複合・新機能材料
自動車の高度自動運転化に寄与する全入射角対応な新規フレキシブル形状ミリ波吸収体
高知県
廣瀬製紙株式会社
2025年1月22日更新
プロジェクトの基本情報
プロジェクト名 | 自動車の高度自動運転化に寄与する新規フレキシブル形状ミリ波吸収体の開発 |
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基盤技術分野 | 複合・新機能材料 |
対象となる産業分野 | 医療・健康・介護、航空・宇宙、自動車、ロボット、産業機械、情報通信、スマート家電、建築物・構造物、物流・流通 |
産業分野でのニーズ対応 | 高性能化(既存機能の性能向上)、高性能化(信頼性・安全性向上) |
キーワード | ミリ波レーダー、ミリ波吸収体、全入射角、広帯域、3D加工 |
事業化状況 | 研究実施中 |
事業実施年度 | 令和3年度~令和5年度 |
プロジェクトの詳細
事業概要
本事業では、高いミリ波吸収性能を有する炭素繊維と合成繊維の薄葉不織布を申請者のもつ特異な加工技術によりヒダ状構造にプリーツ加工した後にスリット加工することで、全入射角ミリ波吸収性能と曲面への対応性を兼ね備えた全く新しいフレキシブル形状ミリ波吸収体を開発する。高さを抑えたプリーツ加工により、バンパー内の狭スペースにも設置が可能となり、ユーザーの要求仕様を満たす部材の製品化を可能とすることで業界のスタンダード品としてシェアを拡大していくことが可能となる。また、多孔質体(不織布)であるため、軽量化が重要となる自動車部品として適している。この他、理論的には122 GHz帯にも対応できる可能性を有している。なお、開発品の価格を1万円/m2としたが、これは他社にない差別化製品として顧客価値から想定した価格であり、製造原価は将来的に数百円/m2まで低減できると計算している。
開発した技術のポイント
・炭素材料の導電性不織布設計では、炭素繊維の長さや比率、混合材料の種類(ビニロン、PET)によって表面抵抗率が変化することが確認された。
・ビニロン繊維との混合では、1mm長の炭素繊維と40-50%の比率で目標とする表面抵抗率を得た。
・PET繊維との混合では、バインダー繊維量を増やすことで目標の表面抵抗率を達成できたが、固定性の向上が必要とされた。
・炭素繊維の長さを1mmと3mmで混合することにより、少ない炭素繊維量で目標の表面抵抗率を得ることが可能となり、バラツキも減少した。
・小型抄紙機を使用し、導電材料の配合量と抄紙条件を最適化し、歩留まりや均一性を向上させた。
・グラファイト粉体を使用したDPS法による導電性不織布の設計により、バラツキを減少させることができた。
・プリーツ加工とスリット加工技術を確立し、電磁波吸収特性を向上させる方法を検討した。
具体的な成果
・導電性不織布の開発
-グラファイトとビニロンを使用し、デュアルポリマー法を用いて導電性不織布を作製。表面抵抗率のバラツキは±20%以内を達成。
-炭素粉体の脱落を防ぐため、最適な結着剤の量と抄紙条件を確立し、重量変化を0.1%以下に抑えた。
・プリーツ加工技術の確立
-山高さ(≦2 mm)と折り角度(27°)を設定し、プリーツ加工による電磁波吸収特性の向上を確認。
-実車搭載を考慮したスリット加工技術を開発し、曲面に対応した設計を実現。
・長期安定性の評価
-多孔質構造は大気中および冷熱環境下で500日以上の安定性を確認。
-有機系および金属系不純物の長期安定性を確認し、吸収性能に影響がないことを確認。
・電磁波吸収特性の評価
-電界の方向により吸収性能が変化することを確認。プリーツ山高さを変更することで吸収性能の向上を実証。
-79 GHzでの電磁波減衰率が-20 dB以下を達成する品種を特定。
知財出願や広報活動等の状況
・特願2020-208144電磁波吸収体として特許出願を済ませている。
・国際出願番号:PCT/JP2021/ 37506電磁波吸収体として、アメリカ、欧州、中国に特許出願を済ませ、アメリカでは権利化(Patent No. 12144162)している。
研究開発成果の利用シーン
本事業では、高いミリ波吸収性能を有する炭素材料と合成繊維の薄葉不織布を申請者のもつ特異な加工技術によりヒダ状構造にプリーツ加工した後にスリット加工することで、全入射角ミリ波吸収性能と曲面への対応性を兼ね備えた全く新しいフレキシブル形状ミリ波吸収体であり、高さを抑えたプリーツ加工により、バンパー内の狭スペースにも設置が可能となり、ユーザーの要求仕様を満たす部材の製品化を可能とする
実用化・事業化の状況
事業化状況の詳細
自動運転だけでなく、運転支援(ADAS)やドローンなど他用途で使用されることによりミリ波レーダーの市場は順調に拡大していくと考えられる。実際に製品とする場合、性能はもとより組込む方法などを検討する必要が想定される。その為には、実際にユーザーである自動車メーカーなどから情報を入手する必要がある。元自動車メーカー社員が所属しており、その人脈を活用することで、適した製品開発を実施していく。
提携可能な製品・サービス内容
素材・部品製造、共同研究・共同開発
製品・サービスのPRポイント
・全入射角 ミリ波吸収性能が高い。(≧15dB)
・厚さ2-10 mmのため、曲面対応が可能で、貼付性がよい。
・コストが抑えられる。
今後の実用化・事業化の見通し
導電材料にカーボンブラックを利用したサンプル作製および性能データを準備し、マツダおよび他自動車メーカーへ紹介し、事業化体制の整備を行う。また、本事業の共同実施機関であるファインセラミックスセンターは国内各自動車メーカーと強いつながりがあるため、開発の適切な段階で他社への展開を行うこととする。また、本事業成果により、ニッチな市場であるミリ波吸収部材の製品開発を進め、弊社独自の加工技術で競合差別化を図り、グローバル市場でのトップシェアを目指す。
実用化・事業化にあたっての課題
・法整備などの課題も多く、自動運転レベルの高度化については、以前よりも遅くなっている。
・実際に製品にする場合は、性能はもとより、組込む方法などを検討する必要がある。
プロジェクトの実施体制
主たる研究等実施機関 | 廣瀬製紙株式会社 |
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事業管理機関 | 公益財団法人高知県産業振興センター |
研究等実施機関 | 高知県立紙産業技術センター 一般財団法人ファインセラミックスセンター |
アドバイザー | マツダ株式会社 EMC/AVC 実研グループ |
主たる研究等実施機関 企業情報
企業名 | 廣瀬製紙株式会社(法人番号:6080001007215) |
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事業内容 | 機能性繊維による工業を中心とした産業用(湿式)不織布の製造、加工並びに販売 |
社員数 | 101 名 |
本社所在地 | 〒781-1103 高知県土佐市高岡町丙529番地イ |
ホームページ | https://www.hirose-paper-mfg.co.jp/ |
連絡先窓口 | 技術・開発グループ、開発・営業チーム 明神 賢一 |
メールアドレス | k-myoujin@hirose-paper-mfg.co.jp |
電話番号 | 088-852-7771 |
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