産業応用に向けて多様な標的分子に適したライブラリーデザイン
埼玉県
株式会社Epsilon Molecular Engineering
2025年2月27日更新
プロジェクトの基本情報
プロジェクト名 | ITバイオと進化工学を融合した高機能化人工次世代抗体VHHの開発 |
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対象となる産業分野 | 医療・健康・介護 |
産業分野でのニーズ対応 | 高機能化(新たな機能の付与・追加)、高効率化(同じ生産量に対するリソースの削減)、高効率化(工程短縮)、低コスト化 |
キーワード | 人工VHHライブラリー、細胞内VHH、CDR3構造予測、VHH-抗原結合構造予測 |
事業化状況 | 実用化に成功し事業化に向けて取り組み中 |
事業実施年度 | 令和2年度~令和4年度 |
プロジェクトの詳細
事業概要
本テーマでは、産業応用毎に迅速にVHH抗体を提供可能とするため、VHHの解析技術、およびその技術を活用した人工VHHライブラリーの開発に取り組んだ。具体的には、VHHの結合親和性を迅速に解析する技術、ハイスループットな分子動力学計算によるVHHのCDR3構造予測、VHH-抗原結合構造エ予測、物性評価技術等をVHH解析技術として開発に取り組んだ。また、それらの解析技術から得られたデータをフィードバックし、細胞内VHHライブラリーの開発に取り組んだ。
開発した技術のポイント
従来技術では、天然由来の配列をベースとしたVHHの探索、及び、VHHの活用がなされていた。新技術では、天然のVHHのCDR3の構造的特徴を残しつつも、応用目的に合わせて人工的にフレームワーク領域をデザインし、人工VHHライブラリーを開発する。これにより、特に、期間、確度の点で効率よく応用目的に合わせたVHHの取得を可能とする。具体的な例として細胞内VHHライブラリの開発を達成した。さらに、分子動力学計算によるVHHのCDR3の構造予測、VHHと抗原の結合構造予測、安定性評価等のハイスループット化により迅速なフィードバックが可能となり、VHHの最適化を効率的に実行することが期待される。
具体的な成果
・人工VHHライブラリー開発に係る成果
-細胞内で安定発現するVHHを取得可能な細胞内VHHライブラリーを開発した。
-ヒト抗体遺伝子と85~90%の配列相同性を持つフレームワークからなるヒト化VHHライブラリーを設計した。
・VHHの解析技術に係る成果
-DNAから1日でVHHを調製し、解離定数を測定できる系を開発した。
-短時間で効率的にCDR構造をサンプリング可能なVHHに適したシミュレーション手法を開発した。
-2週間で10クローンのドッキング予測計算を実現した。また、CDR構造サンプリング法と組み合わせることで、より精度の高い結合構造予測を可能とした。
-CDR3の構造を配列から8割の精度で予測する予測モデルを構築した。
上記の成果の実用化の一つとして細胞内VHH取得プラットフォームを確立した。
知財出願や広報活動等の状況
細胞内VHHライブラリーに関する特許出願を行った。
(細胞内における凝集性が低下したVHH、特願2023-68435)
研究開発成果の利用シーン
本研究で開発した細胞内VHHライブラリーは、多様な細胞内標的に対して迅速にVHHを提供可能とするものである。細胞内VHHの迅速な提供ににより、細胞内抗分子のターゲットバリデーションや機能解析が促進されることが期待される。さらに近年発展が著しい遺伝子デリバリー技術と組み合わせることで新規の創薬モダリティの実現への発展が期待される。
また、本研究で開発したVHHライブラリーデザイン技術を活用し、多様なライブラリを開発することで、応用目的に適したVHHを迅速に取得することが可能となる。これにより、以下のような幅広い分野でのVHH活用が期待される。
・医薬品: 細胞内の創薬ターゲットに作用する抗体医薬、核酸医薬のデリバリー用キャリア
・診断薬: 感度・特異性に優れた検査試薬
・再生医療: 細胞増殖因子に代わる熱安定性の高い細胞培養添加物
・バイオセンサー、フィルター: 高機能な分子認識素子
本技術を活用することで、従来のIgG抗体が苦手とする領域への応用が広がり、新たな市場の創出が期待される。
実用化・事業化の状況
事業化状況の詳細
現在、本研究成果を活用したVHHスクリーニングサービスの事業化に向けて、以下の取り組みを進めている。
・アカデミアと連携し、細胞内標的に対するVHH取得実績を蓄積
・細胞内VHHライブラリに関する学会発表
・製薬企業への技術紹介
提携可能な製品・サービス内容
共同研究・共同開発、技術ライセンス、VHH配列提供サービス
製品・サービスのPRポイント
従来、細胞内VHHの取得は、ラクダ科動物への免疫、抗原に結合するクローンの同定、さらに細胞内で機能するクローンの同定というプロセスを必要としており、最短でも数か月の期間を必要としていた。今回、開発した細胞内VHH用のVHHライブラリと、試験管内での高速スクリーニング技術であるcDNAディスプレイ法、迅速な結合親和性の測定系を組み合わせることで、最短1ヶ月で細胞内VHHを取得可能となった。
今後の実用化・事業化の見通し
既に細胞内VHHの配列提供サービスを展開している。現在、アカデミアと連携し実用例の蓄積に務めており、具体的な実用例を示していくことで契約につながるもと考えている。
また、VHHの構造予測、VHH抗体ー抗原複合体の結合構造予測の実用化には更なる精度向上が必要であり、HDX-MSによるエピトープ解析データの活用等を検討する。
実用化・事業化にあたっての課題
・細胞内VHH配列提供サービスの事業化には、応用実績を積み重ねる必要がある。細胞内VHHの応用例としては、タンパク質間相互作用阻害やプロテインノックダウンによる創薬、細胞内イメージングによる機能解析等が想定される。また、そのためには遺伝子デリバリー技術も必要となり、それらを実際に組み合わせた実用例の蓄積が普及に必要となる。
・分子動力学計算による、VHHの構造予測、VHHと抗原の結合構造予測等の実用化、また、ライブラリーデザインへの活用を社内で精力的に進めるためには、ドライ研究に精通した研究員の採用・育成が必要となる。
プロジェクトの実施体制
主たる研究等実施機関 | 株式会社Epsilon Molecular Engineering 研究開発部 |
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事業管理機関 | 国立大学法人埼玉大学 研究・連携推進部産学官連携・ダイバーシティ推進課 |
研究等実施機関 | 三井情報株式会社 バイオヘルスケア技術部 国立大学法人埼玉大学 |
アドバイザー | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 花王株式会社 積水化学株式会社 |
主たる研究等実施機関 企業情報
企業名 | 株式会社Epsilon Molecular Engineering(法人番号:5030001116036) |
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事業内容 | バイオテクノロジーの研究開発 |
社員数 | 15 名 |
本社所在地 | 〒338-8570 埼玉県さいたま市桜区下大久保255 埼玉大学オープンイノベーションセンター研究棟208室 |
ホームページ | https://www.epsilon-mol.co.jp/ |
連絡先窓口 | 事業開発部 新井秀直 |
メールアドレス | biz_dev@epsilon-mol.co.jp |
電話番号 | 048-858-6465 |
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