『埋め込み型人工血管流量装置』の開発
愛知県
株式会社東海メディカルプロダクツ
2023年2月13日更新
プロジェクトの基本情報
プロジェクト名 | 先天性心疾患に対する姑息手術成績向上のための埋め込み型人工血管流量調整装置の開発 |
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対象となる産業分野 | 医療・健康・介護 |
産業分野でのニーズ対応 | 高機能化(新たな機能の付与・追加)、デザイン性・意匠性の向上 |
キーワード | 先天性心疾患、医療機器、人工血管、樹脂加工 |
事業化状況 | 研究実施中 |
事業実施年度 | 令和2年度~令和3年度 |
プロジェクトの詳細
事業概要
大動脈分枝である鎖骨下動脈から、肺動脈へのバイパスとして小口径人工血管を吻合し、著しく減少した肺血流を改善させる姑息手術が乳児先天性心疾患で広く行われている。しかし、バイパス流量を手術後に調整することは困難であり、不適切な流量による様々な合併症や手術死亡の発生が少なくない。適切な肺血流量を得ることが全世界共通の課題となっている。その課題解決のために、手術後でも体外からBTシャント血流量を調整出来るような装置が必要である。この課題解決のため事業化を視野に、埋め込み型バルーン制御による人工血管流量調整装置を新規開発する。サポイン事業期間内で現有する材料と成型技術を向上させ製品規格化を目指す。
開発した技術のポイント
・バルーン素材の開発・評価
選定した素材における1ヶ月間の留置試験にて、バルーン前後の圧格差は維持できており長期留置に耐えうる材料であることを確認した。
・バルーン素材のミニチュア加工技術
想定される最小人工血管径3mmに対応可能なバルーン作製に取り組み、拡張・収縮の機能を確保しつつサイズダウンに成功した。
・バルーン形状の検討
大阪医科薬科大学で行われたBTシャント術を基に東海メディカルプロダクツにおいて、デザインの検討を実施した。BTシャント施行時に邪魔にならないよう、BTシャント施工後に後付けできる最適なデザインを検討し、動物実験においてそのユーザビリティ性能について評価した。
・動物実験による検証
ビーグル犬を用いて臨床の病態モデルの確立を図った。鎖骨下動脈-肺動脈間に人工血管を設置し(BTシャント)、その周囲に本開発品を装着した。開発品に内在するバルーンの容量調節で人工血管の流量調整を行い、超音波検査でその流量変化を観察し、血流量の制御が可能であることを確認した。
・知財出願検討
特許調査の結果から、試作サンプルの形状について権利化の可能性があることを確認した。
具体的な成果
・長期留置可能なバルーン素材の開発
37℃生理食塩水中に各素材で成型したバルーンを浸漬し、20日後の寸法(バルーン直径)の変化を確認した。吸水性と伸びの影響から、ポリアミドやカーボネート系ポリウレタンが長期留置バルーン材料として良好であった。
・長期留置可能なバルーン素材の評価
記録計を用い100ms単位で各圧力及び流量を測定した。シャント閉塞時・解放時の圧力及び流量特性が精度よく確認できるようになった。
・ミニチュア複合バルーンの加工技術確立
社内で作製した極小金型を用いてブロー成型を実施。既存デバイスにはない極小バルーンの成型に成功。
・バルーンと液体注入用チューブ接合部のばらつきを抑制する加工技術確立
安定的な接続工程を得るため、接続部の再設計した。部品を細分化し、超音波ウェルダとCO2レーザーによる融着にて安定的に接合できるようになった。
・シャント作製後での使用可能なデザイン確立
ユーザーの使い勝手に対応するためのデザインの検討、動物実験において取扱の容易性など問題ないことを確認した。
知財出願や広報活動等の状況
本事業で使用する基本特許は既に登録済みである。本事業期間中に得られた知見で、事業展開上非常に重要な位置を占めるものとなる発明は積極的に周辺特許として権利化を目指す。将来的な海外戦略上、ビジネス形態に応じて権利行使 (譲渡、ライセンス契約等)を適切に行う。
研究開発成果の利用シーン
本開発の基本コンセプトは、円筒状のバルーンを小口径人工血管に被せ、これに接続させた皮下埋植ポートを経由して送り込む生理食塩水でバルーンを膨張させ、人工血管を絞扼する装置である。この絞扼度により人工血管を通過する流量が調整される。この実用化により人工血管の流量が調整できることが可能となり、BTシャント手術後の経過の安定を図り重篤な合併症と死亡発生を減少させることに寄与できると考えられる。
実用化・事業化の状況
事業化状況の詳細
本事業では流量調整装置の製品規格決定までを行い、医療分野市場での販売を計画している。また、人工血管の血流調整装置としての応用として、国内で30万人を超える血液透析患者が想起される。人工透析患者では、上肢の動脈と静脈の間に縫合した人工血管を透析ブラッドアクセスとして使用する場合がある。時に動脈から静脈へのバイパス流量の増加が心不全を引き起こす危険がある。この際には血流調整が必要とされることから、本流量調整装置の潜在的ニーズがある。
提携可能な製品・サービス内容
設計・製作、加工・組立・処理、製品製造、試験・分析・評価、共同研究・共同開発
製品・サービスのPRポイント
BTシャント等の外科手術により、埋め込まれた人工血管を通じて供給される血流を、誰もが容易に体外からの液体の注入により(低侵襲手技)調整することが出来る。次に実施される予定の修復手術 (根治手術)の際に、不要となった人工血管と共に摘出、破棄できるディスポーザブル製品でもある。本装置を用いた血流調整により、BTシャント手術後の経過の安定を図り、命を救うことが出来る。
今後の実用化・事業化の見通し
本事業では流量調整装置の製品規格決定までを行い、医療分野市場での販売を計画している。株式会社東海メディカルプロダクツは日本初の国産IABPバルーンカテーテルを開発し製造・販売を実践した研究開発型企業である。医療用カテーテルを中心に製造しており、本計画において、これまでの製品開発のノウハウは十分に活用可能である。またバルーンカテーテルをはじめ、多くの医療機器を販売していることから、 販売網、市場の情報収集力や商品の展開力で強みを有している。事業化を見据えた出口戦略に沿った医療機器開発に実績があり、かつ実際の心臓手術を実践している大阪医科薬科大学とは、一次試作品開発から綿密に共同研究を行ってきた実績がある。研究機関それぞれの得意分野の補完が可能なため、事業化への実現性が高い。また、技術的課題も明確であり、解決する技術的方法論の輪郭が明確になっている。医療機器として認証されるための薬事対応の道筋も明確であり、本事業期間中に密接な連携を取ることで克服可能と考える。
プロジェクトの実施体制
主たる研究等実施機関 | 株式会社東海メディカルプロダクツ |
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事業管理機関 | 株式会社東海メディカルプロダクツ 学校法人大阪医科薬科大学 |
研究等実施機関 | 学校法人大阪医科薬科大学 |
主たる研究等実施機関 企業情報
企業名 | 株式会社東海メディカルプロダクツ(法人番号:7180001074556) |
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事業内容 | 医療機器の開発、製造および販売 |
社員数 | 246 名 |
本社所在地 | 〒486-0808 愛知県春日井市田楽町字更屋敷1485番地 |
ホームページ | https://www.tokaimedpro.co.jp/ |
連絡先窓口 | 株式会社東海メディカルプロダクツ 開発2課 吉戸新之介 |
メールアドレス | yoshito-s@tokaimedpro.co.jp |
電話番号 | 0568-27-7777 |
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