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測定計測

化学物質の網羅検出・スクリーニングを実現するMS用着脱オプションの研究開発

兵庫県

株式会社神戸工業試験場

2025年1月27日更新

プロジェクトの基本情報

プロジェクト名 化学物質の網羅検出・スクリーニングを実現するMS用着脱オプションの研究開発
基盤技術分野 測定計測
対象となる産業分野 航空・宇宙、自動車、スマート家電、エレクトロニクス、化学品製造
産業分野でのニーズ対応 高性能化(小型化・軽量化)、高効率化(使用機器削減)、低コスト化
キーワード 分析装置、質量分析法、スクリーニング検査、RoHS、REACH
事業化状況 実用化に成功し事業化に向けて取り組み中
事業実施年度 令和3年度~令和5年度

プロジェクトの詳細

事業概要

本プロジェクトでは、市販のGC-MS装置のにアタッチメントとして装着できるIAユニットの装置開発(ハード開発)とIA/MS法の高度利用技術の開発(ソフト開発)を両輪として技術開発を展開した。
①ハード開発では、IAユニット化(市販GC-MS装置のアタッチメント化)のため、普及型と高性能型の2タイプの市販GC-MS装置に大幅な改造等を施すことなく、ユニット換装により、通常のGC-MS測定アプリケーションとIA/MS測定アプリケーションを容易に切り替え運用可能なシステムの開発を目指した。
一方、ソフト開発では、大きく2つのテーマを立てた。②一つは、従来の分子量情報によるデータ解析に加えて分子構造の情報も加味したデータ解析を可能にする手法として選択的化学分解法の研究である。③もう一つは、測定対象成分を低沸点成分に拡張する技術の研究である。本プロジェクトで開発するダイレクトインレットプローブ(DIP)型のIAユニットの測定対象範囲を広げるための研究である。

開発した技術のポイント

①市販のGC-MS装置用アタッチメントとしてのDIP-IAユニット
‐ 市販GC-MS装置に接続可能なDIP-IAユニットの開発に成功
- ユーザーは1台のGC-MS装置で、標準的なGC-MS測定アプリケーションとDIP-IA/MS測定アプリケーションを容易に切替えて利用できる
- ユニット開発では小型化だけでなく、操作性と保守性も重視、ユーザーの負担を軽減する設計改良を実施
- RoHS指令やREACH規則などの規制対象成分のスクリーニング検査や、極性・非極性に関係なくガス化した有機化合物を網羅的に検出可能
‐ 希少資源のヘリウムガスを必要とせず、窒素もしくは乾燥空気を使用できるのも利点の一つ
②DIP-IAユニットの高度利用技術
- 測定対象成分を低沸点側に拡張する測定手法を構築
- 従来の分子量情報によるデータ解析に加えて分子構造の情報も加味したデータ解析を可能にする手法の研究の推進

具体的な成果

①市販のGC-MS装置用アタッチメントとしてのDIP-IAユニットの開発
-下記の2種の市販GC-MS装置に対応
[対応機種] JMS-Q1600GC, Q1500GC,(1機種:JMS-T2000GC向けは継続開発中)
-GC-MS法とDIP-IA/MS法を目的に応じて使い分ける際のユニット換装作業は 10分程度を実現
-従来のDIP-IA/MS専用機と同等の性能を確保し、RoHS指令やREACH規則などの規制対象成分のスクリーニング検査に利用可能
-DIP-IAユニットの装置価格は税抜700万円程度となり、従来のDIP-IA/MS専用機に比べて装置導入のコスト的ハードルを大きく低減
②DIP-IAユニットの高度利用技術
-新開発のピンホール型封止セルにより、従来手法に比べ、沸点レベルで100℃程度低い成分も測定対象に拡大
 (沸点150°C程度以上の有機化合物の定性・定量分析に対応可能)
-選択的化学分解手法により、分子量情報だけでなく構造情報も使った成分同定性能の向上

DIP-IAユニット外観図
知財出願や広報活動等の状況

研究開発成果の確立・普及における課題は、市販製品が長く途絶えているIA/MS法の認知度の低下である(技術が一旦廃れたマイナスイメージもある模様)。2024年度は正式製品販売に向けた助走期間として、国内最大規模の分析・科学機器の展示会の日本電子ブース(アドバイザー企業であり、質量分析装置メーカー)で開発装置の実機展示を行った。このほか、2024年度は学会等・6件(うち2件は国際会議)、分析機器展示会1件などで、装置・技術に紹介や顧客開拓に向けた活動を進めている。

研究開発成果の利用シーン

化学物質のスクリーニング分析に適しており、特にRoHS規制対応する製品の品質管理に役立つ。さらに、製品回収リスクの軽減やサプライチェーン管理において、簡便で迅速なスクリーニング分析が求められる場面で広く利用されることが期待されている。特に、製造業の品質管理やR&D部門での用途が見込まれている。

実用化・事業化の状況

事業化状況の詳細

発装置のうちDIP-IA(QMS)ユニットは2024年度・春からの試験販売として、装置・技術を展示会・学会等でPR中である。現時点での販売実績はない。複数から関心を持った反応も得ており、装置見学やデモ測定、サンプル出荷の調整を進めている途上である。2025年度の正式販売を目指す。
また、DIP-IA(TOFMS)ユニットは継続開発を進めており、早期の試験販売への移行を目指している。R&D用途からの顧客開拓では本装置の完成の重要度が高い。

DIP-IAカタログ
提携可能な製品・サービス内容

製品製造、試験・分析・評価、共同研究・共同開発、技術ライセンス、技術コンサルティング

製品・サービスのPRポイント

DIP-IAユニットは、国内外の多くのラボや検査施設に導入されているGC-MS装置のオプション装置の位置付けで、保有するGC-MS装置にIAユニットを追加することで、新たな分析手法への対応を可能にする。また、ユニット換装が容易なため、従来のGC-MSアプリケーションと、DIP-IA/MSアプリケーションを目的に応じて切り替えて運用できるのも強みである。
IA/MS法は分子イオン計測性能に非常に優れている。普及している従来のイオン化法では分子イオン計測できなかった成分も、IA/MS法なら可能になるケースがあり、R&D分野の研究者・技術者から興味を持たれることが多い。また、RoHS指令の規制対象成分のスクリーニング検査に利用できる仕様となっており、樹脂中の臭素化難燃剤やフタル酸エステル類などを迅速・簡便に測定できる。測定に際して、希少資源となり価格高騰や入手自体が困難になってきているヘリウムガスを必要とせず、窒素や乾燥空気で測定できるのも優位性がある。

今後の実用化・事業化の見通し

開発装置のうちDIP-IA(QMS)ユニットは2024年度・春からの試験販売を経て、2025年度の正式販売を目指している。また、DIP-IA(TOFMS)ユニットは継続開発を進めているが、性能不足のため継続開発中。性能不足の原因究明を続けているが、想定以上に調整が長引いているが、2024年度中の調整を完了し、早期の試験販売への移行を目指している。
また、事業化を補完する取り組みとして、今期から3年間の計画でGoTech事業を推進中であり、DIP-IAユニットの自動分析対応化と、IAユニットのバリエーション強化開発を推進中である。IAユニットのバリエーション強化では新たにGC-IAユニットを開発中で、来期からエンドユーザーへの無償サンプル出荷により、アーリーアダプタ層へのアクションを強化する計画である。IA/MS法の認知度向上により、DIP-IAユニットの販売支援にもなると考えている。

実用化・事業化にあたっての課題

研究開発成果の確立・普及における課題は、継続開発中のDIP-IA(TOF)ユニットの完成がある。精密質量分析に対応する高性能版の完成はR&D分野でのユーザー開拓のために必須である。
また、IP-IAユニットの販路開拓での課題はIA/MS法の認知度が不足している点があり(製品が長く途切れていたため、特に若い世代への認知度が低い)、アーリーアダプタから先に広げる点でハードルが想定される。この課題に対処するため、展示会や学会・学術論文等での露出機会を増やすと共に、サンプル出荷等を通じて、第3者(アーリーアダプタ層)からの学会等でのIA/MS法の発表件数を増やすための施策に取り組んでいる。

事業化に向けた提携や連携の希望

すでに継続開発として、新たに東京大学を連携先に加え、今期から3ヵ年計画でGoTech事業を開始している。また、装置販売・普及に向けて分析装置メーカーの日本電子の支援を得られており、今後、装置販売実績を踏まえて連携の深化を図っていく計画である。
このため、現時点で新たな提携や連携先への希望はない。

プロジェクトの実施体制

主たる研究等実施機関 株式会社神戸工業試験場 生産本部 材料試験部 技術開発課
事業管理機関 よこはまティーエルオー株式会社
研究等実施機関 よこはまティーエルオー株式会社
国立研究開発法人産業技術総合研究所
国立大学法人横浜国立大学
アドバイザー 株式会社東芝
沖エンジニアリング株式会社
ENEOS株式会社
日本電子株式会社

参考情報

主たる研究等実施機関 企業情報

企業名 株式会社神戸工業試験場(法人番号:1140001014570)
事業内容 検査・分析試験サービス業
社員数 434 名
生産拠点 播磨事業所、土山工場、大阪工場、茨城事業所
本社所在地 〒675-0155 兵庫県加古郡播磨町新島47-13
ホームページ https://www.kmtl.co.jp/
連絡先窓口 生産本部 材料試験部 技術開発課 三島 有二
メールアドレス y-mishima@kmtl.co.jp
電話番号 03-3843-5691