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測定計測

ニオブ酸リチウム圧電単結晶を用いたデバイス製造技術の高度化にトライしMEMS振動ジャイロの高精度化を目指す

長野県

多摩川精機株式会社

2025年1月24日更新

プロジェクトの基本情報

プロジェクト名 デジタル社会に貢献する立体構造のニオブ酸リチウム圧電素子を搭載した高精度MEMS振動ジャイロ開発
基盤技術分野 測定計測
対象となる産業分野 医療・健康・介護、航空・宇宙、自動車、ロボット、農業、産業機械、工作機械、エレクトロニクス、物流・流通
産業分野でのニーズ対応 高性能化(既存機能の性能向上)、高性能化(耐久性向上)、高性能化(小型化・軽量化)、高性能化(信頼性・安全性向上)、高性能化(精度向上)、高効率化(同じ生産量に対するリソースの削減)、高効率化(生産性増加)、低コスト化
キーワード 圧電材料、ジャイロ(慣性センサ)、精密加工、実装技術、露光技術
事業化状況 研究実施中
事業実施年度 令和3年度~令和5年度

プロジェクトの詳細

事業概要

高性能な結晶材料特性を有するニオブ酸リチウム圧電単結晶を用い、新たに開発した精密加工、3D露光、実装技術を導入したものづくりにて小型化、低コスト化を実現した高精度MEMS振動ジャイロを開発することで、性能やサイズの観点から適用が困難であった分野に対して、高度な三次元モーションコントロール計測技術を提供し、測定計測の高度化に資する技術開発を行う。

研究開発の背景
開発した技術のポイント

本事業で開発した高精度MEMS振動ジャイロの研究開発課題である【結晶材料の異方性】【形状の対称性】について、結晶材料の異方性に関しては、結晶方位並びに電極構造の設計値を最適化することで解決可能な仕様を見出した。形状の対称性に関しては、硬脆性材で難加工材と言われるニオブ酸リチウム圧電単結晶に対して高い精度で円筒形状に加工する要素技術の研究開発を行い、技術目標を達成するための製造条件を確立した。
電極形成技術開発及び実装技術開発については、立体構造体に対して電極を形成する要素技術、円筒ジャイロ素子を高い精度で実装する要素技術の研究開発を行い、技術目標を達成するための方向性や手立てがわかってきた。
また、開発した円筒型振動子を駆動してジャイロ出力を検出する信号処理回路に関しては、ジャイロとして機能するための回路パラメータの最適条件を確立し、ジャイロとして動作することが確認できた。

円筒振動子
具体的な成果

1.円筒形状加工技術開発
硬脆性材料で難削加工材料の1つであるニオブ酸リチウム単結晶.に対する円筒形状加工について、同心円精度:±1.0(µm)以下、最大チッピング量:50(µm)以下を実現する加工技術を確立した。
2.電極形成技術開発
円筒構造体全面に対する電極パターン形成について、1次露光で形成したアライメント電極は±3.0(µm)以下の位置精度、2次露光で形成した円筒底面電極は±6.5(µm)以下の位置精度を実現する露光技術を確立した。
3.実装技術開発
本事業の研究開発成果をもとにマニュアルフリップチップボンダの開発・製作を行った。円筒型ジャイロ素子を実装する位置決め機構については、カメラなどの認識系と位置決め系をシステム化することで、表裏0.1(µm)分解能で位置決めができる条件を確立した。
4.ジャイロ素子設計
結晶材料特性に異方性を有しているニオブ酸リチウム単結晶において、軸対称型ジャイロ素子として必要となるワイングラス振動が励起する最適な結晶方位並びに電極構造仕様を、有限要素法解析によって見出した。
5.信号処理回路開発
製作した円筒型振動子のジャイロ性能について、デジタルロックインアンプを用いた信号処理回路において、感度=0.0133 (mV/°/s), バイアス安定性能=133 (°/h)の結果を得た。

円筒加工の様子
立体露光の様子
ジャイロ性能測定の様子
知財出願や広報活動等の状況

【特許出願】
出願番号:特願2023-184818
発明の名称:圧電型角速度センサ
【学会発表】
1) Kenji Morita, Toshiyuki Tsuchiya, Kazutaka Araya, Tsunehiko Imamura, Masanori Yachi
Single Crystal Lithium Niobate Cylindrical Resonator for High-Performance Miniature Piezoelectric Gyroscope
2024 IEEE International Symposium on Inertial Sensors and Systems INERTIAL 2024)
Hiroshima, Japan, (March 25-28, 2024), pp. 1-4
DOI: 10.1109/INERTIAL60399.2024.10502044
2) 森田健司, 土屋智由, 荒屋和貴, 今村恒彦, 谷内雅紀
高性能小型圧電ジャイロスコープのための単結晶ニオブ酸リチウム円筒振動子の開発
第40回「センサ・マイクロマシンと応用システム」シンポジウム
熊本城ホール,熊本,2023年11月6-9日,6P5-PS-34
3) 森田健司,土屋智由,荒屋和貴,今村恒彦,谷内雅紀
単結晶ニオブ酸リチウムを用いた円筒形圧電振動ジャイロスコープによる角速度検出
日本機械学会2022年度年次大会
富山大学,2022年9月11-14日,J223p-05

研究開発成果の利用シーン

開発された高精度MEMS振動ジャイロは、農業や自動運転車両、航空機、さらにはドローンなどの分野での利用が期待されている。特に、ジャイロセンサーの小型化と低コスト化が実現されたことで、これまで高価な光ファイバジャイロが採用されていた領域でも、より広範な応用が可能になる。農業ロボットや建設機械における精密な姿勢制御や位置計測が求められる場面での利用が見込まれている。

農業機械への応用イメージ

実用化・事業化の状況

事業化状況の詳細

研究開発事業期間内に技術目標が達成できなかった項目については、明確化した課題に対する研究開発を引き続き行っている。
なお、高精度MEMS振動ジャイロは農業ロボット、自動運転、船舶、航空機向けの慣性センサとしての需要が年々高まっている。市場参入の機会を喪失しないためにも、実用化に向けた課題に対する取り組みと併せて量産技術を確立し、コスト競争力の高い魅力ある製品実現を目指す。

提携可能な製品・サービス内容

製品製造、試験・分析・評価、共同研究・共同開発

製品・サービスのPRポイント

MEMS振動ジャイロの特徴である、小型・低コストに加え、高精度な材料特性を有するニオブ酸リチウム結晶材料を基材としジャイロバイアス安定性の技術目標を達成したジャイロセンサを開発することで、小型・高精度・低コストを実現し、これまで光ファイバジャイロが主となっていた農業、建設土木、輸送、宇宙航空といった多様な市場に対応可能なセンサを目指す。

今後の実用化・事業化の見通し

ターゲット市場である農業ロボットやICT建機、自動運転市場への採用を目指すためにはジャイロバイアス安定性能の技術目標達成は必須であり、その対応としてジャイロ素子構造の更なる最適設計仕様検討や信号処理回路の安定化、低ノイズ化に関する追加研究を行っている。ジャイロバイアス安定性能の技術目標に目途がつき次第、ターゲット市場のユーザーへサンプル提供を行うことを検討している。

実用化・事業化にあたっての課題

ジャイロバイアス安定性能の技術目標達成が重要な課題であり、ジャイロ素子の高Q値化や信号処理回路の安定化や低ノイズ化が事業化に向けた必須条件となっている。
また、量産技術の確立とコスト削減も大きな課題である。円筒形状加工や電極形成プロセスの大量生産を可能とする量産技術開発、導電性ペーストを用いた実装量産技術開発など、安定したジャイロ性能の確保と低コスト化を実現するための製造プロセス開発が今後の鍵となる。

プロジェクトの実施体制

主たる研究等実施機関 多摩川精機株式会社 スペーストロニックス研究所 MEMSセンサ技術課
事業管理機関 公益財団法人21あおもり産業総合支援センター 総合支援課
研究等実施機関 多摩川モバイル電装株式会社 八戸工場
国立大学法人京都大学 大学院 工学研究科 マイクロエンジニアリング専攻 土屋研究室
アドバイザー 学校法人名城大学
地方独立行政法人青森県産業技術センター
ヤンマーホールディングス株式会社

主たる研究等実施機関 企業情報

企業名 多摩川精機株式会社(法人番号:6100001022548)
事業内容 電気機器製造業
社員数 604 名
生産拠点 第一事業所・第二事業所・第三事業所(長野県)、八戸事業所(青森県)
本社所在地 〒395-8515 長野県飯田市大休1879番地
ホームページ http://www.tamagawa-seiki.co.jp
連絡先窓口 スペーストロニックス研究所 MEMSセンサ技術課 荒屋和貴
メールアドレス kazutaka-araya@tamagawa-seiki.co.jp
電話番号 0178-38-5582