製造環境
ロボットアームによる遠隔操作型次世代グローブボックスの開発
茨城県
株式会社ヨシダ
2026年2月9日更新
プロジェクトの基本情報
| プロジェクト名 | ロボットアームによる遠隔操作型次世代グローブボックスの開発 |
|---|---|
| 基盤技術分野 | 製造環境 |
| 対象となる産業分野 | 医療・健康・介護、環境・エネルギー、航空・宇宙、ロボット |
| 産業分野でのニーズ対応 | 高機能化(新たな機能の付与・追加) |
| キーワード | 原子力、廃炉、医薬品、遠隔操作、隔離 |
| 事業化状況 | 実用化に成功し事業化間近 |
| 事業実施年度 | 令和4年度~令和6年度 |
プロジェクトの詳細
事業概要
グローブボックスは、分析対象物を金属製の容器内に物理的に隔離しグローブを介して分析・研究するための機器であり、特に負圧型グローブボックスは放射性物質や化学物質、細菌・ウィルスなどの人体にとって有害物質を扱う場合が多い。本開発では、グローブボックスに人間の手や指の動きを忠実に模倣でき、特別な訓練を必要としない遠隔操作ロボットと、それに最適化したグローブボックスを開発することで、安全で効率的な、これまでにない独創的な化学分析作業を達成する。この技術は、有害物質を対象とした作業だけでなく、再生医療分野や宇宙産業分野など、隔離環境が望まれる分野への応用が可能であり、数十億から数百億円の新たな市場が拓けると考えている。
開発した技術のポイント
・耐放射線性能を備えた遠隔操作ロボットアーム
-人間の動きを模倣する汎用性を持った設計
-可搬重量3kg、アクセス範囲最大D640mm×W1,300mm×H640mm
-先端繰返し位置精度±0.5mm以下を実現
・3本指腱駆動モデルエンドエフェクタ
-Φ15mm~Φ100mmの円筒把持が可能
-Φ30mm~Φ60mmの蓋を6Nm以上のトルクで開閉可能
-1N~10Nの荷重を検知する指先センサを搭載
・力フィードバック付きハプティックデバイス
-手指への5段階以上の力覚差の提示
-設置サイズ400mm×800mm以下を実現
-手ブレ、誤操作防止機能を搭載
・低遅延カメラシステム
-100ms以下の遅延(実測16.6ms以下)を実現
・遠隔操作用グローブボックス
-ロボットアームが設置可能で省スペースを実現する構造設計
具体的な成果
・ロボットアーム: 耐放射線性能を備え、人間の動きを模倣する汎用性を持った遠隔操作ロボットアームを製作し、容器内の水を想定したビーズの移し替え作業をデモンストレーションとして実施し、アドバイザーから高い評価を得た
・エンドエフェクタ: 3本指ロボットハンドを製作し、ボトルの蓋開封動作と薬さじの操作が行えることを確認した。また、重量物(3kg)の把持が行えることを確認した
・コントローラー: 卓上型コントローラーの開発を実施し、手首の回転方向の入力に関して実際の手の角度とロボットの手の回転角度が異なると、次の動作をイメージし難く、操作性が難しいが操作は可能であることが確認できた
・グローブボックス: ロボットアームを取付けることが可能なグローブボックスにすると同時に省スペースが実現可能な構造を検討し、将来的なグローブボックスの概念設計を実施した
知財出願や広報活動等の状況
東京電力ホールディングス株式会社福島第一廃炉推進カンパニーとの覚書締結により、開発に必要となる分析業務情報の提供や、開発を進める装置の操作性・耐放射線性等の現場ニーズへの適合性の確認などの協力が得られることとなった。さらに、JAXA(宇宙航空研究開発機構)が検討を行っている「きぼう」自動実験システム(GEMPAK)に関して、本開発の適合性が高いと判断され、情報提供要請(RFI)への応募を行い採択された。
研究開発成果の利用シーン
・放射性物質を扱う分析作業: 福島第一原子力発電所での燃料デブリや処理水などの試料分析において、被ばくや汚染のリスクを軽減しながら安全な分析作業が可能
・放射性医薬品製造: セラノスティクス分野で利用されるα核種の製造過程において、高放射線の試料や放射線物質がガス化した試料を扱う際の被ばくや汚染のリスク軽減
・感染症対策: コロナウィルスやエボラウイルスのような致死率が高いウィルス研究において、医療従事者の二次感染を防ぐための安全な検体サンプリングや検査調整作業
・宇宙産業分野: 国際宇宙ステーション「きぼう」自動実験システム(GEMPAK)での無人自動実験への応用
・再生医療分野: 隔離環境が望まれる細胞培養や組織工学などの作業への応用
実用化・事業化の状況
事業化状況の詳細
東京電力ホールディングス株式会社が約30年から40年掛けて廃止措置を検討しており、その内の12分野においてはグローブボックスやセルといった装置と施設が必要になると見込まれている。1施設あたり約20~30台のグローブボックスやセルが必要になると考えられ、少なくとも合計240~300基が必要とされる。株式会社ヨシダでは東京電力ホールディングス株式会社及び原子力関連の研究所へは、販売台数を令和10年以降で年間5台を目標とし、さらにメンテナンス事業やアフターサービス事業へと展開していく予定である。また、同時並行で放射性医薬品製造用グローブボックス市場への拡販も見込んでおり、既に株式会社ヨシダの取引先である放射性医薬品メーカー2社へ共有をしており、開発の完了時には視察と検討を行いたい旨を得ている。
提携可能な製品・サービス内容
設計・製作、加工・組立・処理、製品製造、試験・分析・評価、共同研究・共同開発、技術ライセンス、技術コンサルティング
製品・サービスのPRポイント
・人による操作性: 特別訓練不要で従来の手作業と同等の操作感を実現
・作業の汎用性: 既定の動作のみではなく既存器具の使用が可能
・作業の効率性: 準備に時間が必要だった従来技術に対し大幅に削減可能
・設置スペース: 大型化の傾向があった従来技術に対し省スペースを実現
・耐放射線性: 機能不全の可能性があった従来技術に対し電子部品の削減により耐性を向上
本開発による遠隔操作技術により、グローブボックス内部の放射性物質による被ばくや汚染のリスクを軽減でき、ヒトがグローブボックスの操作のために施設内に入ることが減少するため、ヒトによる施設の汚染の減少と滅菌の維持が可能になり、施設内の清浄度維持が容易になる。
今後の実用化・事業化の見通し
後の事業展開は、放射線物質用グローブボックスにより厳しい安全基準に合格する技術と安全性確立と売上を達成することで、その際に生まれた要素技術を放射性医薬品製造用グローブボックスや感染症対策用グローブボックスへと転用し、さらに最終的には再生医療分野や宇宙分野へ技術展開を行う予定である。世界の放射性医薬品分野の市場は年率約9.0%で成長し、2026年には75億米ドルに達すると予測されており、その中でもセラノスティクス分野は特に個別化医療を実現する手法の一つとして、さらに高い10.4%以上の成長率となっている。株式会社ヨシダでは販売後5年後を目標に医薬品の製造管理及び品質管理に関する基準であるGMP(Good Manufacturing Practice)を取得することで、医療用グローブボックス装置にとどまらず、放射性医薬品の製造施設までの展開が可能と考えている。
実用化・事業化にあたっての課題
現在のモックアップ試験を経て、修正が必要と思われる項目が摘出されており、今後の開発ステージで修正を実施する予定である。具体的な課題として、ロボットアームの重量が目標値50kg以下に対して概ね達成レベル、先端繰返し位置精度が目標値±0.5mm以下に対して概ね達成レベルとなっている。エンドエフェクタについてはロボットハンド自体の重量が目標3kg以下に対して概ね達成レベルとなっている。コントローラーについては手指への5段階以上の力覚差の提示と手ブレ・誤操作防止機能の搭載が概ね達成レベルとなっている。また、原子力分野において厳しい安全基準に合格する技術を確立することが高い信頼性を得ることにつながるため、その実績を持って他分野への転用を早期に実現する必要がある。
プロジェクトの実施体制
| 主たる研究等実施機関 | 株式会社ヨシダ |
|---|---|
| 事業管理機関 | 株式会社ひたちなかテクノセンター |
| 研究等実施機関 | 株式会社ヨシダ 国立大学法人 福島大学 |
| アドバイザー | 東京電力ホールディングス株式会社 福島第一廃炉推進カンパニー |
主たる研究等実施機関 企業情報
| 企業名 | 株式会社ヨシダ(法人番号:1050001002386) |
|---|---|
| 事業内容 | 金属加工業 |
| 社員数 | 78 名 |
| 本社所在地 | 〒311-1135 茨城県水戸市六反田町1279-1 |
| ホームページ | https://www.ysd-k.co.jp/ja |
| 連絡先窓口 | 企業支援部 林 智章 |
| メールアドレス | hayashi@htc.co.jp |
| 電話番号 | 029-264-2200 |
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