立体造形
ブリスクの製造コスト20%削減を目指す恒温鍛造を用いた新製法の開発
新潟県
株式会社遠藤製作所
2025年1月24日更新
プロジェクトの基本情報
プロジェクト名 | 航空機エンジン用φ800チタン製ブリスクのニアネット恒温鍛造技術の開発 |
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基盤技術分野 | 立体造形 |
対象となる産業分野 | 航空・宇宙 |
産業分野でのニーズ対応 | 高効率化(同じ生産量に対するリソースの削減)、高効率化(使用機器削減)、低コスト化 |
キーワード | ブリスク,ニアネットシェイプ鍛造 |
事業化状況 | 研究実施中 |
事業実施年度 | 令和2年度~令和4年度 |
プロジェクトの詳細
事業概要
本事業では、比較的低荷重の15,000tの油圧プレスを用いた恒温鍛造技術を開発し、Φ800のチタン製ブリスクのニアネット鍛造製品を作製した。金型加熱装置の設計・製作から始まり、鍛造シミュレーションにより最適な加工条件を導き出し、製造工程を確立。さらに、鍛造試験を通じて当該鍛造品の形状や寸法の精度を高めることができた。
開発した技術のポイント
当該製品の鍛造には通常4万トンから5万トンのプレス機の能力が必要である。しかしながらこれらのプレス機の台数は世界でも限られており日本においては5万トンが1台あるのみである。この様な状況から本事業では比較的低荷重のプレスを用いてコスト競争力のある当該製品を得るための鍛造技術の開発を行った。主なポイントは下記である。
《15,000t油圧プレスを用いた恒温鍛造技術の開発》
・金型温度を750~850℃に維持する加熱装置の設計・開発
・鍛造シミュレーションを用いて形状充満度と内部加工発熱の最適化を実現する鍛造条件設計
・鍛造シミュレーション用いた最適な鍛造の工程設計
・高温環境に適用する金型の設計・製造
具体的な成果
・Φ800チタン製ブリスクのニアネット鍛造品を作製
・恒温鍛造技術により通常より小型(半分から1/3)の鍛造プレス機での当該製品の製造が可能になった
・恒温鍛造における精度の高い鍛造シミュレーション技術を確立
・作製した鍛造品の外観品質や機械特性、ミクロ組織において特段の問題もなく目標を達成
・作製した鍛造品の寸法品質、形状においても大きな問題はない
知財出願や広報活動等の状況
当該技術開発は既存技術を組み合わせることで成り立っています。しかしながら一つ一つの技術には高度で細かいアイデアが要求されます。これらより今回の開発で得た知見はノウハウとしてブラックボックス化し保有する事で競争の優位性が担保されると考えています。
研究開発成果の利用シーン
開発したチタン製ブリスクのニアネット恒温鍛造技術によりチタン製ブリスクの製造コスト削減に大きく貢献する事が出来ます。また当該鍛造品を用いる事で機械加工時間を大幅に短縮できる事から高価な5軸加工機の必要台数を軽減でき機械加工業者等の川下企業の設備投資低減にも寄与できると考えています。恒温鍛造技術は医療機器製品等、付加価値の高い分野の製品への応用も期待できます。
実用化・事業化の状況
事業化状況の詳細
本事業終了後にブリスク等のディスク内部における集合組織欠陥問題が顕在化しました。本事業で作製した鍛造製品にもこの欠陥が見受けられ、事業化にはこの問題の解決が新たな必要条件となりました。現在解決策は明確になっていませんが発生状況より仮説を立てシミュレーションで最適な製法の検討を行っています。またこれとは別に当該技術のニーズの再確認と営業活動として国内顧客へのプレゼン、海外展示会への出展を行っています。
提携可能な製品・サービス内容
加工・組立・処理、素材・部品製造、技術ライセンス
製品・サービスのPRポイント
開発した当該技術を適用する事でブリスクの製造コストは最大20%削減できると見込んでいます。加工時間短縮による製造リードタイムの短縮は当該製品の安定供給にも寄与すると考えます。また航空機業界では多くの材料や鍛造素材は海外からの調達になっており管理に手間を要しますが国内からの調達に切り替わる事で生産計画も立てやすくなり見えにくい管理面でのコスト削減にも大きく貢献出来ると確信します。
今後の実用化・事業化の見通し
上述の新たな問題を解決する事が最優先となります。社内では仮説を元に最適な製法をシミュレーションを用いて検討し試験レベルの鍛造試作を行いトライアンドエラーで妥当な製法を探ります。アカデミックな側面としては顧客、大学等の機関と連携し当該問題の発生メカニズムを特定し解決策を模索します。一方当該問題の解決を見据え営業活動は継続します。国内顧客との定期的な情報交換や海外展示会への継続出展を検討していきます。
実用化・事業化にあたっての課題
・新たな問題を解決するための継続的な研究開発
事業化に向けた提携や連携の希望
現時点で事業化には下記2点の大きなハードルがあります。
・集合組織欠陥の解決
・新製法の認定を取得
一つ目のハードルには発生メカニズムを特定する為にチタン材料の知見を多く有する大学との連携が有力と考えています。また業界の動向、鍛造品の最終評価に顧客との連携も不可欠です。二つ目のハードルには顧客の協力が必須となります。
プロジェクトの実施体制
主たる研究等実施機関 | 株式会社遠藤製作所 医療機器・新分野事業部 |
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事業管理機関 | 公益財団法人にいがた産業創造機構 産業創造グループ 次世代産業チーム |
アドバイザー | 双日エアロスペース株式会社 落合 宏行 |
主たる研究等実施機関 企業情報
企業名 | 株式会社遠藤製作所(法人番号:6110001015567) |
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事業内容 | 金属の塑性加工、精密鍛造技術を用いたゴルフ事業、鍛造事業、医療機器・航空事業、メタルスリーブ事業の4事業を展開 |
社員数 | 145 名 |
生産拠点 | 新潟県燕市に本社工場、タイ国に3つの工場を保有 |
本社所在地 | 〒959-1289 新潟県燕市東太田987番地 |
ホームページ | https://endo-mfg.co.jp |
連絡先窓口 | 医療機器・新分野事業部 近藤 類 |
メールアドレス | kondo@endo-mfg.co.jp |
電話番号 | 0256-63-8165 |
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