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精密加工

研磨対象部品の品質を向上するバレル研磨法の開発

愛知県

株式会社チップトン

2025年1月27日更新

プロジェクトの基本情報

プロジェクト名 Society5.0の実現に不可欠な超小型デジタル部品の生産性を飛躍的に高めるバレル研磨法の開発
基盤技術分野 精密加工
対象となる産業分野 産業機械、工作機械
産業分野でのニーズ対応 高機能化(新たな機能の付与・追加)、高性能化(既存機能の性能向上)、高性能化(信頼性・安全性向上)、高性能化(精度向上)、高効率化(同じ生産量に対するリソースの削減)、高効率化(工程短縮)、高効率化(生産性増加)、低コスト化
キーワード バレル研磨,カケ,脆性部品,小物部品,シミュレーション
事業化状況 事業化に成功し継続的な取引が続いている
事業実施年度 令和3年度~令和5年度

プロジェクトの詳細

事業概要

(1)バレル研磨用φ0.3mmの微小研磨石の開発
・超小型電子部品をバレル研磨加工する際に、部品と研磨石との間に空隙が生じると、部品にカケ不良が生じやすい。
・従来最小だった1mmの研磨石よりさらに小さい0.3mmの研磨石を開発した。カケ不良の原因となる空隙をより小さく保ちつつ研磨加工できるようにした。
(2)40Gの超高圧バレル研磨機の開発
・研磨石が小さくなると部品の細部に当たりやすくなるが、研磨力は乏しくなる。遠心力を従来の30Gから40Gへ引き上げ、研磨石の押圧力を高めることで従来以上の研磨性能を達成した。
・高い押圧力で空隙を一層小さくし、カケ不良率が目標値を下回る1.8%を達成した。
(3)バレル研磨シミュレーターの開発
・バレル研磨条件は通常、数十回の試行実験を繰り返して最適な条件を見出すが、バレル研磨シミュレーターを開発し、コンピューター上で机上実験できるようにした。これにより、数回の試行実験のみでバレル研磨条件を見出すことができるようになった。

カケ発生状況
開発した技術のポイント

(1)バレル研磨用φ0.3mmの微小研磨石の開発
・真球に近い微小研磨石を製造するため、新造粒装置を開発した。新造粒装置では遠心力を利用した転動造粒で作るため、造粒容器を工夫した。複数の容器を製作し、容器の組合せ実験とDEM(Discrete Element Method)による流動解析により、最適な容器形状を見出した。
・製造したφ0.3mmの微小研磨石には、2つの球が雪だるま状にくっついた不良品が混入することがあるので、良品と不良品を選別する新選別システムを開発した。
(2)40Gの超高圧バレル研磨機の開発
・従来の30Gの高圧バレル研磨機より、33%負荷の大きい40Gの超高圧に耐えられるよう、バレル槽を50%軽量化した。
・バレル槽を支持する回転軸が40Gの高負荷に耐えられるよう、軸受機構を新たに開発した。
(3)バレル研磨シミュレーターの開発
・研磨石と部品の接触モデルと部品がカケるモデルから指標を作り、これをDEMシミュレーションに取り込んでバレル研磨シミュレーターを開発した。

40G研磨機
受託解析
具体的な成果
造粒コーティング装置

(1)バレル研磨用φ0.3mmの微小研磨石の開発
・新造粒装置で作る微小研磨石は、圧密造粒により低磨耗で、扁平率が0.1以下の真球に近い研磨石となった。
・容器形状に特徴がある特許を2件出願した。
・新造粒装置を、造粒コーティング装置として商品化した。
(2)40Gの超高圧バレル研磨機の開発
・重量を従来比50%軽減したバレル槽本体が、ウレタンモールド製のものとした。バレル槽の特許を1件出願した。
・40Gの遠心力に耐えられる回転軸の軸受機構を開発し、この機構の特許を1件出願した。
・40Gの超高圧バレル研磨機を商品化した。
(3)バレル研磨シミュレーターの開発
・バレル研磨条件に対して、バレル研磨量とカケ量を最適化するバレル研磨シミュレーターを開発し、顧客の委託に基づいて研磨条件を解析する「受託解析サービス」を事業として開始した。

知財出願や広報活動等の状況

当初4件の特許出願を計画したが、最終的に6件の特許出願につながった。以下に特許の概要を示す。
・造粒装置:出願番号 特願2023-019885
・バレル研磨装置:出願番号 特願2023-019889
・遠心バレル研磨機:出願番号 特願2023-010138、特願2023-026369、他1件
・遠心バレル研磨法:1件
・研究論文:「2023年度精密工学会北陸信越支部学術講演会講演概要集」山谷晃平、橋本洋平、小谷野智広、山口 貢、江面篤志、河原達樹、伊藤 稔、古本達明『遠心バレル研磨における加工物エッジへの丸み形成に関する基礎検討』

研究開発成果の利用シーン

・顧客が造粒コーティング装置を用いて、真球度が高く圧密化した造粒品(医薬品、セラミック、化学品等)を生産する。
・顧客が小型部品をバレル研磨する際に、従来よりカケ発生率が減少する超高圧のバレル研磨機と微小バレル研磨石の組み合わせを提供し、生産性が向上する。
・顧客からバレル研磨条件の見直しの相談を受け、受託解析サービスにて生産性を向上する研磨条件を提示する。
・特許技術であるカケ不良を低減するバレル研磨法を、バレル研磨製品と共に顧客に提供する。

実用化・事業化の状況

事業化状況の詳細

・新造粒装置は造粒コーティング装置として商品化し、展示会や受託テストを通して販促中である。
・40Gの超高圧バレル研磨機を商品化し、展示会や受託テストを通して販促中である。
・バレル研磨条件を予測する受託解析サービスを事業化し、展示会や顧客ごとにPRして解析サービスを展開中である。

提携可能な製品・サービス内容

設計・製作、素材・部品製造、製品製造、共同研究・共同開発、技術ライセンス、洗剤等の受託製造

製品・サービスのPRポイント

・新造粒装置は、遠心力を利用した転動造粒法のため、従来の自由落下による転動造粒法に比べ処理時間が1/3ほどに短縮できる。また遠心力により圧密化できるため、造粒品に高密度化と高い真球度を求める場合に適している。
・40Gの超高圧バレル研磨機と微小研磨石の組み合わせにより、部品のカケ不良の低減と、部品内に袋状部がある場合に細部まで研磨できるようになる。
・バレル研磨シミュレーターによる最適な研磨条件の探求により、既存のバレル研磨工程であっても見直しをかけることで生産性が向上する。

今後の実用化・事業化の見通し

・φ0.3mm微小メディアは市場提供に向けて最終調整中である。
・新造粒装置は小型機と中型機を販促中で、今後は大型機をラインアップに加える予定である。
・40Gの超高圧バレル研磨機は販売展開中で、今後ニーズに応じて改良改善に取り組んでゆく。
・受託解析サービスは、解析ニーズに応じて解析対象を増やすとともに解析サービスのスピードアップを目指す。

プロジェクトの実施体制

主たる研究等実施機関 株式会社チップトン 開発部
事業管理機関 公益財団法人名古屋産業振興公社 研究推進部
研究等実施機関 国立大学法人金沢大学 理工学域
アドバイザー 株式会社福井村田製作所
株式会社出雲村田製作所
信越化学工業株式会社
公立大学法人三条市立大学

参考情報

主たる研究等実施機関 企業情報

企業名 株式会社チップトン(法人番号:1180001014914)
事業内容 バレル研磨製品(バレル研磨機及び周辺付帯装置、バレル研磨石、バレル研磨用コンパウンド)、石油精製及び石油化学製品向けセラミック触媒担体、キャンディーコーティング装置、並びに化学反応、混合、晶析用テイラー渦流ナノリアクター等の製造・販売
社員数 210 名
生産拠点 飛島工場(愛知県)
本社所在地 〒457-8566 愛知県名古屋市南区豊田三丁目19番21号
ホームページ https://www.tipton.co.jp/
連絡先窓口 開発部 北川幹根
メールアドレス mikine.kitagawa@tipton.co.jp
電話番号 0567-56-7509