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高感度微少酸化計測技術を用いた自動車・情報家電向けエンジニアリングプラスチック材の高効率な再生材利用技術の開発

東北電子産業株式会社(宮城県)
代表取締役社長 山田理恵
利府事業所所長 熊谷俊彦
課長 齋藤武

フォトン(光子)レベルの発光を捉える微弱発光検出装置

会社紹介及び製品紹介

本社外観

 東北電子産業株式会社は1968年に創立。
自社製品である、レーザ制御装置や極微弱発光検出装置の製造、販売及び分析装置・計測装置の販売代理店業務を行っている。
これまで同社の企業理念である『開発なくして成長なし』を体現すべく、産学官研究をはじめとした、研究開発型企業として様々な事業を展開してきた。
その中で今回サポイン事業にて開発した極微弱発光検出装置(ケミルミネッセンスアナライザー)は、物質からの発光をフォトン(光子)のレベル(ホタルの光の1万分の1程度の光)で高感度に検出する装置となっており、さらに既存装置において対応できなかった高温測定(350℃)や温度制御が可能となった。
主な測定分野として
①樹脂、塗料、ゴムの早期劣化評価
②血液の過酸化物測定、生体ストレスの検出
③各種食品の早期劣化評価
など幅広い分野に応用可能な装置として、現在までに自動車、情報家電分野を中心に国内で約400台、海外で約50台販売している。 

研究開発の背景

 自動車や情報家電分野において「環境負荷低減」と「材料費抑制」は台頭する海外メーカーとの競争を勝ち抜くための必須条件となっている。その中で、生産の効率化だけではない、更なるコスト削減のため、廃プラスチックの再利用、すなわち再生材の活用が不可欠である。再生材価格は新材の3分の1以下であることから活用することでコストの低減が見込まれ、多くのメーカーは新材と再生材を混合している。この混合比率における再生材の使用を数%でも上げたいのが各メーカーの実情である。
 再生材混入に伴う物性評価を行うにあたっては、再生材料中の安定剤等がリサイクル中にどのような劣化特性や化学反応を発現するのかを予測評価することが重要である。再生材は、主に熱履歴等によって酸化劣化が進むが、微小酸化度の測定は一般的には行われていない。これら化学試験は、操作が煩雑で時間がかかるほか、酸化度測定に関しては、測定装置・手法が確立されておらず、化学的特性の評価は殆ど行われていないのが開発時の状況であった。
 そこで、再生材の劣化状態を簡便に定量化し、再生材混合比率を決定できる高効率な再生材利用技術確立し、再生材の酸化劣化度を簡便に定量評価することで、再生材使用率を高め、コスト低減と産業廃棄物の低減に結び付け、各メーカーのニーズに答えるものである。

極微弱発光検出装置
装置により捉えられた微弱発光

開発のきっかけとポイント

 プラスチックにもポリプロピレン、ポリエチレン、PET、ポリカーボネートなど、様々な材料があり、測定装置には材料ごとにデータベースが必要となる。同社は装置メーカーとしてデータベースを作成し、販売ツールとしての活用を視野に発光挙動を分析し、プラスチック材料におけるデータベース作成を目的にサポイン事業に取り組んだ。
 同時に、材料ごとに最適な測定温度があり、既存装置においての測定可能温度は180℃までだが、最近はエンジニアリングプラスチックという耐熱性の高い材料が開発され、高温(350℃付近)でなければ測定できないことから、350℃まで測定できる試料室開発が必須となり、同装置の開発を検討するに至った。

サポイン事業の共同体による効果

 共同体メンバーに、産業技術総合研究所、宮城県産業技術総合センター、アドバイザーとして山形県工業技術センター、及び川下企業の担当者にも参画いただき、研究推進委員会をはじめ、密に連携を取りながら、研究を進めることができた。
 また、自社で行っている発光法とは異なる、従来の測定方法を用いた企業と共同研究をすることにより、発光法と従来の方法との比較データを得ることができ、研究の進捗に大きな効果をもたらした。

サポイン事業による成果及び今後の展開

 事業終了後、研究成果を学会発表や専門誌への掲載を経て、各種表彰を受賞するなど、成果が現れてきている。また、出展した展示会等で川下企業から高い評価を得ており、今後、製品の更なる展開が期待される。

研究開発チーム
プラスチック成形加工学会 第1回技術進歩賞

主な受賞歴
2012年 第4回ものづくり日本大賞 東北経済産業局長賞
2014年 プラスチック成形加工学会 第1回技術進歩賞

紹介動画