では、切断したまま、ゴミ、粉じんの発⽣もなく、組⽴⼯程へスムースに⼊ることができる。フィルムが改良され、良いものができてきたが、フィルムメーカーは加⼯⽅法をユーザーに説明する必要があり、加⼯法がないと、売ることができない。
スマートフォンをはじめ、多層配線、曲線形状が増えている。曲線で抜く技術が要望される。導向板等の需要は増えてくる。タッチパネルに組み込むために、光学透明粘着シートが新世代樹脂複合板材料に積層されるが、曲線成形加⼯時には粘着剤が⾮常に軟質なために、積層間での剥離や粘着剤の塑性流動によるシワ発⽣の問題がある。クラックやシワがあると、屈折率が変わる等、透明性が損なわれ光学特性に問題が⽣ずる。

開発技術を核とした事業展開についてお聞かせください。

今回開発した⼀体型抜き型

電⼦回路の⻑寿命化が進む中、セラミック基板が出てきているが、焼結前セラミックシートの切断もできる超硬製刃物も製作している。
海外の技術では、超硬材に適⽤できるか不明であるが、海外の⼯業試験⽤スライス⽤刃物も鋭利に作られている。それを凌駕しようと研究している。総合的には、⽇本のレベルが⾼く、特に0.1μm以下の超硬微粒⼦素材の⽣産や刃先成形⽤⼯作機械は⽇本で強いメーカーができてきている。フィルム以外では、リチウムイオン電池のシート、LIB材料評価研究センターにテストカットシートを供給、試験・テストを実施するとともに、関連企業とは協議を継続している。
医療分野の製造販売権を得ている。鋭利な刃物。低侵襲腹腔鏡、九⼤と共同研究中である。

技術のPR⽅法についてお聞かせください。

年3〜4回展⽰会に出展。展⽰会では毎回300〜400社が⽴ち寄られる。訪問者の6割は研究者。⾼機能フィルム展等の展⽰会では、⽑髪の縦切(9分割)や⽣⽶の0.1m微細切断の事例紹介している。

知的財産権への対応についてお聞かせください。

知財権については、ノウハウとしてとどめ公開しない⽅が良いと考えている。

サポイン事業を効果的に利用する上でのメッセージ、アドバイス

最後に、今後サポイン事業に応募を検討される⽅や、現在実施されている⽅にメッセージをお願いいたします。

初年度下期から開始で、装置の導⼊まで3,4か⽉かかり、動作確認までが精⼀杯であった。計画通りにするため、類似の装置でデータ取りを⾏った。
サポイン事業では技術的信頼が得られた。TV、新聞にも紹介された。電⼦部品分野の⽇系企業の東南アジアの⼯場関係者には、名前が浸透してきたことを実感している。韓国や東南アジアの展⽰会への出品要請も来ている。
中間報告会でアドバイス、進捗状況を説明し、意⾒を聞く、アイデアを出してもらう。⾃社で技術動向をつかみ、皆で対策をとっていくことで若⼿も育ち、⾃社のレベルも上げていくことができる。

研究開発技術情報
プロジェクト名:
タッチパネル用新世代樹脂複合板材の曲線成形切断加工技術の開発
事業実施年度:
平成26年度~平成27年度
研究開発の目的:
超硬合⾦製曲線切断刃の抜き型及び成形加⼯技術を開発し洗浄⼯程等、⼆次加⼯が不要且現状の1/10以下の切断時間で複合板材の曲線成形打抜き加⼯を実現し⽣産性を⾶躍的に向上させ、⽇本が得意とする⾼機能フィルム産業の爆発的成⻑を助⻑する。
事業化の状況:
タッチパネル⽤の多層フィルムや液晶表⽰体のバックライト⽤の切断刃物を開発し切断サンプル出荷を⾏った。引続き、刃先先端R10nm以下をめざし継続的な開発を⾏っていく。多層フィルムである偏光板や有機ELへの切断加⼯に取り組み、数社に切断サンプル提出済。