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情報処理

バイタルデータを活用した出荷豚・病豚検知選別用スマートグラス/スマートフォンアプリの開発

東京都

株式会社Eco-Pork

2025年1月23日更新

プロジェクトの基本情報

プロジェクト名 バイタルデータを活用した出荷豚・病豚検知選別用スマートグラス/スマートフォンアプリの開発
基盤技術分野 情報処理
対象となる産業分野 農業
産業分野でのニーズ対応 高機能化(新たな機能の付与・追加)、高効率化(同じ生産量に対するリソースの削減)、高効率化(人件費削減)、高効率化(使用機器削減)
キーワード 養豚、エッジデバイス、AI、体重推計、疾病兆候検知
事業化状況 研究実施中
事業実施年度 令和4年度~令和5年度

プロジェクトの詳細

事業概要

本事業は、スマートフォンやスマートグラスを活用し、自然な豚飼養状態のまま・個体単体で直立不動化させることなく、同時に複数頭肥育豚の立体画像データを飼養者の目線・角度から取得し、体重及び体調を推計する要素技術の開発である。体重推計時に肥育豚の側面から捉えた身体の特徴点である体長・体幅・腹部のふくらみ等を人工知能が解析するプロセスを経ることにより、体重推計だけでなく腹部の凹み、呼吸数や呼吸方法の変化・削痩など、様々な健康異常・疾病兆候の迅速な検知にも活用することにより、年間100万頭の飼養中肥育豚死亡の削減を同時に実現できる。これにより、農業総産出額6,000億円である国内養豚業の生産性向上及び付加価値向上に大きく貢献する。

開発した技術のポイント

・スマートフォンやスマートグラスを使用して養豚場の豚を撮影する場合、画像内には複数の豚が重なり合った状態で存在する。このため、豚の重なり状態での個体識別、豚位置による個体毎の外乱要素(光量・高さ・最大距離5m)、欠損領域等を考慮した上で豚の生体特徴情報を取得し全身推計を行う技術を開発した。
・実際の現場で活用されるためには、AIによる十分な推計精度を維持した上での高速処理が必要となるため、エッジデバイス上での処理を可能にする技術を開発した。
・肥育豚の疾病兆候の迅速検知については新規性が高く競合技術の前例がなかったので、豚の生体情報を取得することからスタートした。健康状態を判別するための重点解析部位・画像変化・要因の整理を行い、実際に農場において画像・センサデータの収集を実施した。そして、AIアルゴリズムの開発・実装を行い、AIモデルの試作と検証を実施した。

具体的な成果

・体重推計技術の成果
-スマートフォン・スマートグラスを使用した全身体重推計技術を確立した
-豚との距離・角度を補正する技術を開発した
-AIによる豚個体の検出、輪郭把握、生体特徴点検出技術を実装した
-床面推定技術について特許出願を行い、95パーセント超の成功率を達成した
・健康状態推計AI技術の成果
-健康状態判別のための特徴点整理と基本アルゴリズムの検証を完了した
-異常行動及び活動量を検出するAIモデルを作成し、評価を実施した
-活動量検知技術について特許出願を行い、特許査定を取得した
・その他の成果
-スマートグラスを使用した推計システムを構築し、農場での実地検証を行った
-教師データの取得及びデータセット作成を完了した
-ハードウェアシステムのプロトタイプ検証機の開発を完了した

知財出願や広報活動等の状況

・特許第6781440号: 「畜産情報管理システム、畜産情報管理サーバー、畜産情報管理方法、及び畜産情報管理プログラム」 
登録日: 令和2年10月20日

研究開発成果の利用シーン

主な利用シーンとして、出荷時の体重測定作業の効率化が挙げられる。従来の豚衡機使用時の問題点を解決し、豚房内で自然な状態のまま体重推定が可能となる。また、日々の健康状態チェックの効率化・精度向上も期待される。AIによる異常行動や活動量の自動検知により、経験の有無に関わらず正確かつ効率的な健康管理が実現する。これにより、病気の早期発見と迅速な対応が可能となり、豚の死亡数減少と経営の安定化につながる。さらに、データの記録・蓄積機能により、個体ごとの成長記録や健康管理の効率化も実現する。

実用化・事業化の状況

事業化状況の詳細

本研究開発プロジェクトでは、体重推計技術や健康状態推計AI技術などの要素技術開発を完了し、スマートグラスを用いたプロトタイプ検証機を作成した。重要な要素技術については特許出願を行い、一部は特許査定を得ている。プロトタイプ検証機を用いた実地検証も実施され、表示遅延や個体識別の難しさ、推計精度のばらつきなどの課題が明らかになった。今後は、これらの課題解決に取り組み、ユーザビリティの向上や耐環境性の強化、推計精度の向上を図る予定である。さらなる実地検証や展示会出展を通じて製品のブラッシュアップを進め、実用化に向けた取り組みを継続していく方針である。

提携可能な製品・サービス内容

製品製造

製品・サービスのPRポイント

・世界初の技術として、スマートグラス/スマートフォンを用いて豚房内の豚の体重と健康状態を自然な状態で推定できる点が挙げられる。この革新的な技術は、従来の方法と比べ作業効率を大幅に向上させ、より正確なデータ取得を可能にする。
・深刻化する人手不足の解消に貢献する点が重要である。作業の自動化・効率化により、体力的負荷の高い作業や経験依存の作業を容易にし、より多くの作業者が活躍できる環境を創出する。
・的確なデータに基づいた経営判断を支援する。個体ごとの正確な体重や健康状態の把握により、出荷時期の最適化や病気の早期発見・治療が可能となり、経営の安定化に貢献する。
・現場の声を反映した製品開発を行っている。実際の農場での試験を通じて、養豚農家のニーズに合致した実用性の高い製品・サービスの提供を目指している。
・研究開発型ベンチャー企業としての将来性が挙げられる。複数の特許出願実績を持ち、今後もAI技術を活用した養豚の効率化・高度化に向けて積極的な研究開発を進めていく方針である。

今後の実用化・事業化の見通し

・今後、実用化に向けて、ユーザビリティからのシステム・ユーザインターフェースの作り込みや耐環境性を考慮したハードウェア開発、推計精度の更なる向上に取り組む予定である。
・試作したプロトタイプを活用することで、現場でのデモンストレーション・評価、展示会への出展・評価といった、課題抽出と製品仕様策定を進めていく。

実用化・事業化にあたっての課題

ユーザビリティの向上が最重要課題の一つである。具体的には、スマートグラスの表示遅延改善、複数の豚がいる状況下での個体識別の簡易化、体重推定値の安定表示が求められている。次に、耐環境性の強化が挙げられる。養豚場の過酷な環境に耐えうる耐久性、防塵性、防水性を備えた製品設計が必要である。また、バイオセキュリティ対策として、定期的な清掃・洗浄・消毒に耐える設計も重要である。また、推計精度の向上も課題である。現状の体重推計の平均誤差は7~9%程度だが、さらなる精度向上が求められる。特に、豚の重なり合いによる体表の隠蔽がある場合の推計精度向上が課題となっている。健康状態推計AIについても、より詳細な病気の診断ができるよう改善が必要である。最後に、製品化に向けたコスト削減も重要な課題である。高機能なスマートグラスは高価であるため、低価格な機器の採用や機能の絞り込みによるコストダウンが検討されている。

プロジェクトの実施体制

主たる研究等実施機関 株式会社Eco-Pork
事業管理機関 国立大学法人鹿児島大学
研究等実施機関 株式会社アオキシンテック
アドバイザー 内田・鮫島法律事務所
株式会社リバネス
リアルテックホールディングス株式会社
JA鹿児島県経済連
株式会社ジャパンファーム

主たる研究等実施機関 企業情報

企業名 株式会社Eco-Pork(法人番号:7010901041168)
事業内容 養豚経営管理ツール「Porker」および、関連するIoT機器の開発・販売
社員数 30 名
本社所在地 〒101-0054 東京都千代田区神田錦町3丁目21−7
ホームページ https://www.eco-pork.com/
連絡先窓口 事業本部 荒深慎介
メールアドレス info@eco-pork.com
電話番号 080-9945-1129