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接合・実装

生成AI時代のデータセンタ省電力化の切り札となる液浸冷却用デバイス

茨城県

株式会社中原光電子研究所

2025年1月22日更新

プロジェクトの基本情報

プロジェクト名 液浸冷却用光コネクタ向け多心GRINレンズの開発 ~データセンタの省エネ化で脱炭素化社会に貢献~
基盤技術分野 接合・実装
対象となる産業分野 医療・健康・介護、航空・宇宙、ロボット、産業機械、情報通信、エレクトロニクス、光学機器
産業分野でのニーズ対応 高機能化(新たな機能の付与・追加)、高性能化(既存機能の性能向上)、高性能化(小型化・軽量化)、環境配慮
キーワード 液浸冷却,データセンタ,GRINレンズ,ビーム拡大型コネクタ,省エネ
事業化状況 実用化間近
事業実施年度 令和4年度~令和5年度

プロジェクトの詳細

事業概要

液浸冷却に適用できる光学接続部品である GRIN レンズを用いた光コネクタの開発に取り組んだ。液浸冷却用冷媒中で光学特性が変化しない GRIN レンズの特性を生かし、GRIN レンズ特性のシミュレーション精度の向上、コネクタへの実装を可能にする微小光学部品の設計・製造、微小光学部品を短時間で実装する高精度画像処理実装装置の設計・開発、GRIN レンズを実装した多心コネクタの液浸冷媒中での各種試験を実施した。

開発した技術のポイント

・高精度なGRINレンズ特性シミュレーション技術の開発
-生データを入力し、実測値に近いシミュレーション結果を実現
-GRINレンズ部品の寸法設計効率化と目標光学特性に近い部品作製を実現
・高精度な多心GRINレンズ作製技術の開発
-マルチモード用12心GRINレンズ(i-GRIN)で2マイクロメートル以内のピッチ精度を達成
-シングルモード用にV溝を用いた多心化技術で1マイクロメートル以内のピッチ精度を達成
・微小光学部品の高精度・短時間実装技術の開発
-画像処理を用いた高精度実装装置を開発
-0.1マイクロメートルの精度で部品位置を読み取り、正確に配置・実装
・液浸冷却用冷媒中での光学特性評価技術の開発
-空気中と液浸冷却用冷媒中の両方で接続損失を測定できる測定系を構築し、変動がないことを確認
-GRINレンズ間のギャップや押圧力調整によりコネクタの機械特性も測定可能

GRINレンズ用シミュレーション技術の開発
開発した画像処理による新規高精度実装装置
具体的な成果

・GRINレンズ特性シミュレーションの高精度化
・MPOコネクタに実装可能な微小光学接続部品の設計
・12心GRINレンズのMMF用、SMF用を作製し、ピッチ精度1μm以内を実現
・GRINレンズ実装用プレートとスペーサを統合したV溝付きスペーサを作製
・12心GRINレンズ実装を平均30秒以下、スペーサ実装含め2分以内で実現
・空気・冷媒両方でコネクタ特性を測定できる特殊評価装置を作製
・冷媒中での多心GRINレンズの特性評価を実施し、液浸冷却への対応性を確認
・冷媒中の80℃、168時間の高温信頼性試験を実施し、冷媒中の信頼性を実証

知財出願や広報活動等の状況

実証実験で得られたGRINレンズを用いた光コネクタの実証結果をもとに、報道発表、展示会発表等により本開発品の液浸冷却システムでの有効性をアピールし、国内外の光部品メーカーに採用を促している。

研究開発成果の利用シーン

液浸冷却用光コネクタ向け多心GRINレンズは、主にデータセンターでの利用が想定されている。データ処理量の増大に伴うデータセンターの電力消費量増加に対し、液浸冷却システムが省電力化の解決策として注目されている。この技術はデータセンター内のサーバーやネットワーク機器の接続に利用され、全体の電力消費量削減に貢献する。

実用化・事業化の状況

事業化状況の詳細

・川下業者との連携
-液浸冷却の実証実験を実施している川下業者と情報交換を行い、液浸冷却における光部品、特に送受信モジュールに使用されている接続部品の課題を明確化した
・実証実験
-開発したGRINレンズを適用した光接続部品を、川下業者の送受信モジュールに適用し、液浸冷却の実証実験をKDDI殿と実施した。
-実証実験の結果を中原光電子研究所のCOMNEXTブース(24年6月)で展示、資料を配布をおこない、川下業者へのアピールを行った。

Verification test of optical transceivers for immersion cooling with KDDI_1
Verification test of optical transceivers for immersion cooling with KDDI_2
提携可能な製品・サービス内容

設計・製作、素材・部品製造、試験・分析・評価、共同研究・共同開発

製品・サービスのPRポイント

・データセンターの省電力化に貢献
- 世界的なデータ量増大に伴うデータセンターの電力消費量増加に対応
- 高効率の液浸冷却システムに最適化され、電力消費量削減に大きく寄与
・高精度な光学特性を実現:
- 独自のGRINレンズ特性シミュレーション技術により設計精度が向上
- マルチモード用、シングルモード用ともに高いピッチ精度を達成
・高精度・短時間実装が可能
- 画像処理実装装置により、位置精度1マイクロメートル以内、実装時間10分以内を実現
- 製造コスト削減に貢献
・液浸冷却環境下での高い信頼性
- フッ素系溶媒や鉱油中でも安定した光学特性を維持
- 冷媒中の異物に対する高い耐性
- 80度の高温環境下での長期信頼性試験(168時間)をクリア

これらの特長により、本製品は液浸冷却システムを用いたデータセンターの省電力化に大きく貢献し、過酷な環境下でも安心して使用できる高性能な光学接続部品として期待される。

今後の実用化・事業化の見通し

液浸冷却システムは、データセンターの電力消費量を大幅に削減できる技術として注目されており、世界的なデータ量の増加に伴い、その需要はますます高まると予想されている。現在、液浸冷却システムへの本格導入はまだ進んでいないことから、開発した液浸冷却用光コネクタ向け多心GRINレンズは、いち早く事業化を進めることで先行者利益の獲得が期待できる。既に液浸冷却の実証実験を実施している川下企業と情報交換を行い、具体的な適用先を明確化しており、実証実験を実施し、本技術が液浸冷却用冷媒中でも問題なく動作することを確認した。これらの取り組みから、本技術の実用化に向けて具体的な進展が見られ、近い将来の事業化が期待される。

実用化・事業化にあたっての課題

データセンタの電力消費削減の重要性は認識されているが、ITベンダーやデータセンターメーカの液浸冷却システム導入の動きは、非常に鈍い。その理由の一つが、伝送装置、光ファイバ等データセンタでの使用部材の液体中での動作試験例が非常に少なく、導入障壁となっていることが課題である。
また、100~400Gのデータセンタで多用されている比較的伝送速度の遅い送受信モジュールについて、国内メーカで製造していることが少なく、海外、特に中国、台湾のメーカと提携せざるを得なく、中小企業メーカとして障壁が大きい。

事業化に向けた提携や連携の希望

・データセンター用送受信モジュールを開発しているメーカとのモジュールと光ファイバの接続部品の開発連携
・特に、液浸冷却用送受信モジュールを開発・販売しているメーカとの上記送受信モジュールの提携

プロジェクトの実施体制

主たる研究等実施機関 株式会社中原光電子研究所
事業管理機関 株式会社ひたちなかテクノセンター
研究等実施機関 学校法人大阪電気通信大学
アドバイザー 千歳科学技術大学 顧問 伊澤達夫
佐武コネクタ研究所 佐武俊明
ミレーヌ  佐藤裕三

参考情報

主たる研究等実施機関 企業情報

企業名 株式会社中原光電子研究所(法人番号:5050001005542)
事業内容 ガラス部品の開発・製造・販売
社員数 14 名
生産拠点 茨城県水戸市城東3-5-10 中原光電子研究所 商品開発センター
本社所在地 〒310-0841 茨城県水戸市酒門4282-3
ホームページ https://www.noel-sekiei.co.jp/
連絡先窓口 林 智章
メールアドレス hayashi@htc.co.jp
電話番号 029-264-2200