材料製造プロセス
フッ素回収とリサイクルを同時に達成するフッ素吸着剤の開発
岐阜県
上田石灰製造株式会社
2025年1月27日更新
プロジェクトの基本情報
プロジェクト名 | 回収したフッ素の再利用を可能とするセルロースナノファイバーと石灰からなる新規フッ素吸着剤の開発 |
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基盤技術分野 | 材料製造プロセス |
対象となる産業分野 | 半導体、化学品製造 |
産業分野でのニーズ対応 | 環境配慮 |
キーワード | 排水処理,フッ素,フッ化カルシウム,再生蛍石,フッ化水素 |
事業化状況 | 実用化に成功し事業化に向けて取り組み中 |
事業実施年度 | 令和2年度~令和4年度 |
プロジェクトの詳細
事業概要
本プロジェクトでは、セルロースナノファイバー(CNF)と消石灰を用いた新しいフッ素吸着剤の開発を行った。この吸着剤は、フッ素含有廃液中でも崩壊せず、強度と透水性を兼ね備えている。また、フッ素の吸着後は簡単にフッ化カルシウムとして回収することができ、従来の廃棄方法と比較してコストを抑えつつ、環境負荷を大幅に軽減する技術である。本研究の目的は、フッ素廃液を効率的に処理し、再利用可能なフッ化カルシウムとしてリサイクルするプロセスを確立することである。
開発した技術のポイント
セルロースナノファイバー(CNF)と消石灰を組み合わせた複合成型体の開発
耐荷重15kg以上、フッ酸濃度100,000mg/Lの液中での形状維持
透水性10ml/分以上、フッ素との反応率99%以上を達成 ・複合成型体の量産技術の確立
量産試験機において、20kg/hの生産能力を超える37.5kg/hの生産に成功 ・フッ素回収実証機の開発
フッ素濃度10,000mg/Lの廃液を10mg/Lまで処理可能な技術を実証、処理量は150L/4時間
使用後のフッ素吸着剤からのフッ化カルシウムの分離・精製プロセスの確立
具体的な成果
CNF/消石灰複合成型体の最適製造条件を確立し、フッ素吸着能力の高い成型体をラボスケールから量産スケールへと移行することに成功した。実際のフッ素含有廃液での実証試験では、廃液中のフッ素をフッ化カルシウムとして効率的に回収できることを確認し、スケールアップ試験においても同様の成果を得た。また、吸着済みフッ化カルシウムの精製により、アシッドグレードの高純度フッ化カルシウムの回収に成功した。
知財出願や広報活動等の状況
<特許出願>
特願2020-197221「フッ素吸着剤の製造方法及びフッ素除去・回収方法」
特願2022-089591「フッ素吸着剤の製造方法及びフッ素除去・回収方法」
<メディア掲載>
2023年9月7日岐阜新聞
2023年9月12日 日刊工業新聞
研究開発成果の利用シーン
半導体製造、金属加工、化学処理などで発生するフッ素含有廃液の処理に最適である。フッ素廃液を処理するだけでなく、吸着剤からフッ化カルシウムを再生することで、産業界におけるリサイクル率の向上を実現し、コスト削減や環境負荷の低減に寄与する。
実用化・事業化の状況
事業化状況の詳細
現在までに、フッ素化合物製造・電子部品・半導体や石英・液晶・金属等のエッチング分野のユーザーから廃液を入手し、フッ素吸着剤によるラボ試験を行った件数は9件、フッ素吸着剤を提供し、ユーザー工場での実機試験を8件実施した。一部のユーザーについては、本剤の使用を前提として、使用条件およびコスト試算を提示している。また、再生フッ化カルシウムの販売も視野に入れており、精製プロセスの拡充を進めていく予定である。
提携可能な製品・サービス内容
設計・製作、素材・部品製造
製品・サービスのPRポイント
フッ素含有廃液に対して本吸着剤を適用することで、従来の技術と比べて固液分離が容易となるため、凝集剤等の使用量の削減による廃棄物の低減を実現できる。したがって、環境に配慮した上で、廃液処理プロセスのコストを削減可能である。さらに、フッ素廃液処理後のフッ化カルシウムの再生が可能であり、持続可能なリサイクルを実現する技術である。フッ素を効率的に吸着し、廃棄物としてではなく再利用資源として回収できる点が最大の特徴である。
今後の実用化・事業化の見通し
現在、本フッ素吸着剤の使用を前提とした半導体工場での実機試験を実施中であり、実機スケールでの問題点の洗い出しと、コスト試算を行っている。この結果を基に来年度中に当該工場の一部に設置する小規模設備を設計中であり、フッ素吸着剤の最初の供給先となる予定である。また、これら実機試験実施に伴い、フッ素吸着剤の製造コストの低減に取組み、当初の10分の1までコストを抑えることに成功している。
実用化・事業化にあたっての課題
使用後のフッ素吸着剤は、上田石灰でフッ化カルシウムとして精製するが、ユーザーの事業所で発生するフッ素吸着後のフッ素吸着剤の上田石灰までの輸送コストが事業化にあたっての課題となる。ユーザーの事業所内に精製設備を設置するなどいくつかのビジネスモデルをユーザーも交へて検討中である。
事業化に向けた提携や連携の希望
フッ素吸着剤を利用した廃水処理設備の設計製作が可能なメーカーとの協業を模索中
プロジェクトの実施体制
主たる研究等実施機関 | 上田石灰製造株式会社 商品開発部 |
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事業管理機関 | 公益財団法人岐阜県産業経済振興センター 技術振興部 |
研究等実施機関 | 岐阜県産業技術総合センター |
アドバイザー | 関西大学 |
主たる研究等実施機関 企業情報
企業名 | 上田石灰製造株式会社(法人番号:5200001013257) |
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事業内容 | 石灰・ドロマイト系材料の製造販売、エコマテリアル商品の製造・開発、フロン類の破壊処理 |
社員数 | 133 名 |
生産拠点 | 昼飯工場・金生鉱山(岐阜県大垣市)、市橋工場(岐阜県大垣市)、久瀬工場・久瀬鉱山(岐阜県揖斐川町)、九州工場(佐賀県伊万里市) |
本社所在地 | 〒503-2213 岐阜県大垣市赤坂町3751番地 |
ホームページ | http://www.uedalime.co.jp |
連絡先窓口 | 商品開発部 フェロー 加藤 健治 |
メールアドレス | katou@uedalime.co.jp |
電話番号 | 0584-71-0407 |
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