バイオ
皮膚の細菌バランス異常による皮膚炎や肌荒れを改善する選択的抗菌性を有する機能性脂質を開発する
兵庫県
ヤヱガキ醗酵技研株式会社
2025年1月23日更新
プロジェクトの基本情報
プロジェクト名 | アトピー性皮膚炎や肌荒れを緩和する機能性脂肪酸のスマート酵母を用いた生産・精製法の開発 |
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基盤技術分野 | バイオ |
対象となる産業分野 | 医療・健康・介護 |
産業分野でのニーズ対応 | 高機能化(新たな機能の付与・追加)、高性能化(既存機能の性能向上)、高性能化(信頼性・安全性向上)、高効率化(同じ生産量に対するリソースの削減)、高効率化(生産性増加)、低コスト化 |
キーワード | 機能性脂肪酸,皮膚常在菌,選択的抗菌性,美容 |
事業化状況 | 研究実施中 |
事業実施年度 | 令和2年度~令和4年度 |
プロジェクトの詳細
事業概要
既に供給源として最高濃度のPOAを発酵生産するスマート酵母を開発したが、その酵母を破砕してPOAを抽出する工程に有害な溶媒等を用いており、工業化が不可能であるという課題があった。そこで本研究では、我々が開発した高濃度POAを生産するスマート酵母を用いて、工業化可能な工程での生産・精製法の開発を行った。また、試作したPOAを用いて選択的抗菌活性があることを確認した。
開発した技術のポイント
・菌体の破砕・抽出法の確立
-培養した菌体の破砕方法を検討し、ボールミルにより湿式粉砕する手法を確立。
-ソックスレー抽出を採用し、有害物質を利用する従来法と比較し、90%以上の油脂量を安全に抽出する方法を確立。
・POA精製法の確立
-ODSカラム法で様々な条件検討を行い、効率よく純度98%以上のPOAを精製する方法を確立。
・in vitroでの機能性評価
-選択的抗菌活性を示すPOA濃度を確認。
-室温下で2か月間の安定性をもち、選択的抗菌活性をもつ外用剤の処方を確立。
-ヒトへの塗布試験の準備として、POAの各種安全性試験を実施し、安全性を確認。
・in vivoでの機能性評価
-ヒト皮膚細菌叢を培養しPOAを塗布した場合に選択的抗菌活性を示すことを確認。
具体的な成果
・菌体の破砕・抽出法の確立
-酵素剤、超音波破砕法、機械的破砕法を検討し、ボールミルによる湿式粉砕法を確立。
-クロロホルムをヘキサンに置換し、90%以上の抽出率を達成。
-40トン級の発酵槽で生産性を確認。
・POA精製法の確立
-尿素付加法と比較し、ODSカラム法で98%以上の純度を達成。
-分離条件を最適化し、不純物C14:1を0.014%に低減。
・in vitroでの機能性評価
-POAの選択的抗菌活性を0.063%以上の濃度で確認。
-乳化剤を排除したクリーム処方で選択的抗菌活性を保持。
-各種安全性試験で問題なし。
・in vivoでの機能性評価
-AD患者の臨床試験は未実施だが、予備試験を実施。
-健常者およびAD患者から皮膚常在菌を収集し、16Sメタゲノム解析やPCRによる種分類を実施。
-AD患者の皮膚常在菌叢においてPOAの選択的抗菌活性を確認。
知財出願や広報活動等の状況
脂肪酸組成物およびその製造方法、ならびに当該脂肪酸組成物を含有する皮膚外用剤、医薬部外品および化粧品
特願: 2020-217948
脂質および脂肪酸組成物の製造方法、ならびに脂肪酸組成物
特願: 2018-132703
研究開発成果の利用シーン
POA(パルミトレイン酸)を含有する外用剤は、アトピー性皮膚炎(AD)や肌荒れの緩和に有効で、化粧品や医薬部外品として利用できる。皮膚のバリア機能を回復し、未病段階での予防的ケアとしても期待される。
実用化・事業化の状況
事業化状況の詳細
肌フローラ検査結果とPOA塗布による症状の変化というエビデンスを持ったPOAで差別化した化粧品原料ビジネスの参入をはかることを第一弾とする。想定するサンプル出荷先は、医薬品(マルホ、科研製薬、MSD)、化粧品(資生堂、ロレアル、花 王、コーセー、長瀬産業)である。
提携可能な製品・サービス内容
共同研究・共同開発、技術ライセンス
製品・サービスのPRポイント
POAを用いた外用剤は、肌に優しい自然由来の成分でありながら、黄色ブドウ球菌のみを選択的に殺菌する画期的な機能を持つ。従来の治療法を補完し、肌のバリア機能を改善することで、ADや肌荒れの再発を予防する効果が期待される。
今後の実用化・事業化の見通し
化粧品用は主にスキンケアとして2025年に2.7 億円(国内1.8 億円、海外0.9 億円)、2030年に36億円(国内9億円、海外27億円)を目指す。医薬用は承認まで手続きが数年以上を必要とすることから、2027年に2.5億円、2030年に7.5億円を目指す。
実用化・事業化にあたっての課題
AD患者に塗布する研究が特定臨床研究に該当するため、そのための申請資料作成、特定臨床研究を実施することが課題である。
事業化に向けた提携や連携の希望
補完する研究の補助制度が必要
プロジェクトの実施体制
主たる研究等実施機関 | ヤヱガキ醗酵技研株式会社 |
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事業管理機関 | 学校法人大阪医科薬科大学 |
研究等実施機関 | 地方独立行政法人大阪産業技術研究所 |
アドバイザー | マルホ株式会社 |
主たる研究等実施機関 企業情報
企業名 | ヤヱガキ醗酵技研株式会社(法人番号:5140001061989) |
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事業内容 | 商品添加物製造、機能性食品素材製造、新規素材製造 |
社員数 | 110 名 |
生産拠点 | 兵庫県姫路市 |
本社所在地 | 〒679-4298 兵庫県姫路市林田町六九谷681 |
ホームページ | https://www.yaegaki.co.jp/bio/ |
連絡先窓口 | 産学官連携推進室 副参事 杉岡弘敏 |
メールアドレス | sangakukan@ompu.ac.jp |
電話番号 | 072-684-7141 |
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